移動支援・STS情報(2006年5月~6月)
関東運輸局の益田浩自動車交通部長は21日、同局記者会との定例会見で、放置駐車の確認事務の民間委託制度実施後の自動車運送事業への影響について「情報似集に努めているが、今のところ深刻なトラブルが発生しているとは聞いていない」とした上で「トラックの配送業務や福祉・介護タクシーの乗降介助に支障が出ているようであれば警察当局とも協議していきたい」との考えを示した。
一方で「路上駐車の車が減り、歩行環境が改善されたのではないか」とするとともに「相当数の(自家用車の)駐車違反がなくなったことで、客待ちタクシーによる違法駐車や交通渋滞が目立つようになる。客待ちタクシーの渋滞解消対策が課題となろう」と述べた。
同部長はまた、さきにスタートした六本木タクシープールの運用状況にも触れ「東京タクシーセンターが街頭指導などでビラを配布しているが、入講ルールが徹底されていない面があるようだ。一層周知に努める必要がある」と指摘した。
東京交通新聞-2006.06.26
福祉車「導入義務づけは困難」
バリフリ新法成立 自校局長が国会答弁
交通バリアフリー法(公共交通機関・駅施設)とハートビル法(建築物)の現行2法を統合し、福祉タクシーやLRT(軽量軌道交通)などを新たに位置付ける「バリアフリー新法」案が15日の衆院本会議で可決、成立した。年内に施行され、国土交通省は今後、旅客施設・車両の「移動円滑化基準」など省令や運用面の策定に入る。タクシー事業者への福祉車導入義務付けをめぐっては、14日の同国交委員会で宿利正史自動車交通局長が「利用者は営業所で車両を予約、選択できる」と述べ、義務化措置は困難との見解を示した。
国交委の質疑で遠藤宜彦議員(自民、比例・九州)は「高齢者や障害者が日常すぐに福祉タクシーを利用できるようにするには、100台に1割ぐらい事業者に保有を義務付けてもいいのでは」と指摘。田名部匡代議員(民主、比例・東北)はノンステップバスの普及に向けた施策をただした。
宿利自校局長は「少子・高齢社会が急速に進展する中、ニーズが高いことは承知しており、補助制度や税制優遇など多くの政策を講じている。タクシー業界は需要の低迷が続き、経営が苦しい状況にもある。各社に一定台数の義務化は適当でない」と答えた。
同委では、高齢者・障害者の意見の反映や移動円滑化に向けた支援など11項目の付帯決議が採択された。法案は参院で先行して審議・可決していた。
東京交通新聞-2006.06.19
国土交通省の岡野まさ子自動車交通局旅客課長補佐は14日、NPO全国介護移送協会のシンポジウムで、10月スタート予定の自家用車ボランティア有償運送「登録」制度の細部を規定する省令・運用通達について、来月中に省令を公布する意向を示すとともに、運営協議会の意思決定ルールの提示など一定の方針を明らかにした。月内にも省令案に対するパブリックコメント(一般意見)の募集が行われる見通し。
移送団体の道路運送法80条許可(新制度では79条登録)申請了承など運営協の議決のあり方をめぐっては、タクシー業界側から「多数決は不公平。全会一致にすべき」との要望が出され、今国会でもやりとりがあった。改正法では登録の拒否要件として「関係者が合意していないとき」と定めている。
岡野課長補佐は「地域で話し合って決める仕組みなので、国が全会一致とか多数決にすべきとかは示さない。ただ、多数決に当たりメンバー構成に著しく偏りがある場合は、地域が必要としている交通を反映しないと思うので、決め方など要綱的なモデルを示したい」と述べた。運転協力者の講習に関し同課長補佐は「一定レベルの『認定講習』を検討していている」とした。
東京交通新聞-2006.06.19
自治体の役割巡り白熱
福祉交通の明日考えるセミナー 4氏がパネル討論
