自立支援法情報(2006年7月~8月)

障害程度区分判定  33%が2次で上位に変更
厚労省、6845件の分布報告

厚生労働省は24日、障害者自立支援法に基づく障害程度区分に関係し、今年6月末までに行われた2次判定において、1次判定の結果よりも上位の区分に変更されたケースが33%に上がることを明らかにした。また、施設入所を利用できる「程度区分4以上」と判定された人が42%であることも分かった。
障害程度区分は障害福祉サービスの必要性を明らかにする尺度で、サービスを利用できる対象者、報酬水準、国庫負担基準を決めるもの。今年4月から各市町村で順次認定を始めており、10月から適用される。
ただ、知的障害者や精神障害者については「1次判定では下位の区分に判定されがちで、サービス利用が期限される」と懸念する声が関係団体から上がっており、2次判定の結果どの程度上位に変更されるかが注目されていた。
こうした声を受け、厚労省は24日の障害保健福祉関係主管課長会議で、6月末までの判定結果として集計した6845件について、障害程度区分の分布状況、2次判定での上位区分変更率を報告した。
それによると、1次判定で非該当とされた108件のうち、22件が2次判定でも非該当となり、86件が区分1以上に変更された。同様に1次判定で区分1~5までだった人が2次判定で上位に変更された数も合計すると2275件(全体の33.2%)に上がる。
上位に変更された件数を障害の種類別に見ると、身体障害者が3885件中777件(20.0%)、知的障害者が3051件中1312件(43.0%)、精神障害者が876件中463件(52.9%)だった。
また、今回の集計で「4以上」となったのは6845件のうち2898件(42.3%)。身体障害者は3885件中1888件(48.6%)、知的障害者は3051件中1618件(53.3%)、精神障害者は876件中101件(11.5%)だった。
障害者自立支援法において施設入所支援を利用するには、障害程度区分4以上であることが原則。また、障害程度区分によって報酬単価が異なるサービスもあることから、「4以上」になるかどうかが、利用者・事業者から注目される点となっている。
障害程度区分の判定は介護保険の要介護認定の仕組みと似ているが、厚労省はこれまで障害者団体の不安の声に対して「要介護認定で2次判定の結果、1次判定より上位の区分に変更される割合は約2割。障害程度区分の場合、この変更率はもっと高くなるだろう」と説明していた。

福祉新聞-2006.08.28

訪問介護加算要件  重度対応は回数勘案
厚労省、都道府県に連絡

厚生労働省は14日、介護保険の訪問介護における特定事業所加算のうち、「重度者の占める割合が利用者の2割以上」としている要件について、要介護4または5の人の利用回数を勘案することなど詳細な算定方法を都道府県に事務連絡した。
特定事業所加算は、サービスの質の高い事業所を評価するため、人材の質の確保やヘルパーの活動環境、中重度者への対応などを行う事業所に加算するもの。算定要件としては「体制要件」「人材要件」「重度対応要件」があり、4月の報酬改定で創設された。
このほど明らかになったのは、サービス利用者のうち要介護4または5の割合が2割以上であることを求めた「重度対応要件」と、すべてのサービス提供責任者について5年以上の実務経験を有する介護福祉士であることを求めた「人材要件」の算定方法だ。
「重度対応要件」については、要介護4または5の人が3か月間に利用した回数を、全利用者3カ月間の利用回数で除して得た数が0.2を超えた場合に算定することとした。これにより、「利用者10人中2人以上が要介護4または5」という意味ではないことが明確になった。
また、特定の月にその値が0.2を下回っていても3カ月平均で超えていれば良いとした。ただし、「この要件は申請の直前3カ月間についてだけでなく、加算を取得している期間は常に3カ月平均で2割以上を維持することが必要」としている。
「人材要件」の規定のうち「5年以上の実務経験」については、介護福祉士を取得する前の実務経験を含めるか否かが不明だったが、「住宅・施設を問わず介護業務に従事した期間を意味するもので、介護福祉士取得後の実務経験年数を求めているものではない」とした。

