●地方密着、福祉タクシー「起業」

 奈井江=73歳ドライバが奮闘

恵庭=外出の「楽しみ」を支援
介護体験通じ必要性痛感

 

 都市部を離れると「高齢者の生活の足」整備が遅れているが奈井江町では七十三歳の元タクシードライバー、恵庭市では訪問介護事業者が福祉タクシーに取り組んでいる。いずれも近親者介護体験を通し、移動手段の必要性を痛感した起業で、地域の高齢者や家族の期待に応えている。

 奈井江町の山上光雄氏は今春、「町内には車いす対応のタクシーがなく、妻を美唄市内の病院に連れて行くのに苦労した。地域の人たちの役に立ちたい」と高齢ながら民間患者等輸送事業認可を受け「福祉タクシー友愛」を立ち上げた。

 スロープ付き軽自動車を使用、小型車としては最低料金の初乗り四百七十円、メーター制で運行。これまで延べ五十人、一カ月平均一五人が利用。そのうち十人程度から定期的に依頼され、要介護4、5重度者も三人いる。山上氏はヘルパー二級資格を持ち、乗降時の介助もスムーズだ。

 個人営業のため、現在は奈井江、月形、浦白、美唄での運行に限定されるが将来は法人格を取得し空知管内でのサービス提供を目指す。

 「利用者の笑顔を見ると、やりがいを感じる。スタッフ面でも充実を図り個々のニーズに応えていきたい」と年齢を感じさせない意気込みを見せている。

 恵庭市では寿運輪が「恵庭とも」設立し、訪問介護、居宅介護に加え福祉タクシーのサービスを提供している。

 西川ゆかり管理者が、寝たきりだった袒母の介護実践を踏まえ「外出させたかったが機会がなかった。高齢者、障害者のため移動手段をつくりたかった」と事業に乗り出した。

 リフト付きワゴン車を使い、車いす二台、ストレッチャーなら一台のほか九人が乗車できる。料金は初乗り五百七十円のメーター制。通院、入院時の移動はもちろん、買い物、完婚葬際、家族旅行など、あらゆる外出ニーズ応じている。

「孤立する高齢者をつくらないことが大切。自由にイベントなど娯楽に出かけたり、積極的に社会参加し、生活への刺激を増やしてもらいたいというのが西川管理者の願いだ。

介護新聞 2004.7.29(月)