タクシーとNPO(民間非営利団体)ボランティアが協働する「福祉交通の明日」をテーマに、介護タクシー事業者でつくるNPO全国介護移送協会(会長=黒田司郎・堺相互タクシー社長)のパネル討論が14日、東京千代田区の主婦会館で開催、福祉輸送の"ビジネス化"の意義や運営協議会の問題点など活発に意見が交わされた。パネラーは国土交通省の岡野まさ子自交局旅客課長補佐、車いすレーサーでパラリンピック銀・銅メダリスト廣道純氏、NPOワーカーズ・コレクティブケアびーくるの河崎民子理事長、主催側の黒田会長の4氏。
高校生のときバイク事故で車いす生活になった廣道氏。「米ロサンゼルスでは車いすのまま乗り込めるタクシーが走っている。5ドルほどの観光サービスもある」と各国交通機関の体験談を紹介し、「福祉タクシーは需要がないと経営が成り立たないと思う。ただ、障害者にボランティアが対応するという図式には限界があり、ビジネスにつなげたり、税金など国民が「少しずつ賄ったりすべきだ」と訴えた。
運賃と介護料を包括し割安に
黒田氏は自社サービスの一例を取り上げ「運賃と介護料をパッケージ化し割安にしている。4月の利用回数は前月に比べ倍に伸びた。真剣にやれば業として成り立つ」と協調、「福祉に関心のない経営者がまだ多い。周りのタクシー・NPOを巻き込み、使いやすい交通をつくりたい」と述べた。
「通院・通所など『マスト需要』が圧倒的に多く、社会参加といった『ウォント需要』はなかなか促進されない」と課題を投げかけた河崎氏。地元・神奈川の「新しい公共プロジェクト」に触れ「タクシーとNPOは地域交通を担う仲間。県内福祉輸送を3.3倍に高める目標に向け、いがみ合う状況を打開したい。どんな輸送手段があるか利用者が分かる一元組織をつくり、共同配車も考えたい」とした。
共同配車問題では黒田氏が「国の補助制度を活用したいが、自治体に理解がないと申請できないと指摘。岡野氏は「NPOが参加しないといけない仕組みではないが、自治体との協調補助なので、自治体が出さないと国費投入できない」と理解を求めた。
自治体に運営協設置義務づけを
運営協議会の現状について河崎氏は「設置数は全国で約半数が遅延。有償運送をやめたり、道路運送法4条・43条許可(青ナンバー)に走ったりと苦悩している団体が多い」と憂慮し「自治体に運営協の設置を義務付けできないか」と主張した。岡野氏は運営協設置義務化の是非に「地方分権の流れの中で国が動くのは時代に逆行する。ただ、安全の確保は地域差が出てはならず一定の基準を決めている。自治体が主導権を握ってほしいとさらに働きかけていきたい」と述べた。
バリアフリー構造に対し廣道氏は、使う側の視点として「地下鉄駅の移動は予想以上に不便。障害者は世間に遠慮して外出しないままだ。バリアフリ新法がどれだけ浸透しているか。すべての交通が一体となって変わってほしい」と切望した。
東京交通新聞-2006.06.19
福祉共同配車に"法の縛り"
クロス配車・統一運賃不可 世田谷区も軌道修正
タクシーとNPOの共同配車センター設置の動きが「法的問題」の直撃を受けて停滞気味だ。法的問題とは①NPOの登録客を別のNPOの空車に配車するクロス配車ができない②センター統一運賃と個別認可運賃を別建てにできるか──の2点が道路運送法の有償運送ガイドラインに抵触するという疑い。枚方市に次いで今夏、共同配車センターの開設を準備中の東京都世田谷区は、クロス配車は当面行わず運賃統一も見送るなど起動修正を迫られた。先月末、世田谷移動サービス協議会(NPOなど17団体・事業者)幹部が国土交通省に法的問題をただした結果、同省は80条許可団体が会員を共通にし運営協議会で了承されれば合法との見解を示し、新たな展開が出ている。
クロス配車と統一運賃が禁じられると、効率性がメリットの共同配車センターの根本機能が低下することは確か。現行ガイドラインでは①登録利用者は当該NPOに登録しているため、別のNPOの車両が空いているからといってそれに乗せることはできない(クロス配車不可)②NPOの料金は運営協で了承されたもので、別途センター料金を勝手に設定できない(料金統一不可)という二重の縛りがある。