福祉新聞-2006.08.28

自治体、支援法への要望相次ぐ
利用負担の軽減強化を  滋賀県などが意見書を提出

障害者自立支援法が施行されて5カ月余り。利用者・事業者から、利用料の1割負担、施設報酬の「日払い方式」などについて見直しを求める声が高まる中、地方自治体からも改善を求める意見が相次いでいる。11日には、障害者福祉サービスの先進県として知られる滋賀県の県議会が見直しを求める意見書を採択。小泉純一郎首相などに対し早急な制度見直しを要請した。
自立支援法の見直しを求める意見書は、滋賀県のほか大阪府、高知県、宮崎県、名古屋市、宮崎市などで採択され、厚生労働大臣などに提出されている。
また7月26日に開かれた政府の「中央障害者施策推進協議会」では、潮谷義子・熊本県知事が施行状況をしっかり把握するよう要望。地方自治体からの制度改善を求める声はますます強くなっている。
11日に滋賀県議会が総理大臣、厚労大臣、総務大臣、衆・参両議院議長に提出した意見書では、8項目の見直しを要望。利用料の1割負担を理由に低所得の障害者が通所施設などの利用を控える傾向が顕著になっていること、施設報酬の算定が「日払い方式」に変更されたことにより、特に通所施設の経営が急激に悪化していることなどを問題として指摘した。
また10月から新体系に移行するグループホームや、地域活動支援センターに移行できる小規模作業所では、報酬などが十分でないために移行に対する不安が高まっているとし、同県が先駆的に取り組んできた「入所施設から地域へ」という流れが後退するのではないかと懸念を表明している。
具体的な要望事項としては、負担増に伴う利用控えに対応するため、通所施設の利用者負担や20歳未満の入所施設利用者の負担軽減措置を強化することを求めた。
また「日払い方式」への変更の影響が大きい通所施設に対する激変緩和措置を強化するよう要望した。
10月からの新サービス体系への移行を巡っては、毎日の利用が困難な精神障害者の特性に応じて社会復帰施設の新体系移行後の運営支援を強化すること、先進的な地方自治体の水準を勘案して地域活動支援センター事業の内容を充実すること、地域の実情とかけ離れたグループホーム・ケアホームの報酬基準額を是正することを求めた。
さらには、障害程度区分の認定で知的・精神障害者が実際の必要性より低く評価される傾向があることから障害の特性を適切に反映できるよう改善すること、地方自治体の実施水準を低下させないように地方交付税措置、国庫補助金など国の財政支援を強化することなども要望した。
こうした要望内容は他の地方自治体もほぼ共通しており、今後さらに同様の意見書を提出する地方自治体が増えることが予想される。国がこうした要望にどう対応していくかが注目される。

福祉新聞-2006.08.26

働く場で利用料払うのはおかしい
支援法に不満相次ぐ  制度と現場依然かい離
障害者就労支援シンポに600人

障害者自立支援法により10月から施行される就労継続支援事業(A型・B型)と就労移行支援事業に焦点を当てた「障害者就労支援シンポジウム」がこのほど、都内で開かれた。
主催は全国社会就労センター協議会(セルプ協)など障害者の就労支援に携わる5団体。授産施設や小規模作業所などの職員ら約600人が参加したが、大半は「自らの施設がどの新事業に移行するかは未定。移行は来年度以降のことになると思う」という人たちだ。
シンポジウムのテーマは「『一般就労は難しいが支援を受けながら働きたい』という障害者への支援をどう強化するか」。政策と実践上の課題を整理し、現場から厚生労働省へ改善を迫るものとなった。
星野泰啓・セルプ協会長は「働きに行って利用料を払う仕組みはどうしても納得いかない」と指摘。大友勝・全国精神障害者地域生活支援協議会代表も「労働力を提供して対価を得るという普通の考え方はどこへ行ったのか」と訴えた。
これに対し、伊原和人・厚労省障害保健福祉部企画官は「支援を受けることに対する負担であって、働く場だけ取り出して負担をかけないのはおかしい。サービス量を増やすには厳しくても負担をお願いするしかない」と説明した。
しかし、星野氏は「『薄く広く』のサービスとしたために薄さが目立つ」と評価。西村直・きょうされん理事長も「サービスの利用控えが起こっている。主要な原因は利用者負担。工賃アップは時間をかければ改善されるかもしれないが、負担の仕組みは時間とともに改善するとは思えない」と指摘した。
シンポジストからはこのほか「知的障害があると、生活そのものを支えないと働き続けられない人が多い。その視点がかけている」(日本知的障害者福祉協会の長谷川浅美氏)、精神障害者は年金1級の人が少ない。でもサービスは必要としている。負担を考えればサービスを削ることになる」(高野修次・全国精神障害者社会復帰施設協会常任理事)といった不満が相次いだ。
事業者に報酬減の影響を与えた「日払い方式」についても、「経営が成立しない」「マンパワー減に直結する」「サービス提供体制が弱体化する」「利用日の直接支援だけが支援ではない」など、非難と改善を求める意見が相次いだ。
これに対して伊原企画官は「利用者の立場から見れば、月火水曜はA所、木金曜はB所というふうに事業所を選択できるようになる」と利点を説明。「厚労省としては、給付と利用料の実態調査を集計・検証した後、これまでの説明から変更すべき点があるかどうかを判断したい」などと語った。
コーディネーターの藤井克徳・きょうされん常務理事は「なかなか埋まらない役所と現場の溝を埋めたい」とし、第2弾を10月施行時に開催するとした。

