●障害者に安心の空間

  宿題パソコン・・・広がる放課後対策

 障害のある子どもたちが、養護学校の放課後や休日に安心して過ごせる居場所づくりが広がっている。働く意欲のある親が増え、子供にとっても同世代で遊ぶ時間が必要だからだ。現在は、一部の自治体が養護学校の空き教室などで実施しているだけだが、国も来年度から障害児の放課後対策への補助を検討している。実施している県を訪ね課題を探った。(杉原里美)

親の働く意欲も向上

 午後1時半すぎ、車いすの子どもたちが、「ひまわりクラブ」の集まってきた。宇都宮市の県立のざわ養護学校の一部屋。最長で午後5時半まで、小学校1年から高校3年の4〜13人のが、宿題を課題したり遊んだりして放課後を過ごす。

 筋ジストロフィーの中学3年森島千裕くん(14)はパソコンゲームが大好き。「みんなと一緒に折り紙もできると話す。母親の恭子さん(37)は飲食店のパートクラブがなかった2年前も午後1時まで、今までは5時まで仕事ができ、経済的に助かっている。「高校生になっても利用したい」

 ひまわりクラブは、03年度から2年間栃木県のモデル事業。児童、生徒の保護者会が運営、年間130万円の助成がある。保護者の負担は週3日で月5千円、不定期で1日700円だ。

 県の事業化までの3年間は保護者会が学校近くに家を借り、自主運営していた。「急用の際に預ける所がない」「子どもがビデオばかり見ている」などの声があったからだ。だが、運営費のためにフリーマーケットで売る小物を作ったり、移送を担ったりできる人は一部。

参加できない親は遠慮がちになり、利用者は数人にとどまった。県の事業化で利用登録者は44人に増えた。

 保護者会の佐藤千晴会長(40)は「子どもが夜、ぐっすり眠れるようになったり重い障害の子の言葉が増えたりした。来年度以降も行政が支援して欲しい」。

 同県が昨年、県内15校の盲・ろう養護学校の保護者にアンケートところ、73.8%が放課後対策が必要と答えた。その理由では「子どもの自立や社会性を養うため」が31.0%、「親の仕事」が28.3%だった。

 鳥取県には長期休業中も親の就労や休息のため障害児を預かる事業がある。
ただ、米子市の「支援センターのぞみ」なぜ2カ所だけ。今年の夏休みも、希望者の一部を断ったが、キャンセル待ちの「待機児」が5、6人になった。
 フルタイムで働く母親(45)「普段から遇5日預けていたが、夏休みに「あの人だけ、ずるい」と苦情があった。後ろめたくて、主婦の友人に預けるなどして利用を控えた」と話す。

市町村に補助

厚労省が検討

 「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会」の鈴村敏規さん(32)によると、障害者放課後対策を独自に実施しているのは22都道府県。

厚生労働省は05年度予算案の概算要求で、市町村の放課後対策への補助として約10億円を盛り込んだ。詳細は年明けに決まるが、1日3時間程度で利用者負担は千円が基本。低所得者へ市町村に任せ切りになったり、国の補助に県費を上乗せして充実させたり、地域格差が出る可能性もある。厚労省は「予算も少ないので、既存の事業がない自治体を優先したい」という。

鈴村さんは「一歩前進だが利用料千円は高い」利用者負担を抑えてきた自治体が。国の水準と横並びになるのでは」と断念する。

「学重保育への障害者受け入れを増やすなど多様な選択肢を要望したい」

朝日新聞 2004.9.29(木)