このため、タク業界は配車参画対象からNPOを除外し、青ナンバー事業者(一般タクと患者限定)だけでセンター運営する方向に傾いている。
世田谷区では、区が国交省に法的問題を確認した結果、NPO法人間の相互利用は行わず、料金もそれぞれの事業者によることに転換した。ただ、直接配車はできないが、NPOにふさわしい利用者がいれば紹介していくスタンスをとっている。同区の配車センターは当面青ナンバー事業者が主力になるとみられている。
電話1本で区内のあらゆる送迎サービスにつなぐワンストップサービスを標ぼうする同区の目標が後退したのは事実だが、「今の段階では非効率になっても、違法を行うわけにはいかない。国交省の了解を得られた中で対応するしかない」と苦渋の表情だ。
こうした中、世田谷移動サービス協儀会が先月末、国交省と確認した事項が11日の同協議会主催の緊急セミナーで明らかにされた。それによると、同省の回答は①240号通達(有償運送ガイドライン)では、「会員」とは小規模なNPO団体のサービス提供を受ける特定かつ限定的なものを想定しているため、認定範囲からいくらでも逸脱する可能性がある「一日会員」や「共通会員」を同通達で認めるわけにはいかない。また実証実験期間や世田谷だけの限定的な認め方も無理がある②現実のNPO活動の対象会員が特定的で相互にサービス提供を融通しあっても限定的なものでしかないことは承知している。例えば80条許可団体が会員を共通にすることなどは、地域の運営協で240号通達の範囲で了承すれば合法的な手続きとなる③全国的な遠地のNPO団体の利用に関しても、実際はそのようなことが行われていることは理解できる。許可要件には入らないが、助け合いの中で行われているのなら、直ぐに取り締まりの対象になるわけではないというもの。
こうした見解を踏まえ、同区のNPOはクロス配車対策として、利用者の登録を各NPOに拡大する重複登録を検討、改めて運営協の了承を得る方向を模索し始めている。
東京交通新聞-2006.06.19
運営協で厳重チェック
全福協近畿支局総会 有償運送登録制に対応
全国福祉タクシー協会近畿支局(関淳一支局長、2府2県106社272台)は5日、ホテルグランヴィア大阪で通常総会を開き①道路運送法改正に伴う福祉等有償運送事業の「登録制」移行を踏まえた「運営協議会」での厳格な条件チェック②「ケア輸送サービス従事者研修」の受講促進――を新たに盛り込んだ2006年度事業報告・予算などを承認した。
関支局長は、道運法改正に伴う「有償運送事業」の80条(例外規程)から79条の「登録制」移行について「特区事業として始めた枚方市では、NPO等の持ち込みセダン車両についてタクシー類以行為のおそれがあり、問題があるとの考え方を示すなど自治体の理解も出ている。運営協議会の場では意見が一致しなければ通らない。地方、タクシー事業者として移動制約者の需要に対応していく姿勢、意思表示が必要で、実績を残さないといけない」と強調した=写真。移動制約者を対象とする共同配置センター構造について関支局長は「安全、安心な形で地域の輸送ニーズに対応していくためにも共同配置センターの運営は青ナンバー車両で統一させたい」との考え方を示した。05年度は滋賀県支部が退会した。
東京交通新聞-2006.06.12
タク・NPO 補完関係の構築重要
全福協総会で自交局長 地域輸送の主役に
福祉タクシー事業者が結集する全国福祉輸送サービス協会(全福協、関淳一会長、加盟約300社)は先月29日、東京・ホテルメトロポリタンエドモンドで第9回評議員会と第11回理事会を開催、10月の道路運送法改正(有償運送登録制導入)への対応、組織体制の確立などを柱とする2006年度事業計画・予算を決めた。新法施行を前に国土交通省の宿利正史自動車交通局長が来賓出席し、「プロのタクシーとNPOボランティアがどう補完関係を構築するかが重要だ。皆さんは専門家として地域福祉輸送の社会的リーダーになっていただきたい」とあいさつで訴えた。