福祉新聞-2006.08.21

ヘルパー養成研修整理  支援法サービス体系再編で
「重度訪問介護」などの資格要件示す。

障害者自立法によるサービス体系の再編に伴って、10月から訪問系サービスに「重度訪問介護」が新設され、外出支援は「行動援護」と地域生活支援事業へ移行することになる。このため現行のヘルパー養成研修も整理される(図)。
「重度訪問介護」のサービス提供責任者、サービス提供職員(ヘルパー)資格要件には、介護保険の介護職員基礎研修を受講する方法が選択肢に加わる。
その他の資格要件は、サービス提供責任者は介護福祉士、ヘルパー1級修了者、ヘルパー2級修了者で3年以上介護業務に従事した人、ヘルパーのうち相当の知識と経験がある人。
ヘルパーの場合も介護福祉士かヘルパー1~3級修了者。「日常生活支援従業者養成研修」を修了する方法は、「重度訪問介護従業者養成研修」に改編される。9月末までに日常生活支援の養成研修を修了している人はこの資格者に含める。
なお、重度訪問介護の養成研修は、基礎研修10時間(うち7時間は実習)と追加研修10時間(うち7時間は講義)に整理。追加研修の講義には、医療的ケアが必要な利用者への支援や緊急時の対応に関する科目があり、ビデオ視聴による受講も可能とする。
重度訪問介護のうちALSなどで「重度障害者等包括支援」を利用する人の場合は、追加研修を受講したヘルパーが支援することが報酬加算の条件になる。

「行動援護」は、支援費制度では知的障害児者を対象に実施されてきたが、10月からは精神障害者も対象になる。
従業者の資格要件も、知的障害者だけでなく精神障害者の直接支援業務に常時した人に広がる。
また資格要件には、介護福祉士、ヘルパー1・2級のほかに、介護職員基礎研修を受講する方法と、行動援護従業者養成研修を修了する方法が選択肢に加わる。9月末までに従前の知的障害者外出介護従業者養成研修を終了した人は、行動援護の研修修了者とみなす。
さらに実務経験年数の要件は、サービス提供責任者が5年以上、ヘルパーが2年以上。行動援護の養成研修受講を条件に、それぞれ「3年以上」「1年以上」とする経過措置もある。ただし、経過措置によるヘルパーがサービスを提供する場合は報酬が30%の減算となる。
なお、研修は計20時間で、講義部分はビデオ視聴による受講も可能とする。

福祉新聞-2006.07.24

支援法で75%が負担増
預貯金崩して支払いも

DPI日本会議が6月に行った障害者自立支援法の緊急アンケート調査が14日にまとまった。4月に施行された原則1割の利用者負担が生活にどう影響したかを調べたもの。全国481人の障害者から回答を得たところ、75%が負担増になったことや、預貯金を切り崩してまで上限額いっぱい負担している人がいる実態が明らかになった。

