●救急搬送の参入緩和「タク活躍できる分野」

  規制改革3カ年計画改定閣議決定

 政府は25日の閣議で「規制緩和・民間開放推進3カ年計画」(2004〜06年度)の改定を決めた。タクシー事業の新たな改革分野として、ニューサービスに特化した規制の弾力化方針を明記。具体的には、昨年の福祉・介護輸送事業の規制緩和に準じ、救急救命搬送分野の参入緩和を想定。都市部での救急車の出動回数増加が昨今、社会問題化しており、タクシーの“領域”拡大に期待される。タクシー最低保有台数基準とバス・タク運行管理者資格制度の改革は見送り。車検の有効期間延長問題では、国土交通省の主張に沿い小型二輸車の初回分(2年3年に)だけが盛り込まれ、自家用四輸車とバス・タクシー・トラックなどの営業車は外れた。

最低台数基準見送る

 規制改革・民間開放推進会議(議長=宮内義彦オリックス会長)が昨年末と今月23日の2回にわたり答申をまとめ、小泉純一郎首相に提出、これを受け3カ年計画が改定された。

 タクシー関係では、最低台数基準などが見送られた半面、事業者が福祉・介護などの需要を見込んだニューサービスを機動的に行えるよう、現行規制の弾力的な運用を検討する方針が打ち出された。ただ、具体的な内容には踏み込んでおらず、実施時期についても「適宜検討」とされた。

 タクシーニューサービスについて規制改革会議の鈴木良男議長代理は23日の会見後、「都心では救急車が不足し問題になっている。タクシーが活躍できるフィールドの一つと考えている」と述べ、救急搬送事業の参入規制緩和を国交省に働きかける意向を示した。原則として1台から開業できる福祉・介護輸送制度にならい、救急限定の台数基準設定などのアイデアが出ている。

 改定3カ年時計画には救急搬送を“官業”の民間開放の一策として別に明記。病院などへの搬送に「緊急通行権」の付与など、民間委託に向けた環境整備を図るよう提起した。

 タクシー救急搬送をめぐっては、全国福祉輸送サービス協会が対応を模索、「全国民間救急サービス事業者連合会」の発足など動きが活発化している。

 車検延長問題では、現計画に引き続き「抜本的な見直し」と項目立てはされたものの、対象車種が小型二輸だけにとどまった。自家用車や営業車などの検討を次年度以降重点化するかどうかについて、宮内議長は会見で「決して“エンド・オブ・ザ・ワールド。ではないが、担当省庁が「ノー」と言い続けると動けない。多くの国民のサポートがないと前に進まないので、広報活動が問われる」との見解を示した。

 運輸関連分野はほかに、観光通訳ガイド資格の制度改革方針を明記。国交省はすでに06年度スタートに向け作業を進めており、基盤となる「通訳案内業法・外客誘致法改正案」先月国会提出。現行の事業免許制を「通訳案内士」の登録制とし、地域版を新設、試験内容も簡素化。タクシー乗務員や主婦ら兼業者の参入を念頭に置いている。

 雇用・労働分野では、産業別・地域別最低質金制度の見直しや、社会・労働保険の加入事業所の公表などが打ち出された。

東京交通新聞 2005.3.28(月)