国交省自交局長の出席は初めてで、宿利局長は「制度の円滑で効果的な実施はこれからが本番」と重要局面での出席を説明、「地域の足の確保は、画一的なルールや行政のやり方では成り立たない。制度改正は大きな方向で理解いただいたが、今後、魂を入れていく」とした上で「今回の法の趣旨は排除の論理ではない。プロの公共交通機関の皆さんと、社会貢献したい健全なボランティアが、どう補完関係を構築し社会に役立つかが問われている」と示し、「皆さん専門家は福祉輸送の主役。地域福祉輸送の社会的リーダーになってほしい」と促した。
関会長は、あいさつで共同配車について言及。「われわれは法人のケア輸送のプロとして、まず青ナンバー事業者が責任を持って仕組みを作り上げていくべき」とし、地域の有償運送運営協議会については「ただ反対だけでもいけない。意見交換できる受け皿になっていかないといけない」との見方を示した。
06年度事業計画は、会員拡大と組織強化が柱。会員拡大に関連し、水田誠副会長が「NPOには4条を取得したNPOと10月から登録制になるNPOと2種類ある。われわれが青ナンバーのNPOとつきあっていくのは望む姿」と述べた。
財団法人として基本財産の増額を引き続き推進。06年度募集額は約3300万円で、目標財産1億円を目指す。来年秋をメドに公益法人化10周年、福祉活動30周年の記念行事を都内で催すため、実行委員会(関委員長)の設置も決めた。
事業報告で川村泰利副会長が14項目の国交省への要望見通しを説明、「要望の第一番目の福祉車両の特権用途車(8ナンバー化)は実用性が高く秋までに結論が出よう」と述べた。
東京交通新聞-2006.06.05
内閣府は地方自治体から5月に受けた構造改革特区・地域再生計画の認定申請の結果をこのほどまとめた。NPO等ボランティア福祉有償運送セダン型車特区には、茨城県北茨城市、同ひたちなか市、京都府南丹市、島根県安来市の4地域が申請した。今月中に認定の見込み。同特区は、有償運送を「登録制」として法制化する道路運送法改正(今国会法案成立)に伴い、10月に全国化される。セダン特区申請は、今回分が最後となる。
東京交通新聞-2006.06.05
福祉輸送共同配車センターを設置し、リフト・スロープ付き車両を導入するタクシー事業者やNPO(民間非営利団体)などに対する国土交通省補助金公募が先月31日に締め切られたが、申請はなかった。同省は7月末まで受付を延長することを決めた。タクシー・NPOの"協働"モデルがどれだけ登場するか注目されていたが、自治体との協調補助の仕組みも関係し、現場ではうまくまとまらない実情が浮き彫りになった。
今のところ申請の意向を示している地域は東京都世田谷区や京都市、岐阜県多治見市、大分市など。モデル事業として実施されるため、市区町村が「福祉輸送普及促進モデル協議会」を設置し、運輸局の認定を受ける必要がある。
東京交通新聞-2006.06.05
世田谷区は先月31日、梅丘パークホテルで福祉輸送共同配車センターの説明会を開催、開設を1ケ月延期し8月1日スタートとすることを発表した。延期理由は法的課題の対応などのためで、国土交通省との確認事項も同日明らかにした。
確認事項として①福祉移送支援センター(仮称)は配車、相談、研修の機能を持つ②NPO配車は当該法人車両のみを活用する(NPO法人間の相互利用は行わない)③利用料金は、それぞれの事業者による④運行責任(損害賠償措置等)は各運行実施主体が持つ──とした。
東京交通新聞-2006.06.05
半額ケアタクシー 旭川など導入から半年
『高齢者に好評 登録続々』業界は競争激化警戒
