●乗降介助 縮減の方向

  来春の介護保険制度改正

  送迎加算は包括化

 来年4月の介護保険改正で介護タクシーやNPO移送サービスなどが報酬請求している「通院等乗降介助」が縮減を迫られる方向が強まった。現行の要支援・要介護1の軽度者向き給付として創設される「新予防給付」の基準・報酬作りに着手した社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)・介護給付費分科会(会長=大森彌・千葉大法経済学部教授)は先月30日の介護予防ワーキングチーム(座長=井形明弘・名古屋学芸大学長)で乗降介助について現行要介護1の大部分は新設の「介護予防訪問介護」の報酬に包括化すべきとの意見が出た。送迎加算は、月定額とし通所系介護予防の基本報酬に包括化する包括化する方向が打ち出された。

 改正介護保険法の特色は軽度者の自立促進。このため要支援・要介護1の現行給付を新予防給付に転換する。新予防給付の基準・報酬について介護予防ワーキングチームが7月末から検討を始め、8月30日に中間報告案をまとめた。

 同案では、乗降介護について「現行の要介護1の該当者は、『移乗』はほぼ自立しており、新予防給付では『移乗』にかかる介助の必要性が乏しいと考えられることから、新予防給付の対象者の身体機能を踏まえ、介護予防訪問介護の包括化議論と合わせ位置づけを検討する必要がある」とした。

 これに対し、栃本一三郎委員(上智大学総合人間科学部教授)が「(乗降介助は)包括化する」と明記するべきと主張。介護予防訪問介護のサービス区分は、現行の身体介護と生活援助の一本化が打ち出されており、乗降介助も報酬費目として単独で立てず、その中に包括化させるべきとの意見だ。

 乗降介助は要介護1の請求が最も多く6割を占める(今年4月分=全請求額6億6千万円)。このうち改善可能性の高い7割程度が新予防給付に包括化されると、その分の従来の乗降介助としての報酬設定(1回千円)はなくなり影響が避けられない。

 包括化の報酬は、月定額払い案が有力。現行の訪問介護の時間単位の請求は、時間が長いほど報酬が増えるため長時間サービスを誘引し利用者にマイナス作用するとの見方だ。乗降介助の包括化について厚労省は「乗降介助の報酬を明確化するため報酬単位を独立化したが、包括化すると中身が見え難くなるとの指摘もある」(老健局)としている。同案は5日の介護給付費分科会に報告。同分科会は新予防給付を改めて議論する。

東京交通新聞 2005.9.5(月)