●愛知の「セダン特区」全県対象に認定

 愛知県が5月17日に内閣府に申請していた「愛知福祉輸送セダン特区」が19日認定された。全県という点で全国の注目を集めている。愛知県タクシー協会(吉田稔会長)はこれまで福祉タクシー委員会(青木良浩委員長)を中心に、管内公共団体を対象に福祉タクシー関連事項の調査、福祉有償運送運営協議会設置への対応策など、会員事業者向けに現状認識と今後とるべき道について積極的に情報を提供してきた。タクシー事業への影響が無視できない「全県セダン特区」をめぐる現況と対応状況を見た。

 愛知県の担当は健康福祉部高齢福祉課いきがい・在宅・保健グループだ。申請によると、県内の移動制約者数は要支援・要介護認定者数(2004年8月末現在)16万618人、身体障害者手帳交付者数(同年4月1日)20万4814人、知的障害者手帳交付者数(同日)3万3041人、精神障害者手帳交付者数(同日)1万7929人、計41万6402人。

 一方、県内の法人タクシー台数は9867台、患者輸送車は343台、個人タクシーは1279台計1万1489台としている。

 名古屋交通圏(名古屋市と周辺自治体計14市町村)を除く60市町村を営業区域とする事業者70社で構成する愛知県タクシー協会。同協会関係は一般タクシー(セダン車両)2758台、福祉車両44台を保有、「福祉車両は少ない」と認識しているが、セダン型は県内における輸送の現状から移動制約者等にかかる十分なサービスを提供しているとしている。今後、各地の支部長が窓口となって対応していく方針だ。このため、福祉タクシー委員会の特認医院に各支部長を任命した。

 主な公共団体も、県が構造改革特区法に基づく意見聴取に対する回答で豊田市の場合、「セダン特区は移動制約者の輸送について、タクシーなどの公共交通機関による輸送サービスによっては十分な輸送サービスが確保できない場合に対応することを目的としている。

 しかし、“しかし有償ボランティア輸送においてセダン型車両を利用しなければ、移動制約者のニーズに対応できない”と福祉車両数及び移動制約者数という意表のみから判断することは困難」としている。また「本市の移動制約者の状況、福祉有償運送の状況、公共交通機関、タクシーの状況を調査したが、現時点では十分な輸送サービスが確保できない状況であると判断することはできない。運用については、地域の現状を詳細に把握した上で、本年度設置予定の運営協議会でセダン型車両の必要性も含めて十分に協議したい」としている。

 犬山市も「特区認定による効果は認めるものの、タクシー業を営む者に対する地位と実績を十分に考慮した料金の設定などへ配慮を行う必要がある。その結果、移動制約者が利用できるサービスが多様化し、かつ輸送にかかる各主体が競合するものでなく相互に補完できる関係を構築する必要がある」と指摘している。

 今後、具体的な運用面で、この相互補完をどのように担保することができるのかが大きな問題だ。犬山も含め一宮、岩倉、江南や名古屋交通圏の瀬戸各市に営業拠点を多数持つ名鉄西部交通の鈴木洋治社長(福祉タクシー委員)は「このような既成事実をあとから追認していくような政策が横行すると、輸送の対象すなわち単独での移動制約者は他にいくらでもいるわけで、対象がなしくずしにひろがるのではないか。どこで歯止めをきかせるのか」と懸念している。

東京交通新聞 2005.7.25(月)