●過疎地型、観光型など地域に対応

  高齢者、子どもの足に-デマンド型で効率輸送

 栃木県芳賀町で先月1日からデマンド型乗合タクシー(愛称・ふれあいタクシー「ひばり」)の運行が始まった。町が補助金を出し、商工会が事業主体となって祖母井タクシー、斉藤タクシーが計3台体制(ジャンボ2台・セダン1台)で輸送にあたっている。

 県南東部で宇都宮市の東に位置する人口1万7千人の同町。鉄道が通っておらず、路線バスも赤字で本数減に。マイカーを使えない高齢者らの移動手段は大きな課題だった。

 2年前に町が係わる施設送迎の現状を見直し、コミュニティ(循環)バスの検討に着手したが、利用が伸び悩んでいる他町の導入例も見聞。昨年段階でNTT東日本から紹介を受けたデマンド交通システムが有力案として浮上し、コミュニティ交通システム導入検討委員会を昨年10月立ち上げた。本年度に入り、商工会主体のデマンド交通運行委員会に移行、実現にこぎつけた。

町内3エリアに分け、事前に世帯単位で利用登録。先月末で約4760人に達した。

 予約センターのオペレーターが電話申し込みを受け、効率的配車を行う。原則毎日午前8時から午後4時運行で、運賃大人1回300円(子ども半額)。

 運行1カ月間の状況は「高齢者の病院送迎が6、7割。老人クラブのイベントや役場、農協、銀行・郵便局、第3セクターの温泉施設などの利用が2、3割」(芳賀町企画課政策推進室)。利用者数は合計575人で1日当たり18・5人。平日の乗車は平均24・7人、土・日曜、祝日は同7・4人だった。

 高齢者ら一般利用503人のほかに、地元プール施設の水泳教室に通う子どもの輸送にも一役。夏季休館前の7月前半は72人を運んだ。従来は町がボランティアを手配していた輸送だ。

 芳賀町商工会では「買い物客にタクチケットを贈る案も検討中。お年寄りの方の外出機会が増え、元気になれば、地元商店街も活性化する」(豊田征夫事務局長)と期待している。

 自ら運転もする斉藤弘・斉藤タクシー専務は「『助かります』『良いものが始まった』など評判は良い。既存顧客と重なる部分でプラス・マイナスはあるが、遠距離利用に結びつく契機になれば」と話す。

 再来年の07年度には県道バイパスが開通見通しで同町は商業集積地を確保。県内スーパー誘致と併せ地元商店街向けに共同店舗も建てる計画で、乗合タク活性化へ新たな拠点となりそうだ。

東京交通新聞 2005.8.8(月)