●運営協での80条許可取得協議

  社協も必要か議論に

  運営協ありきが原則 国交省見解

 福祉移送サービスを実施する上で必要な道路運送法許可の取得期限が1年を切ったが、社会福祉協議会などの公益性の高い機関・団体の80条許可取得には有償運送・運営協議会の協議が必要か不要かといった議論が急浮上している。きっかけは北海道庁が管内市町村の社会福祉協議会は運営協の協議が不要との見解を出したことによる。この動きに国土交通省は「運営協ありきが原則」との見解を示しており、道側が対応を見直している。移送サービスに取り組む各地の社協約1000事業所1500台がどういう経過で許可事業者になるのか、各地タクシー事業者も注視している。

 北海道庁は今年2月、保健福祉部長名で訪問介護事業所などに出した介護輸送の実態調査要請文の制度説明の中で、福祉・過疎地有償運送の80条許可取得では「市町村社会福祉協議会は(運営協の協議が)不要」と明示した。これに対し、北海道運輸局からクレームが付き、3月末から社協の運営協問題として取り扱いを双方で調整している。

 この問題について道庁は「昨年3月に介護輸送の取り扱い方針が国土交通省と厚生労働省から出て以降、社協の移送サービスは市町村の委託が多く公益性が高いため、北海道運輸局に照会した上で、道として『社協は運営協の協議不要』と最終判断していた。ところが、運輸局から運営協が前提との話しがあり、改めて調整している」(保健福祉部地域福祉課)という。

 道庁によると、道内約200市町村には自治体ごとに社協があり、そのうち約50団体の社協が80条許可による移送サービスを考えている。専任スタッフが少ないため、2種免許や青ナンバーの運行管理が必要な4条・43条許可の希望はない。

 移送サービスを希望する約50の社協が許可を取得するには運営協の設置を待って許可申請する必要がある。だが、所属する自治体では運営協の設置見通しが立っていないところが多い。今回の道の判断で社協が即、運輸支局に申請、許可取得できる方向だった。

 国土交通省は、「福祉有償運送は運営協ありきが原則。自治体が十分な輸送サービスが確保できないと先ず認めて立ち上げた運営協議会の協議に基づき許可を判断する仕組みになっている。公益性の高い社協を含む社会福祉法人、医療法人、公益法人なども、運営協を通じた許可申請が必要」(自動車交通局新輸送サービス対策室)との見解だ。

 これにより、道内自治体では運営協の設置を急ぐことになりそうだ。北海道では地理・気候的に運営協の協議に参加できないケースも予想される。この点については、国交省は「運営協開催に当たり想定されるメンバーの事前了解が得られた場合は、主宰の自治体が運営協の手続きを経たものとしてよい」との見解だ。

 実際に今年3月末、南富良野町が地元社協の許可をめぐり運営協を立ち上げたが、このときは持ち回り協議で許可申請を了解した。北海道以外の地区では、地元社協は運営協の設置を待って80条許可申請に及んでいる。国交省の見解によると、社協も例外なく運営協を通過しなければならないことになる。

 ただ、全国の運営協の設置動向は、来年3月末までの取得猶予期限までの向こう約1年で設置が進むと、楽観視する向きもあるが、現実は自治体の予算なども絡んで遅々として進展しないのが現状。このままでは来年4月以降、道運法違反で摘発される移送サービスが相次ぐとの懸念が早くも出ている。そうした事態を避けるため、国交省や厚労省では公益性によっては許可取得を容易に実施できる措置を講じる可能性もある。

 地元タクシー業界では「公益性から社協を運営協の協議から外せば医療法人も公益法人も、場合によっては商工会議所も適応が外れる可能性がある。そうした団体が80条を簡単に取得して移送サービスを始めるようになれば、青ナンバー事業者は規制コストによるハンデから太刀打ちできなくなる」と反発している。

 反発だけでは自体は解決しないとして、タクシー事業者の中には「運営協を通じても早晩、公益法人の80条許可事業者が急増する流れは変わらない。そうであれば、青ナンバー事業者に対する制度および車両関係の規制をさらに緩和してもらい、身軽なサービスが展開できるよう行政に働きかけるべきだ」との意見が強まっている。

東京交通新聞 2005.4.25(月)