●社保審 医療観察法部会を設置

  処遇の適当性を審査

  尾辻厚労相、自立支援法案成立に意欲

 社会保障審議会(会長=貝塚啓明・中央大教授)の第17回会合が二十一日に開かれ、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(医療観察法)に基づく処遇の適当性を審査する場として「医療観察法部会」を新たに設置することを決めた。また、会合の中で尾辻秀久・厚生労働大臣は、同日に開会した特別国会に障害者自立支援法案を再提出し成立に全力を尽くす考えを示した。

 七月十五日に施行された医療観察法は、殺人や放火など重大な他害行為を行った精神障害者が心神喪失などを理由に不起訴・無罪になった場合、厚労省が定める指定医療機関で入院及び通院による医療を受けることを義務づける制度。

 検察官による申し立てを受けた地方裁判所が「入院医療」か「通院による地域での支援」のいずれかを決定し、原則三年を限度に必要な医療を提供する。この決定を受け、他害行為を行った精神障害者は指定医療機関で医療を受けることになるが、その処遇に不満がある場合は、同法九十五条に基づき厚労大臣に処遇改善のための請求(処遇改善請求)ができる。

 今回設置された医療観察法部会は入院医療を受けている精神障害者から処遇改善請求があった場合に、その処遇が適当かを審査するもので、同法九十六条で社会保障審議会が行うとされている。

 処遇改善請求があった場合、厚労大臣は同部会に審査を要請。部会は指定医療機関に対し必要書類などの提出を求めるとともに、医療機関と請求者の双方に意見聴取を行うなど事前の準備を経て審査を行う。

 同部会の設置について厚労省は「近く入院決定を受ける精神障害者が出ることが想定され、処遇改善請求が行われた場合に対応できるよう早急に部会を設置し、運営体制を整えたい」と説明。審査には専門性、迅速性、機密性が必要とし、部会のメンバーを五人程度とすること、年間三百人程度の審査を想定しているため、社保審会長の同意を得ずに同部会が決定できる仕組みとすることを提案した。

 会合では、全会一致で部会の設置を決定。会長の同意を得ずに部会が決定することには異論が出たため、運営方法は改めて検討することになった。

◆「障害者の把握に努める」
 同日の会合では、尾辻厚労大臣が三十分余りにわたり委員の質問に答えた。
 会合の冒頭、尾辻厚労大臣は郵政民営化法案成立後に本格化する社会保障制度改革について「社会保障制度は国民の安全・安心を支えるセーフティーネットとして重要な役割を果たしている。持続可能な仕組みを作ることは容易ではないが、全力で改革に取り組んでいきたい」と語るとともに、先の国会で廃案となった障害者自立支援法案については「特別国会に再提出し、成立に向け全力で努力したい」と意欲を見せた。

 また、委員から出された質問・意見に対し、「社会保障費に占める児童福祉の割合を現在の3・8%から拡大したいが、高齢者関係給付費のほとんどは義務的経費で削れない。難しい問題だが取り組んでいきたい」「出産時の事故の補償の大きさなどを理由に産婦人科医になる医者が減少している。安心して出産できる環境を整えるためにもこの問題を医療制度改革の中で取り上げたい」「障害者の実態をよく把握する必要性は先の国会でも指摘された。プライバシーの問題はあるがしっかり把握に努めたい」「介護保険改革でも『予防』を強く打ち出したが、医療制度改革でも『予防』は重要なキーワードとなる」などと語った。

福祉新聞 2005.9.26(月)