●点字選挙公報の実現に向けて

●点字による選挙公報発行などに関する質問主意書

 選挙権は、憲法十四条、第四十四条により、国民固有の権利として等しく保証されている。

昨今、障害者が健常者と同様に社会生活を過すため、「バリアフリー」、「ノーマライゼーション」などが言われながら、現実の選挙権の行使に関しては、投票所において様々な障害があり、また、視覚障害者が投票の判断材料とする選挙公報に関して十分な情報が得られにくいなど多くの課題が山積みしているものと考える。

この中でも、視覚障害者のための点字選挙公報は、これまで製作コストや期間、公平性の担保などの点から発行が困難だったと考慮するが、札幌の写真製版会社が「安く、早く、大量に」点字印刷を可能にした技術を実用化するなど(平成十年八月十三日付朝日新聞家庭面報道)、著しい技術進歩も見られる。社会福祉法人盲人会連合も平成九年度政府予算案編成にあたり、自治省等に対し「点字による選挙公報の発行」を要望している。

政府は、来るべき統一地方選挙などを前に、視覚障害者が憲法に保証された参政権を適正に行使できるよう、点字による選挙公報発行に向けた整備等を推進すべきだと考える。そこで、以下の通り質問する。

一、        衆議院は、昭和五十一年十一月四日、点字公報発行を含めた「障害者の選挙権行使に関する請願」(第六〇九号)を採択し、内閣に送付している。また、昭和五十年二月二十四日の衆議院予算委員会第三分科会において、自治大臣をはじめ政府は点字広報の発行等に関し、検討を約束している。さらに、政府は、「必要な諸条件が整うのを待ちまして実行に移すことを検討する…」(昭和五十二年三月二日、衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会)、「点字の公報は公職選挙法上に明文の根拠があるわけではございません。そういう意味で一種の便宜供与とか啓発とか言う側面を持っていることもまた事実でございます。むずかしく申し上げますよりは、現在のように色々な混合形態ではではございますが、実態に即して点字公報が出され、国政の選挙でありますからには、国費の範囲内で賄われていくようにというような姿勢で臨んでまいりたいと思っております。」(昭和五十八年二月二十三日、衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会)、「点字広報につきましては、…その内容の充実につきまして今後とも指導、協力をしてまいりたい…」(平成三年四月九日、参議院文教委員会)等と答弁している。請願に対し、どのように対応したのか、また、この二十年来、政府としてどのように取り組み、成果を上げているのか伺いたい。

二、        公職選挙法(以下「公選法」という。)第百六十七条による選挙公報に関し、点字による選挙公報を通常の文字による選挙公報と同様に発行することは法律上可能か。この点について、自治省は、昭和四十四年九月二日回答により「点字による選挙公報の申請の取り扱いについて」において「選挙公報を点字により発行することが出来ない」とし、また、「公職法第百六十八および第六十九条では、このような趣向から、選挙公報を点字で発行することは、まったく想定していなく…」としているが、自治省がそのように解釈する法的根拠を示されたい。

三、        政府は視覚障害者に対し、各候補者の政策、公約を知らしめるため、実際にどのような取り組みをされているか示されたい。また、政府は、地方選挙における実情についてどのように把握しているのか示されたい。

四、        公職法第百七十二条の二による「任意性選挙公報」に関し、北海道選挙管理委員会は、同法第四十七条および前期自治省回答を根拠に「点字による任意性選挙公報の発行は法律上できない」(平成十年七月三十日電話回答)としている。しかしながら、同法第百七十二条の二、地方自治法第百十二条および同法第百四十九条第一項により、点字による選挙公報の発行を内容とする条例案を地方公共団体の長又は議会の議員が提出することが出来ると解すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

五、        府は公選法第百六十七条による選挙公報および同法第百七十二条の二による「任意制選挙公報」に関し、視覚障害に対する参政権を保証するためにも、点字印刷技術の進歩状況を踏まえ、各候補者の政策、公約をも含む点字による選挙公報の発行を積極的に推進し、指導すべきと考えるが、見解を伺いたい。

以上質問する。


●参議院議員小川勝也君提出点字による選挙公報などに関する質問に対する答弁書

一、三及び五について

点字に選挙公報の発行を制度化することについては、従来から、各選挙管理委員会が選挙運動の期間中にかぎられた期間内に誤りなく点字による選挙公報を調製することが出来るか、その調製した選挙広報を視覚障害者に公平に配布することが出来るかなどの技術的な問題があり、これを実現することは現時点でも困難であると考えている。