全国初の「半額」タクシーが旭川市とその近郊を走っている。1人では歩けない65歳以上のお年寄り、要介護認定者らを対象に、ケア輸送サービスとして先月17日から始まった。これまでの身障者割引などに比べても大胆な試み。規制緩和の流れの中、競争の激化などを警戒する声もあるが、利用者は歓迎している。
(旭川支局・中村尚徳)
新運賃を導入したのは旭川市永山町9丁目の旭タクシー(西野俊典社長=従業員約60人、37台)。同社には、ひっきりなしにお年寄りが会員登録に訪れる。先月末で約400人が会員証を得て、約千人が登録を待つ。同社は8月中旬までに5千人を見込む。
国交省によると半額タクシーは例がない。身障者や要介護認定者などの割引はあったが、「65歳以上」に対象を広げたのも初めてという。旭タクシーが当初、北海道運輸局に出した申請では「65歳以上なら無条件」に半額とすることを狙った。同社は01年、介護タクシーに乗り出したが、4月の介護保険制度改正に伴い、要介護認定者が減少し利用者が大幅に落ち込む、と予想したからだ。
しかし、過当競争を恐れる道ハイヤー協会は慎重な審査を求めた。「採算が取れるのか」と、国の担当者も疑問を示したという。結局、同社は「65歳以上で移動困難な人」との修正をして、許可にこぎつけた。
「移動困難」を証明する医師の診断書などは必要ない。健康保険証などで「65歳以上」を確認したうえ、来社してもらって体の状況を判断する。
政府は02年2月からタクシーの規制緩和を進める。新規参入や増車がしやすくなった一方で、競争も激しくなった。旭川ハイヤー協会によると、同市はタクシー約1100台がひしめく激戦地で、「規制緩和移行、50~60台増え、1台当たりの売り上げも落ち込んだ」という。
全自交北海道地連の三上正志書記長は、今回の試みについて「需要に応えられるのか。お客さんに迷惑はかからないか」と指摘、「運賃は安ければいいというものではない」と眉をひそめる。
だが、西野社長は「規制緩和を生き残るには努力が必要」と強調。採算性にも「乗る回数が増えるから収支は合う」。その自信を裏付けるように高齢者団体などが後押しする、運輸局に許可を求め千人余の署名提出の音頭を取った、通院支援ボランティアの岩本美津枝さん(71)は歓迎する。
「リハビリ中のお年寄りなど家にこもってしまう人はかなりいる。外出が増えれば健康にもつながるでしょう。ボランティアも助かりますよ」
朝日新聞-2006.06.04
民間非営利団体(NPO)が移動制約者を対象に行う福祉有償運送の登録制度導入などを柱とした道路運送法等の一部を改正する法律案が、12日の参議院本会議で可決、成立した。
福祉有償運送を法的に認めることが狙いだが、登録の必要な「有償運送」とそうでない運送の区別があいまいなため、任意の謝礼程度の金銭授受は有償に含めないこととするよう「有償」の範囲を明確に定める旨の付帯決議がついた。
国土交通省はこれを受けて、有償性の判断基準、運送の対価の範囲(人件費、車両の減価償却費などを含めるかどうか)などを今後省令で定めることとし、10月1日施行を目指している。
要介護高齢者などの移動制約者に対して自家用車を使って有償で運送する行為は、現行の道路運送法第80条1項が定める例外規定として認められている。改正法案はこうした例外的な許可ではなく、一定の拒否要件に該当しない場合は国土交通大臣の登録を受けられるようにするもの。
登録に至るまでのプロセスは現行ルールとほぼ同じで、福祉有償運送の必要性や運賃などを自治体、地方運輸局、公共交通機関の代表者、利用者などで構成する「運営協議会」が地域の交通事情に合わせて判断・合意することが条件となっている。
しかし、衆院における審議では運送協議会の開催そのものが十分進んでいないこと、ガソリン代程度の謝礼を受けて活動するNPOも登録制度の対象となることで活動が阻害されかねないことなどに対する指摘があった。