DPI調査障害者481人が回答

調査対象は、ホームヘルプや通所授産施設など利用しながら地域で暮らしている障害者。その53%に全身性障害がある。
収入の内訳(複数回答)を見ても障害基礎年金1級が65%、特別障害者手当が44%と目立ち、総じて重度障害者からの回答が多かった。また工賃収入がある人は28%、給与所得は22%だった。
個人の月額総収入は65%が15万円未満だが、世帯の所得階層に分けると「一般」が39%と最多で、「低所得2」29%、「生活保護」12%、「低所得1」8%。減免制度を利用できていない人が55%いた。
福祉サービス1ヶ月の負担額がいくら増えたかを5000円刻みで分布させると、「一般」の28%は3万5000円以上4万円未満、「低所得2」の47%は2万円以上2万5000円未満、「低所得1」の32%は1万5000円以上2万円未満でそれぞれ突出している。制度上の月額負担上限3万7200円、2万4600円、1万5000円と重なる。
特に「低所得2」では4月以前は負担がなかった人が92%に及ぶことから、いきなり上限額まで払うことになった人が多い実態が浮き彫りになった。
またサービスが必要な重度障害者ほど負担も重くなっている。
さらに、負担増による影響(複数回答)で目立つのは「生活費を削って支払った」(39%)と「預貯金を切り崩して支払った」(24%)の多さだ。自由記述欄には「24時間介護が必要だから、支払うしかない。行けるところまで行くしかない」という声もあった。
その半面、「利用をやめたサービスがある・利用回数を減らした」人も11%いた。実際に減らした・減らすことを考えているサービスの種類は、最多が移動介護で、ホームヘルプ、ショートスティと続く。
回答者のほとんどが「将来の生活が不安」「これまでの生活を続けられるか不安」と訴えている状況だ。
DPIは「厚生労働省は支援法案の検討過程で『在宅でホームヘルプを利用する身体障害者の平均的な負担は月8400程度』と試算していたが、明らかに異なる実態が浮き彫りになった。法には3年後の見直しが規定されているが、制度設計時点での想定と大きく異なる以上、早急に改めるべき」と指摘する。
10月施行後、第2弾アンケート調査も行う予定だ。

福祉新聞-2006.07.24

支援法に現場は悲鳴
セルプ協研究大会施設が費用肩代わりも

「新事業への移行のために必要な準備とは?利用者本位のサービス展開と事業の安定的経営に向けて」をテーマに、全国社会就労センター協議会(セルプ協)の2006年度総合研究大会が6月28日から3日間、千葉市内で開かれ、授産施設の施設長など約700人が参加した。
初日の基調報告で星野泰啓会長は「自立支援法が施行され、利用者・事業者からの『2つの悲鳴』が聞こえる」と指摘。
利用者に関しては「所得保障がない中で、利用料や医療費の負担が重く、欲しいサービスを選ぶことができないのが現状。利用者負担増による退所者の7割が自宅にひきこもっているのも問題だ」と述べた。
事業者に関しては「報酬が利用実績払いになったことに加えて、施設の中には障害者が払うことができない日常生活費や食費の実費負担分を代わりに払っているところもある。これでは新体系に移行する見通しはない」と語った。
また、新体系で身体障害者関連の更生訓練費の対象者が、結果的に生活保護受給者のみであることや、厚生労働省が6月14日に各県に出した06年度下半期の精神障害者社会復帰施設などの補助金の算定方法を巡る通知が、現場に誤解を招いていることを問題点に挙げた。
2日目の「実践報告と課題」では、全国の障害者施設関係者6人が登壇。埼玉県のやどかり情報館の増田一世氏は施設の支援サービスの質の低下は利用者の命の問題にかかわる」と現場の実情を訴えた。

福祉新聞-2006.07.10

障害者自立支援法  事業者指定など説明
GH夜間支援に経過措置

10月からの障害者自立支援法全面施行を控え、厚生労働省は6月26日、新体系に移行する際の事業者指定の取り扱いや、これまでの説明から変更になった点を示す障害保健福祉関係主管課長会議を開いた。グループホームで引き続き夜間支援体制を確保できるようにするなど様々な経過装置が新たに設けられたほか、利用者負担についても見直しがあり、低所得者の工賃収入年28万8000円まで控除されることになった(説明事項の詳細は次号に)。