しかしながら、これまでも視覚障害者が公職の候補者又は名簿届で政党などの政策、公約等を知ることが出来るように、衆議院議員総選挙又は参議院議員通常選挙が行われる都度、各都道府県及び選挙管理委員会に対し、啓発活動の一環として公職の候補者の氏名、経歴などや名簿届出制等などを点字で掲載した「選挙のお知らせ版」を視覚障害者などに配布するように指導してきているところである。

当該「選挙のお知らせ」については、昭和五十五年の衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙においては二十一都道府県の配布にとどまっていたが、本年の参議院議員通常選挙においては四十六都道府県において配布されていると認知している。なお、これに要する経費については、従来から国が選挙執行委託費により措置している。

地方選挙のうち、公職選(昭和二十五年法律第百号)第百六十七条第一項の規定により選挙公報を発行することとされている都道府県知事の選挙については、大多数の都道府県において、参議院議員総選挙又は参議院議員通常選挙と同様との取扱いがなされていると承知している。

いずれにしても視覚障害者の方々の貴重な選挙権の行使に関わる問題であるので、選挙の公正さを確保しながらどのような工夫が出来るのか研究してまいりたい。

二について

公職選挙法第百六十七条に規定する選挙公報は、同法第百六十九条第二項の規定により掲載分又はその写しを原文のまま掲載しなければならないとされているため、現行法上これらを点訳して発行することは出来ないものと考える。

また、点字により掲載文の申請があった場合において点字による選挙公報を発行することについては、選挙公報が同法第百七十条第一項の規定により選挙人名簿に登録されたものの属する各世帯に配布するものとされていること等からみて、現行法上点字での発行を想定しておらず、これを発行することはできないものと考える。

四について

任意制選挙公報の発行については、公職選挙法第百七十二条の二において、同法第百六十七条から第百七十一条までの規定に準じて条例で定めることと想定しているため、現行法上点字による選挙公報を発行することは出来ないと考える。


●点字による選挙公報発行に関する再質問主意書

政府は、「点字による選挙公報発行に関する質問」(質問第三号)に対する答弁書(内閣参質一四三第三号。以下「答弁書」という。)で、点字選挙公報発行について「視覚障害者の方々の貴重な選挙権の行使に関わる問題である」としながら、「現行法上点字による選挙公報を発行することはできない」との見解を明らかにしている。しかし、この政府答弁は公職選挙法の解釈に誤りがあり、また、「限られた期間内に誤りなく点字による選挙公報を調製することができるか・・・技術的な問題があり、これを実現することは現時点でも困難である」との答弁も、技術に進歩に目を向けず、現状認識が不十分と考える。

そこで再度、以下の通り質問する。

一、    政府は、あるべき姿として、点字による選挙公報の発行が行なわれた方が良いと考え るか、または、不要と考えるか。

二、    答弁書において、「技術的な問題があり」としているが、実現が不可能なほどの、ど のような点があるのか、具体的に示されたい。

三、    答弁書において政府は、「これまでも視覚障害者が公職の候補者又は名簿届出政党等の政策、公約等を知ることが出来るように、衆議院議員総選挙又は参議院議員通常選挙が行われる都度、各都道府県の選挙管理委員会に対して、啓発活動の一環として公職の候補者の氏名、経歴等や名簿届出政党等の政権など点字で掲載した「選挙のお知らせ版」を視覚障害者等に配布するよう指導してきている」としているが、

(ア)                 各都道府県に対し、具体的にどのような形と内容で指導しているのか、通達、通知等の内容を示されたい。また、平成十一年執行の統一地方選挙においてもすでに指導しているのか、あるいは今後その予定があるのか。

(イ)                 「政見」の定義を示されたい。

(ウ)                 衆議院選挙及び参議院選挙において、候補者の氏名、経歴以外に、政策、公約まで点字で掲載した「選挙のお知らせ版」の発行実績を具体的に示されたい。なお、発行実績が多数ある場合は、直近の衆議院選挙、参議院選挙通常選挙、統一地方選挙について示されたい。

