●地域密着型介護タクシー 寿ハイヤー

  ケアへの思いと可能性

 札幌市南区の高齢化率は二〇%と、市内で最も高い。区内には医療機関が多く、ドライバーが車いす、歩行介助、高齢者の買い物荷物を持つなど、「以前からタクシー業務に伴う介助ニーズは高かった」と諸澤紘一専務。

 一人暮らしの高齢者の中には生活保護受給者もおり、バスでの通院は身体的負担、タクシーでは経済的負担が大きい。そうした課題を解決し、移送・介助ニーズにきめ細かく効率的に応えられる体制づくり、タクシー事業への相乗効果も期待して、十三年四月から介護タクシーを始めた。

 昭和三十七年創業。「これまで培ってきた実績を基に、地域に密着した運営」を第一に進めてきた。

「介護タクシーは一般のタクシーに比べて、お客様から喜ばれ、感謝されることが多く、ドライバーのやりがいにつながっています」
 登録者約六百人で、実利用者は半数。要介護1が七割を占めている。利用者の約九割が区内在住、連携する居宅介護事業所もほとんど区内事業所だ。

 ドライバー約百五十人のうち、ヘルパー資格を持つのは六十五人、三人が女性。同社は「ヘルパードライバー」(HD)を商標登録し、他社との差別化を図っている。車両は六十五台を確保。福祉車両はリフト付き大型と、車いすのまま乗車できるスロープ付き小型の二台導入。スロープ付き小型利用は増えているため、状況を見ながら増車を検討するという。

 座席が回転するタイプ、回転式座布団も導入したが、「利用者の体格などで使いづらい場面もあり、HDの介助で対応しています」。緊急時や感染症対策から、車内には消毒液、ゴム手袋、雨が降っても傘をささずに介助できるよう、フード付きレインコートを常備している。

 介助は声かけを大切に利用者のペースに合わせて行う。自宅に送りストーブの火を大きくしたり、着替えを介助することもある。冬場は路面が滑りやすく、「転倒防止には細心の注意を払っています」。外階段のあるアパートでは、利用者を背負って上り下りをするケースもあるほどだ。

「院外薬局が増えており、薬の受け取りに苦労している人も多い」のが現状。そのため、医療機関から薬局に処方せんをファックスしてもらい、HDが受け取りに行き利用者に内容を説明する。

注意事項や配慮など細かく情報共有

 安心安全なサービス提供に向け、毎月全HDが参加したミーティングで道路状況、利用者情報などを共有。今後は対応に苦慮した事例を集約、日々の業務に役立てることも計画している。

 GPSによる迅速配車が特徴。受診終了後の迎えは、利用者に一番近いタクシーが駆け付ける仕組みで、全HDにその日の予定表を持たせている。

 予定表には誰が対応しても同じケアが提供できるよう「手を引いてゆっくり歩行介助」「降車時バランスを崩しやすいので、支える必要あり」など注意事項を記入。「奥様もペースメーカーなので携帯電話の電源は切る」「HDを待たせることを気にしているので、あたたかな気持ちで対応」と細かな配慮も欠かせない。

 スタート当初から介護タクシーに特化しないで展開しようと、訪問介護利用を幅広くPR。現在、六人が利用している。「二十四時間営業、タクシーの機動性を生かし、夜間巡回介護などを手がけていきたい」としている。

介護新聞 2005.3.3(木)