厚労省課長会議
工賃控除額引き上げ

10月から新たな事業体系へ移行するサービス事業者に関しては、事業者指定の取り扱いの考え方などが示された。
旧法指定施設の場合は、障害者支援施設の指定があったものとみなされるため新規の指定はいらない。指定は2012年度まで有効。新体系移行に伴い事業を廃止する場合は指定の辞退届と事業の廃止届を提出する。
一方、9月30日までのみなし指定障害福祉サービス事業者は、10月から新たな指定が必要。4月から9月の間に指定を受けた事業者の場合は、10月以降の新たな指定申請は必要ない。
グループホームとケアホームの事業者指定に関しては、10月以降、個々の住居ではなく一定の範囲に所在する住居全体を1事業所として指定する。このため、ケアホームは新規の申請が必要。グループホームの指定を受けたものとみなされている事業者も、改めて指定が必要となる。
なお、3月1日に発表された方針では、サービス管理責任者の配置基準は「1人以上は専任かつ常勤」とされていたが、支援に支障がない場合は兼務でもかまわないという変更案が今回示された。
また、現場から要望が寄せられていることを踏まえ、新たな経過措置も種種設けられることとなった。
その1つはグループホームの夜間支援体制。4月以降継続して夜間支援体制を確保しているグループホームに入居しているケアホーム対象者について、引き続き体制が確保できるよう経過措置を講じる。
地域生活支援事業の分野では、10月にすぐ地域活動支援センターへ移行できない事業所のために、市町村が実施する事業の中に「経過的デイサービスセンター」と「経過的精神障害者地域生活支援センター」を創設する(06年度中)。
さらに、利用者負担の関係では工賃控除が見直された。「工賃より利用者負担が高いと働く意欲がそがれる」との批判が根強かった問題だ。
入所施設の場合、現行の工賃除額は月3000円だが、10月からは手元に年間28万8000円まで工賃が残るよう控除額を引き上げる。
通所施設では、単身世帯の場合収入が150万円以下でないと社会福祉法人減免が受けられないため、工賃が年間約70万円を超えると軽減対象から外れてしまうが、工賃を年間28万8000円控除することによって対象者を拡大する。

福祉新聞-2006.07.03

高齢者・障害者など働き手に
重点分野に「健康・福祉」  政府  経済成長戦略大綱決定

政府の経済財政諮問会議(議長=小泉純一郎首相)は6月26日に開いた第17回会合で、我が国の今後の経済政策の在り方を定めた「経済成長戦略大綱」を決定した。若者・女性・高齢者・障害者の就業参加を促し、今後10年間で年率2.2%以上の実績GDP(国内総生産)を目指すことを明記した。
戦略大綱は、人口減少が本格化する2015年度までの10年間に取り組む経済政策をまとめたもの。「生産性の向上」「技術革新」「アジア等海外のダイナミズム」を柱に、日本型経済成長モデルを実現するよう提案した。
具体的な戦略では、今後発展が期待される6分野(①健康・福祉②育児支援③観光・集客④コンテンツ⑤ビジネス支援⑥流通・物流)への政策を重点化するよう提案。15年までに70兆円の市場規模拡大を目指すとした。
このうち健康・福祉分野については、地域ヘルスケア提供体制の重点化、医療法人会計制度の見直しなどを通じ、質の高い効率的なサービス提供体制の構築に取り組む。
また、コミュニティービジネスの振興、公的サービスのコスト低減などを通じ、地域経済を活性化するよう提案。中心市街地を活性化させるため、空き店舗などを活用して育児支援施設や厚生施設の設置を進め、それらの施設に高齢者や女性が働けるよう就業環境を整備する。
さらに、一人ひとりが能力を最大限発揮できる社会を構築する必要性を強調。若者・女性・高齢者・障害者の就業参加を促し、フリーターを2割削減させる。
政府は、戦略大綱を歳出・歳入改革と並ぶ車の両輪と位置付けており、7月にまとめる「骨太の方針2006」に反映させる考えだ。

福祉新聞-2006.07.03

国の指針告示  入所者7%以上減へ
障害福祉計画の目安に

障害者自立支援法に基づき障害福祉サービスの提供体制を確保していくための国の基本指針が6月26日に告示された。
基本指針は、現行の福祉施設が新事業体系へ移行し終わる2011年度末を見据えて数値目標を設定し、計画的に基盤を整備しようというもの。着実に移行できるよう、都道府県と市町村は06年度中に第1期障害福祉計画を策定することになっており、そのためのガイドラインとなる。
指針が示す方向は「入所施設から地域生活へ」「福祉施設から一般就労へ」という理念の具現化だ。立ち後れた精神障害者のサービス充実もねらいとしている。
11年度の到達目標では、施設入所者(計画策定時)の1割以上を地域生活へ移行させ、入所者数を7%以上減らすことを掲げた。
また、受け入れ条件が整えば退院可能な精神障害者が12年度までに退院できるよう、必要な自立訓練事業などの量を見込まなければならないとした。
さらに、福祉施設から一般就労へ移行する人数は、現在の実績の4倍以上にすることを目指すとした。
これらは国が「望ましい」とする目安だが、自治体は指針を反映させ数値目標を設定した計画を策定する。特に就労関係の目標には力点が置かれ、就労移行支援事業の利用者数やハローワーク経由で就職する福祉施設利用者の人数などについても見積もることになる。

福祉新聞-2006.07.03