●障害者負担 どう軽減

  自立支援法案衆院を通過 具体策見えぬまま

 障害者福祉サービスの枠組みを大きく変える障害者自立支援法案が15日の衆院本会議で、自民、公明両党の賛成多数で可決、参院に送られた。衆院の審議では障害者の負担増をめぐり活発な議論が交わされたが、負担の裏付けとなる所得確保の具体策は示されずじまい。障害者の声が反映する仕組みづくりとともに、参院であらためて焦点となりそうだ。

● 所得確保策
「障害が重い人ほどたくさんお金を払うような制度は世界に例がない」(民主党議員)
 審議で最大の焦点となったのは、障害者が利用したサービス量や医療費に応じて原則1割を負担する「定率負担」の導入だった。
 野党側は「障害者の所得は低く負担に耐えられない」「利用できるサービスが減る」などと反発。与党からも低所得者対策を求める意見が相次ぎ、厚生労働省は、きめ細やかな自己負担の減免を行うことを審議の中で約束した。

 負担の前提として野党が求めた障害基礎年金の引き上げや、各種手当ての増額について厚労省は「老齢基礎年金とのバランスを踏まえる必要がある」「税制状況から手当の大幅な改善は難しい」と否定的な姿勢に終始。ただ「雇用をすすめたり(作業所での)工賃を高めたりすることは重要だ」(尾辻厚労相)として就労支援を強化する方針を示した。与党による付則に障害者の所得確保策の検討も盛り込まれた。

● 当事者不在
障害者の声が制度に反映されないのではないか、という点も議論の焦点になった。
 野党や障害者団体は、サービスの必要度を決める市町村の審査会で、当事者の意見表明の機会を義務づけるよう求めた。厚労省は「審議会の前にヒアリングをする」として拒否。だが、与党側が野党の主張を一部受け入れ、審査会メンバーに障害者を入れることや、実状を踏まえた審査になるよう市町村に周知することを盛り込んだ。市町村にどこまで徹底できるのか、今後、具体的な方策が問われる。

 日本の障害者福祉の水準も議論になった。厚労省は「高齢者福祉に比べかなり遅れている。市町村でのハード、ソフトの受け皿は非常に乏しい」と認めた。尾辻厚労省も「必要な予算を確保するよう最大限努力していく」と答弁。厳しい財政事情の中でどう予算を確保するのかも衆院審議で問われそうだ。

障害者自立支援法案の概要

【障害福祉サービスの一元化】年齢や障害種別で別々だったサービスを共通の制度で提供。一つの施設で様々な障害者が利用可能に

【公平性の確保】市町村が個人の「障害程度区分」を判定。客観的基準で支援の必要度に応じたサービスを提供し地域差をなくす

【定率負担】福祉サービスや障害の医療費に原則1割の自己負担を導入。低所得者らには負担上限を設ける

【財政責任の明確化】障害福祉関連予算を裁量で削ることができない「義務的経費」とし、国と都道府県が責任をもって支出

【就労支援】一般企業での就労を目指す人に職業訓練を行う「就労移行支援」事業など、所得確保策を強化

朝日新聞 2005.7.16(月)