●バリアフリー施策 対象に知的・精神障害者も

  当事者各段階に参加

  国交省懇談会 法改正見据え報告書

 国土交通省の「ユニバーサルデザインの考え方に基づくバリアフリーのあり方を考える懇談会」(座長=野村歡・日本大教授)はこのほど、「今後のバリアフリー施策は知的・精神障害者も対象として展開すべき」「障害者などの当事者が計画策定・実施・事後評価の各段階に参加することが必要」などとする報告書をまとめた。

 懇談会は、二〇〇〇年に制定された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が見直し時期にきたことから、〇四年十月に設置。十一障害者団体のヒアリングなどを行いつつ、建築物・車両などのハード面、人的支援や心のバリアフリーなどのソフト面−の施策の在り方を検討してきた。

 報告書では「すべての人にとって利用しやすい生活環境を整備するというユニバーサルデザインの考え方に基づき、これまでのバリアフリー施策をさらに進めることが必要」とした上で、@障害者や高齢者など当事者や地域住民が計画策定に参加することにより多様なニーズに対応した施策を行うA事後評価の促進やスパイラルアップ(段階的・継続的な発展)のプロセスを構築し着実に施設整備を進めるB計画策定などに積極的に参加する当事者などを育成するとともに、心のバリアフリー施策を推進する−ことを提案した。

 また、今後の施策については、@多様な対象者を想定した多様な対象施設のバリアフリー化Aより広範囲のバリアフリー化B当事者・地域住民の参加C心のバリアフリー施策―の在り方について検討が必要とした。

 多様な対象者・施設では、身体障害者だけでなく、知的・精神障害者も対象にした施策を展開するよう提案。文字案内など聴覚障害者向けの情報提供や、可動式ホーム柵の設置など視覚障害者が安全に公共施設などを利用するための多様な施設・設備を整備するよう求めた。

 また、バスや旅客機だけでなく、タクシー・駐車場などのバリアフリー化を進めることも必要とした。

 広範囲のバリアフリー化では、基本構想の策定エリア(旅客施設を中心とした徒歩圏内)だけではなく、利用施設への移動経路を考慮してより広範囲のバリアフリー化を検討するよう求めた。また、複数の市町村にまたがる移動経路を検討する必要がある場合などは、都道府県が関与する仕組みを検討すべきとしている。

 当事者参加では、基本構想の策定だけでなく、その後の各種事業計画の策定や実施段階、事後評価への参加を徹底するよう提案。また、市町村に対し、当事者などが計画案を提案できるような制度を創設するよう求めた。

 心のバリアフリーでは、国民一般向けの普及啓発活動だけでなく、事業者の従業員教育や当事者の育成も必要とした。また、ボランティアなどによる細かな対応の検討を求めるとともに、バリアフリー情報の提供をさらに進めることを提案した。

 報告書を受け、国土省は今秋以降に交通バリアフリー法の見直しなどに提案が反映させる。

福祉新聞 2005.6.20(月)