●障害者自立支援法が成立

  細部は政省令で規定

  06年4月施行 利用者負担は原則1割

 「障害者自立支援法案」が十月三十一日の衆議院本会議で、自民党と公明党の賛成多数で可決、成立した。身体・知的・精神の障害種別に分かれた現行施策を一元化し、サービスにかかる費用を義務的経費化する一方、利用者に原則一割の定率負担を導入するもので、二〇〇六年四月から順次施行される。支払い能力に応じた利用者負担の仕組みを現行制度から引き継ぐ民主党案「障害者自立支援・社会参加促進法案」は、共産党と社会党の支持を得たが、賛成少数で否決された。

 障害者自立支援法案は与党議員の賛成多数により、十月二十八日の衆院厚生労働委員会で可決され、会期末の迫った三十一日に衆院本会議で成立した。

 法案の可決に際し、参議院の厚労委員会では二十三項目の付帯決議(留意事項)が付けられたが、衆院では新たな付帯決議や法案修正は行われなかった。

 ただし、衆院厚労委員会の理事会が@前国会での付帯決議の内容を政省令や法施行に当たり十分尊重すべきA政省令事項や運営方針を社会保障審議会障害者部会で審議する際はそのつど直ちに衆院厚労委員会の理事会に報告すること。各党理事が意見しフォローアップする−と政府に申し入れをした。

 自立支援法案は、障害者施策に必要な予算の確保に国が義務を負うことを柱にしているものの、利用者には原則一割の定率負担が求められるため、障害者や家族の間では不安が広がっている。負担増が結果的に利用控えにつながらないかとの不安も強い。

 そうした不安を汲み、国会審議では最後まで「サービス水準が後退することはないか」「自立と地域移行が本当に進むか」、また「そもそも障害者施策に定率負担の考え方が馴染まない」「当事者の声を聞いて徹底審議すべき」といった激論が続いたが成立して尾辻秀久・前厚労大臣は「適正な施行に努力する」とあいさつした。

 しかし、どのような内容で法が施行されるかは政令や省令の中身にゆだねられているのが実態。厚労省も国会では踏み込んだ質問に対し、「政省令の中で検討する」との答弁にとどまっている部分が多く、付帯決議や理事会の申し入れは、今後のことに配慮したものだ。障害者や家族、地方自治体からは今後さらに「早く基準を示してほしい」「自立生活が可能な基準にしてほしい」といった要望が高まると見られる。

 なお、採決に当たり、政府案に明確な反対姿勢をとってきた野党各党は「当事者不在の政府案は障害者の生活を踏みにじるもの」(民主党)、「基本的人権であるコミュニケーションや移動を利益として負担を求めれば障害が重くサービスが必要な人にほど負担を強いることになる」(共産党)、「食事やトイレ、入浴など生きる上で最低限のことを金で買わせるのは根本的な間違い」(社会党)などと強く抗議した。

 一方、自民党と公明党は民主党案を「将来像を示さず課題を先送りし、非現実的なもの」と批判した。

福祉新聞 2005.11.7(月)