その他情報(2006年5月)

補助犬法『罰則規定は見送りへ』
厚労省検討会 社会の認識向上が先決

厚生労働省は12日、身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)の施行状況に関する検討会を開いた。焦点となっている「補助犬受け入れ拒否を行う民間事業者への罰則規定」については、改正法案に盛り込むことを見送ることが濃厚となった。
検討会が罰則規定を見送った背景には、国民が補助犬使用者と接する機会が少ない実態がある。
現在の補助犬は、盲導犬約千頭、介助犬30頭、聴導犬11頭しか認定されていない状況。同日の会合では、まず広く一般社会の理解を得ることが大切で、罰則を設ける場合は補助犬法ではなく障害者基本法など、障害者施策全般の中で検討するべきだという意見が大半を占めた。
また、補助犬使用者の中には受け入れを拒否されたことを通報することで、補助犬使用に関する社会的イメージの悪化を危惧する声もある。
こうした状況から、検討会は罰則規定を盛り込むことは時期尚早と判断。ただし、今後受け入れを拒否した事業者名を公表することを見据え、その手続きなどの基準を作るよう提案する。
また、同伴拒否された使用者が相談する窓口は都道府県や市町村の障害福祉部局としつつ、保健所などと連携しながら対応することも求める。
同検討会は5月中に報告書をまとめ、補助犬法の改正に向けて超党派で構成する議員の会(津島雄二会長)に提出する。
福祉新聞-2006.05.22

補助犬法改正「学校も受け入れ義務に」
使用者ら議員の会に陳情

身体障害者補助犬の使用者団体らは4月27日、身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)の改正に向けて、超党派で構成する議員の会(津島雄二会長)に要望書を提出した。
これまで補助犬同伴の受け入れが努力義務になっている民間の住宅・職場を義務化することを求めていたが、これに加えて学校も義務化するよう訴えた。また、訓練中の犬を公共交通機関で同伴できるようにすることも求めた。
陳情に訪れたのは、盲導犬、介助犬、聴導犬の使用者団体の連絡協議会(竹前栄治会長)と全国盲導犬施設連合会(塩濱良夫会長)の関係者8人で、議員の会の津島会長、阿部知子・事務局長らの部屋を訪れた。
補助犬使用者らは厚生労働省の検討会で求めている①同伴を拒否された場合の救済機関の設置②悪質な受け入れ拒否に対する罰則規定の検討③補助犬法の普及活動――についても要望。また盲導犬の訓練団体の代表は「住む、学ぶ、働くという基本的な生活の場面で補助犬同伴が義務化されないと困る」と話し、実際に使用者らが職場や学校で拒否された事例を挙げ、改正を訴えた。
要望書を受け津島会長は「趣旨は十分理解した。改正法案については何とも言えないが、与野党の話さえつけば極めて短時間で処理できる」と今国会での成立に向けて意欲を示した。
福祉新聞-2006.05.15

教育基本法  障害児教育を初めて明記
改正案を国会提出

政府は4月28日、教育基本法の改正案を国会に提出した。同法の改正は1947年の制定後初めてのことで、国・地方公共団体が障害児の特別支援教育に必要な施策を講じること、家庭教育・幼児期の教育を支援・振興することなどを新たに位置付けた。
同法は我が国の教育の目的などを定めたもの。11条からなり、親が子どもに9年間の普通教育を受けさせる義務を負うこと、国や地方自治体が教育の機会均等を保障することなどを明記している。
改正法案は時代の変化に対応し、今求められている教育の目的・目標を明示しようと上程されたもので、新たに「教育の目標」「生涯学習の理念」「大学」「私立学校」「教員」「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」「教育振興基本計画」について規定、18条からなっている。
第1条「教育の目的」では「教育は人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない」と明記した。
またこの目的を実現するために達成すべき具体的な内容については、第2条「教育の目標」で①幅広い知識・教養、豊かな情操、道徳心、健やかな身体②能力の伸長、自主性、自律性、勤労を重んじる態度③正義と責任、自他の敬愛、男女の平等、公共の精神に基づき社会の発展に寄与する態度④生命や自然の尊重、環境の保全に寄与する態度⑤伝統・文化の尊重、我が国と郷土を愛し、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度――を養うことを挙げた。
現行法で「人種・信条・性別・社会的身分・経済的地位・門地により教育上差別されない」「国・地方自治体の責務として能力があるにもかかわらず経済的理由によって就学が困難な者に対して奨学の措置を講じる」と規定している第4条「教育の機会均等」では、これらに加え新たに「障害のある者がその障害の状態に応じて十分な教育を受けられるように教育上必要な支援措置を講じること」を国・地方自治体の責務として盛り込んだ。
第10条「家庭教育」では、子どもの教育についての第1義的責任を有する者として、父母やその他保護者を位置付け、生活習慣を身につけさせるとともに、自立心を育成するよう求めた。
また、国・地方自治体に対し、保護者に対する学習の機会や情報提供など家庭教育を支援することを責務として位置付けた。
さらに第11条「幼児期の教育」では、良好な環境を整備するなど国・地方公共団体がその振興に努めることを責務とした。
同法案については「愛国心」の表現などを巡り与党内にも異論が残っているほか、野党側も強く反発している。政府は今国会内での成立を目指しているが、審議には相当の時間を要すると見られ、今期延長がなければ今国会内での成立は微妙な情勢となっている。
福祉新聞-2006.05.15