(エ)                 「選挙のお知らせ版」は公職選挙法上、どこに法的根拠があるのか。また、現行法で、その発行は想定されているのか。法的根拠がないとすれば、公職選挙法に低触しないのか。また、政府の論法に従えば、法律上想定していないものはできないのではないか。

(オ)                 点字選挙公報と「選挙のお知らせ版」の違いを明確に示されたい。

(カ)                 「選挙のお知らせ版」であれば「限られた期間内に誤りなく点字により調製し」「視覚障害者に公平に配布」できるのか。もしできるとすれば、選挙公報においても可能ではないのか。また、できないとすれば、選挙の公平の観点から問題はないのか。

(キ)                 任意制選挙公報の内容に準じて、各自治体選挙管理委員会が「選挙のお知らせ版」を発行することは可能か。できないとすれば、その法的根拠を示されたい。

四、    前回の質問でも指摘したように、政府は、昭和五十年二月二十四日の衆議院予算委員会第三部科会において、点字公報の発行などに検討を約束している。さらに「必要な諸条件が整うのを待ちまして実行に移すことを検討する…」(昭和五十二年三月二日、衆議院公職選挙改正に関する調査特別委員会)、「点字の公職選挙法上に明文の根拠があるわけではございません。そういう意味で一種の便宜供与とか啓発とかいう側面を持っていることもまた事実でございます。難しく申しあげますよりは、現在のように色々な混合形態ではございますが、実態に即して点字公報が出され、国政の選挙でありますからには、国費の範囲内で賜れていくような姿勢で臨んでまいりたいと思っております。」(昭和五十八年二月二十三日、衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会)、「点字公報の発行はできない」とする答弁書の内容と正反対の見解である。国会答弁は誤りであったのかまた変更したのだとすれば、いつの時点で方針を変えたのか。

五、    答弁書では「(公職選挙)法第百六十九条第二項の規定により掲載分又はその写しを原文のまま掲載しなければならないとされているため、現行法上これらを点訳して発行することはできない」としているが、点字による現行をそのまま掲載することを制限する法律などはあるのか。また答弁書では「選挙公報が同法第百七十条第一項の規定により選挙人名簿に登録された者の属する各世帯に配布するものとされていること等からみて、現行法上点字での発行を想定しておらず、これを発行することはできないものと考える」としているが、「法律上想定されていないことはできない」ということの法的根拠を示されたい。

以上質問する。


●参議院議員小川勝也君提出点字による選挙公報発行等に関する再質問に対する答弁書

一について

現行の公職選挙法(昭和25年法律第百号)の規定に基づいて発行される選挙公報(以下「法定の選挙公報」という。)を点字により調製し、発行することを制度化することは、現時点では困難であるが、視覚障害者が公職の候補者又は名簿届出政党などの政策公約等を点字により知ることができることが望ましいと考えている。

二について

法定の選挙公報は、掲載分又はその写しを原文のまま掲載しなければならず、また、原則として選挙の期日の公示又は告示の日から掲載分のまま申請を行い、選挙人名簿に登録されたものの属する核世帯に対して当該選挙の期日の二日前までに配布するものとされている。

しかしながら、現状では、このような告示又は告示後の限られた期間内に掲載文のすべてを誤りなく点字に調製することは困難である。このため、法定の選挙公報ではないが現在配布されている点字による「選挙のお知らせ版」についていえば、衆議院の比例代表選出議員の選挙においては、社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会が名簿届出政党等となる見込みの政策その他の政治団体に対し告示の日の二週間程度前までに法定の選挙公報とは別の限られた字数の文字のみによる掲載文の提出を求め、この掲載文を基にして点字により調製した冊子を作成し、これを都道府県の選挙管理委員会が購入して点字による「選挙のお知らせ版」として配布する方法を採っているところである。衆議院小選挙区選出議員又は衆議院選挙区選出議員の選挙においては、点字による「選挙のお知らせ版」を選挙区ごとに調製しなければならず、候補者ごとに掲載文があるがために掲載分の数も多いことから、限られた期間内にこれらの掲載分を点字により調製することはさらに困難であり、三の(ウ)についてで述べるとおり、候補者の政見等まで掲載した点字による「選挙のお知らせ版」を配布している府県は、少数にとどまっている。

また、現状では、法定の選挙公報のような大量の部数を調製することは困難であり、かつ、限られた部数の配布について対象者を正確に把握することも困難である。このため、点字による「選挙のお知らせ版」についていえば、点字図書館、視覚障害者団体等を通じて配布するにとどまっているところが多い状況にある。

