●「通院公費制度 存続して」

  精神障害者ら訴え 厚労省に21万人の署名提出

 障害者自立支援法案に盛り込まれた精神科通院医療の公費負担制度見直しに関連し、精神障害者団体や家族会などが十一日、現行制度の存続を求め、約二十一万人分の署名を厚生労働省に提出した。法案が成立すれば今年の十月から施行されるだけに、当事者らは「生活破壊につながる」と不安を募らせ、国会議員からも異論が相次いでいる。

 障害者自立支援法案は、精神保健福祉法第三十二条に規定する通院医療の公費負担制度を廃止し、「自立支援医療」として精神科通院医療の公費負担を位置づけている。負担能力の乏しい人、重度障害のために継続的な費用負担が発生する人に重点化することが目的だ。

 これにより、自己負担率は現行の5%から10%に上がる一方、所得によって上限額が設けられる。しかし、所得税額三十万円以上の人(同一生計者の所得を含む)は自立支援医療の対象にならず、医療保険と同じ30%の自己負担となる。

 重度障害の範囲も二年以内に見直されることになっており、利用対象者は限定的になる見通しだ。

 当事者らが問題視しているのは@自己負担が倍になることA本人に所得がなくても家族に所得があると自立支援医療の適用外になること−など。合計二十一万三千百五十六人分の署名を提出した山本深雪・大阪精神医療人権センター事務局長は「所得保障と地域サービスが不十分なまま、負担だけを一般並みにすることは多くの精神障害者にとって生活破壊になる」と訴え、法案審議前に協議の場を設けるよう求めた。

 署名の提出に先立って参議院議員会館で開かれた集会には各地から当事者、家族、支援者らが集合。大阪府の家族会の男性(63歳)は「三十五歳の息子は三年前から新薬で症状が落ち着き、先月一人暮らしを始めたばかり。クリニックでのデイケアと診療で月に八千〜一万円負担しているが、今後の負担増で通院できなくなれば改善の道が閉ざされてしまう」と話した。

 国会議員からも「金がないと生存権が保障されないと思うと怒りを覚える」(社民党・福島みずほ氏)、「法案には憤りを感じる」(公明党・松あきら氏)、「国会で質問攻めにし、継続審議に持ち込みたい」(民主党・石毛^子氏)といった異論が相次いだ。

 厚労省によると、〇三年度に通院公費を利用した精神障害者は月平均七十六万人。一人当たりの医療費は月平均三万二千円で、その5%に当たる千六百円が自己負担額だ。厚労省は「精神科通院公費の利用者は急増し、一般的な疾病になっている」と説明し、一〇年度には利用者数が百十五万人に上ると推計している。

福祉新聞 2005.3.21(月)