●介護4年、難病の息子死なす

  母親に執行猶予 横浜地裁

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)で自宅療養中の長男(当時40)の人工呼吸器を止め死なせたとして、殺人罪に問われた神奈川県相模原市宮下本庁1丁目、無職菅野初子被告(60)に対し、横浜地裁は14日、殺人罪より法定刑の軽い嘱託殺人罪を適用して懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。

 小倉正三裁判長は「呼吸器を外して死にたいとの長男の懇願を断り続けたが、病状悪化で目の動きによる意思疎通も困難になり、懇願を受け入れた」と弁護側主張に沿って事実を認定。「希望は延命治療の拒否で呼吸器停止ではなかった」とする検察側主張を退けた。

 小倉裁判長は「それが不治の難病にかかった息子でも、生命を奪うことは許されず、同じ難病に苦しみながら闘病生活を送る患者や家族に与えた影響は大きい」と指摘。その一方で「すべてをささげて4年にわたり介護に専念し、絶望する息子を励まし続けた」と量刑理由を説明した。

 判決によると、長男幸男さんは00年9月ごろ、ALSを発症。昨年春からは楽しみだったパソコン操作もできなくなり、文字盤を目で追う方法で、周囲に死なせて欲しいと頼むようになった。

 菅野被告は昨年8月26日、幸男さんの懇願を受け入れて自分も死のうと決意。同日午後11時59分ごろ、呼吸器を止め、幸男さんを窒息死させた。菅野被告も自殺を図ったが発見され、一命を取り留めた。

朝日新聞 2005.2.15(火)