三の(ア)について

衆議院議員総選挙又は参議院議員通常選挙が行われる都度、自治省選挙部長名で各都道府県の選挙管理委員会委員長当てに通知しているところであり、平成十年執行の参議院議員通常選挙に際しては、別紙一のとおり通知している。

平成十一年執行の統一地方選挙においては、法定の選挙公報を発行する選挙について国政選挙に準じた内容の通知を知る予定である。

三の(イ)について

公職選挙法上特別に定義されていないが、公職の候補者等が当選を得るために選挙人に対して発表する政治的見解又は意見の意味で用いている。

三の(ウ)について

比例代表選出議員の選挙においては、二についてで述べたように限られた字数の掲載文により調製したものについて平成八年執行の衆議院議員総選挙で四十四都道府県、平成十年執行の参議院議員通常選挙で四十五都道府県において配布していると承知している。

平成八年執行の衆議院議員総選挙の小選挙区の選出議員の選挙においては、四十六都道府県で配布しており、うち法定の選挙公報に記載されている政見まで点訳したのが十府県、候補者の氏名、所属党派、経歴等のみを点訳したのが三十六都道府県であったと承知している。

また、平成十年執行の衆議院議員通常選挙の選挙区選出議員の選挙においても四十六都道府県で配布しており、うち法定の選挙公報に記載されている政見まで点訳したのが十九府県、候補者の氏名、所属党派等のみを点訳したのが三十四都道府県であったと承知している。

また、平成七年執行の統一地方選挙を含め、直近の都道府県知事の選挙においては、四十一都道府県で配布しており、うち法定の選挙公報に記載されている政見まで点検したのが十九府県、候補者の氏名、所属等のみを点訳したのが二十二都道県であったと承知している。直近の都道府県の議会の議員の選挙においては、法定の選挙公報発行している二十一都府県のうち三都府県で配布しており、いずれも法定の選挙公報に記載された政見まで点訳していると承知している。

三の(エ)から(カ)までについて

「点字による選挙公報発行などに関する質問に対する答弁書」(平成十年九月十八日内閣参質一四三第三号。以下「前回答弁書」という。)における「点字により選挙公報」は、法定の選挙公報をすべて点字により調製したものという意味で用いたものであり、現在、公職選挙法にこれを定めた規定はない。 点字による「選挙のお知らせ版」は、公職選挙法第六条第一項の規定に基づく啓発活動の一環として配布されているものである。

なお、「点字による選挙公報」もしくは点字による「選挙のお知らせ版」を指してまたはその両者を併せて「点字公報」又は「点字の公報」の語が用いられる場合もある。

点字による「選挙のお知らせ版」は、前提の通り啓発活動の一環として行なわれるものであるため、法定の記載事項によらず又は法定の限られた期間によらず可能な範囲内で調製し、また、法定の配布方法によらず点字図書館、視覚障害者団体などを通して配布したり、点字図書館において閲覧に供する等工夫をこらしつつ普及に努めているところである。

三の(キ)について

任意制選挙公報についても、点字による「選挙のお知らせ版」として法定の選挙公報に記載されている候補者の氏名所属等は、経歴、政見等を点訳したものを配布することは、可能であると考える。

四について

御指摘の国会答弁中、昭和五十八年二月二十三日衆議院公職選挙改正に関する調査特別委員会における答弁及び平成三年四月九日参議院文教委員会における答弁の引用部分にある「点字広報又は、「点字の公報」の内容を述べた部分は、別紙二の通り点字による「選挙のお知らせ版」の意味で用いられているものであり、前回答弁書は従来からの国会答弁書を変更したものではない。

五について

点字による掲載文の申請があった場合については、前回の答弁書の二についてで述べたとおりであり、選挙公報が公職選挙法第百七十条第一項の規定により選挙人名簿に登録された者の属する各世帯に配布するものとされていること等からみて、現行法上点字による現行をそのまま掲載して法定の選挙公報として発行することはできないものと考える。

いずれにしても視覚障害者の方々の貴重な選挙権の行使に関わる問題であるので、当面、現在配布されている点字による「選挙のお知らせ版」について普及及び内容の充実を図りつつ、選挙の公正さを確保しながらどのような工夫ができるの研究してまいりたい。


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