11日の参院国土交通委員会ではこれらを踏まえ、公明党の西田実仁氏が「NPOによる福祉有償運送のうち登録の必要な団体と、限られた地域における助け合いの団体と分けるべき」と指摘。具体的には、1㌔㍍30~50円のガソリン代程度を受けとる団体は登録不要にすべきだとした。
これに対し北側一雄・国土交通大臣はNPOによる福祉有償運送を二つに分ける考えに賛同し、「従来の指針でも任意の謝礼は有償と解されていない。今回の法改正にあたって、有償かどうかの基準は実態を踏まえつつ明確にする」と答弁した。
付帯決議には「NPOによる福祉有償運送について、好意に対する任意の謝礼にとどまる金銭の授受は有償に含めないこととするなど『自家用有償旅客運送』にかかる有償の考え方及び運送対象者の範囲を示すとともに、運転手の技能水準及び安全性の確保に万全を期すよう措置すること」など5項目が盛り込まれた。
福祉新聞-2006.05.22
障害者や高齢者の移動支援
『米の先進事例紹介』道内の支援団体
乗り場への送迎バスや路面電車低料金でサービスも 車いす用リフト設置
外出する障害者らの移動を支援する動きが、高まっている。道内の支援団体のメンバーらが、車と公共交通機関を結ぶ米国サンフランシスコの先進的な事例を視察。札幌での移動支援セミナーで紹介するとともに、参加者が道内での支援法や課題を話し合った。
高齢者や障害者が、自宅と目的地の間を行き来しやすいように、車やタクシー、公共交通機関を活用するのが移動支援。車いすでも乗降できる福祉車両の導入も支援の1つだ。
サンフランシスコでは、福祉団体などの車やタクシーなどを使い、バスや路面電車など公共交通機関の乗り場に送迎する「パラトランジット」サービスが行われている。
昨年8月、神奈川県総合リハビリテーションセンターの藤井直人室長や、移動支援団体でつくる北海道移送・移動サービス地域ネットワーク連合会(STネット北海道)の竹田保事務局長らが現地を視察。5月中旬、STネット北海道主催のセミナーで、藤井室長が報告した。
米国では障害者差別禁止法が基にあり、低料金で利用できる。バスや路面電車などの車両にも、車いすで乗降できるリフト設置が義務付けられている。移動距離を短くするため、車いすで生活できる公営住宅や、福祉関連施設は、多くが駅の最寄り。町づくりも含め障害者らが社会参加しやすく、藤井室長は「都市計画段階から、部局をまたいで役所が取り組んだ様子がうかがえる」とした。
バス、路面電車などを運行している市交通局が、参加を希望する福祉団体やタクシー会社などを取りまとめている。事業費は年間約2千万㌦(約22億円)。そのほとんどは連邦政府や地元のカリフォルニア州、サンフランシスコ市などが支出する公費でまかなわれている。
藤井室長は「米国内でも、公共交通路線や便数が少ない他の都市では、このサービスを展開するのは、財政的に厳しい。輸送の担い手としてのボランティア組織などが求められている。状況としては日本とそう変わらない」と説明した。
道内への導入は? 冬期間の雪課題に
道内で行う移動支援について、サンフランシスコ方式は参考になるのだろうか。
現地を訪れたSTネット北海道の竹田保事務局長は「地下鉄やバス路線が張り巡らされ、サンフランシスコと似た環境の札幌では、同じ事業を展開できる可能性がある」とする一方、「冬期間の雪が課題」と指摘する。
「冬は送迎する側がどこで待機し、利用者にどこで待ってもらうか。雪があると駐車スペースの確保も大変だ。タクシー会社を交えた各団体の取りまとめには、行政の協力が欠かせない」と強調する。
「サンフランシスコと同様に、通勤や通学にも使えるように」と訴えたのは、北広島市福祉課の向島久博主査。現状の制度では、外出支援の目的に通勤・通学は含まれていない。障害のある子どもの学校への送迎は、父母が行うことが多いという。
向島主査は「障害者自立支援法に基づく10月以降の制度では、市町村ごとに柔軟な対応が可能になるので、通勤・通学目的の利用に道が開けるのではないか」と期待している。
北海道新聞-2006.05.22