移動支援・STS情報(2006年7月~8月)

ビジョンの深層  記者座談会㊦
利用者視点まだ欠落  タク・NPO、共生なるか

【有償運送】

A.「総合生活移動産業」の前提の地域機密着は地方のタクシーの合言葉になってきた。そこで避けられないのが、道路運送法に登録制として取り込まれたNPOボランティアの有償運送とどう付き合っていくかだ。

B.タクシーとNPOがうまくいっている地域はあるのかな。

C.有償運送問題ではタク業界は後手に回った被害者意識を持っているから、防戦に必死だ。うまくいっている地域は少ないのではないか。

B.NPOは自治体とつながり横割りだが、タクシーは国とつながり縦割りだ。福祉・介護の問題は、地方分権とセットですべて横割りの同じ土俵で論議しないと不公平感はなくならないよ。

E.東京の流しタクシーは別にして、福祉タクシーはじめ地域密着の交通は自治体の管轄でいいというタク事業者も出始めているね。

B.ただ国交省は(地域密着)という言葉は使っても、「地方分権」という言葉はまだ使っていないからね(笑)。

D.タク業界はタクシーと同じようにNPOに義務化を求めているが、逆に自由な事業を行うため、同等の規制緩和を求めるやり方もあると思う。

C.新制度の趣旨は、移動困難者をなくすことだ。グレーゾーンを登録制で規制したため輸送し難くなったのでは、もともこもない。80条例外規定を79条登録制にした是非は、NPOの中でも賛否あるようだ。グレーゾーンをいっそフリーゾーンにしたらといった声もあるね。

E.どちらにしても、さいは投げられたのだから、バス、タクシー、NPOボランティアと、地域交通の多様な担い手たちが目の前の移動困難者をどうするか、知恵を出し合って高齢社会に通用するシステムを築いてほしいね。

【戦後60年の総決算】

A.戦後60年経ったが、今後、タクシーはどう変わっていくのだろう。

B.タクシーは利用者の評判が直接事業者に影響しない珍しい産業だ。乗務員を通じ収益を得ることに経営の重心を置いているから、増車志向と賃金抑制に終始し、新しいサービスがなかなか出てこない。

E.免許制にあぐらをかいていると言われる時代の古典的なタクシー会社がまだ結構いるね。そこには利用者の視点が不在だ。

D.介護タクシーはヒット商品となったが、最近は観光はじめ、各種の便利屋タクシー、はたまたラーメンタクシーまで登場し、何とか従来パターンのタクシー抜け出そうという努力は買うな。

【社会貢献型が旬】

E.これからのタクシーは社会性が問われると思う。子育てタクシー、こども110番タクシーなど社会貢献型が旬なビジネスだ。

A.子育てタクシーはNPOと連携し全国協会まで組織されたからね。

C.地方の二世でしかも女性経営者がこの協会を盛り立てている。NPOとも自然に付き合っている点が今の有償運送問題とは違うね。

【利用者視点のランク制】

B.タクシーセンターのランク制や個人タクシーのマスターズ制度は、利用者の視点を取り入れた仕掛けの一つと思う。

D.Aランク以上しか羽田の乗り場に入構できない話が出た時、事業者の反対でつぶれた。再び、タクセンのあり方問題で再浮上しているが、都内主要乗り場はAランク以上しか入構不可といった方法は有効だ。

C.規制緩和5年目。タク業界は本当のサービス競争をしたのだろうか。ワンコインなど、直ぐに運賃競争に入ったが、それ以前に顧客満足度を評価するサービス競争がまだ本当に行われていないのではないか。

B.マイカーに代わる乗り物としてマイカーのようにタクシーを使ってもらう「マイタクシー」や、自社の専用乗り場の設置などサービス開拓の努力はしていると思うよ。

【問題は大勢の6割の意識】

E.だが、昔ながらの流し一辺倒で何も変わらない人が、元に針を戻してくれ、と言っても通らないだろう。

D.「2・6・2」の原則というのがあって、勝ち組、負け組みの2割以外の大勢の6割がどう問題意識を持つかだな。

A.1970年からタクシー輪送人員は右肩下がり。タクシーが今後も公共交通機関でいたいなら、マイカー、鉄道、レンタカーなど他モードとの対抗軸を明確にして全員一丸で取り組む仕組みを考えないとね。

【世代交代】

C.ドラステイックな改革には、業界トップの世代交代は必要と思う。

D.新倉体制で四半世紀。長すぎるという声はあるが、会長交代論が大きな波とならないのも不思議だ。

E.変化を嫌う業界だね。

B.船団の沈没とならなきゃいいがね。

A.あと6年でタクシー生誕100年。明かり未来への変化を期待して終わろう。

(終わり)

東京交通新聞-2006.08.28

共同配車C
新規登録希望が1か月で77件に

8月1日スタートした世田谷区福祉移動支援センター(タクシーとNPOの共同配車)の利用状況は、区民よる約1カ月の電話受付162件のうち新規登録希望が半数近くの77件を占めることが分かった。世田谷区が23日の福祉運営協で明らかにした。
電話受付開始の7月15日から8月19日まで162件を受け付け、新規登録希望が77件あり、申請登録したのが40件強、相談のみが37件だった。配車件数は8月1日~19日に34件。現在8月~9月の予約が103件入っている。
同共同配車センターは区の補助で来年3月末まで試行。NPOから、たつなみ会、サポート出会いの2団体、タクシーから限定事業者のせたがや介護タクシー、さくら介護タクシー、ルビータクシー、赤堤介護タクシー、ハピネス介護タクしー、らくらく介護タクシー、介護タクシーみんなの足の7社、介護保険対応事業者からユースウエア、ケアパートナー、つくば観光交通、ひつじ介護サービス、ハートケア、福祉計画・玉川の6社――が参加。つくば観光交通が運営主体となっている。

東京交通新聞-2006.08.28

対面点呼実施で論議
世田谷区福祉運営協80条許可は12団体に

東京都世田谷区は23日、区役所ブライトホールで福祉有償運送運営協議会(会長=金澤弘道保健福祉部障害者地域生活課長)を開催、NPO4団体①ヒューマンハーバー世田谷(福祉1台・セダン3台、登録会員30人)②笑顔せたがや(福祉2台、同8人)③エンジェルグループ(福祉1台、同6人)④やっとこ(福祉1台、同26人)――の道路運送法80条許可申請の協議が調った。同区の80条許可は12団体となる。
審議では、山下晴樹全自交東京地連書記次長が①運行管理での対面点呼の実施②実車キロ換算でタクシー1キロ340円の2分の1に当たる同170円を有償運送の上限設定――を提起。対面点呼については「タクシーと同じ感覚で対面点呼というと地域の取り組みが制限を受ける。個人タクシーにも課されていない対面点呼の強制は、安心・安全確保の域を超え参入規制に近づく」(鬼塚正徳全国移動ネット理事)とNPO側が反発。これに対し、中村昭俊東京運輸支局運輸企画専門官は「100%対面点呼を求めているわけではない。緊急時や通常の時間外など困難な場合もあろう。原則としてお願いしたい」と説明。当面、原則対面点呼として例外的電話点呼なども認めながら現行ガイドラインの範囲内で対応することにした。
運賃問題は「現行2分の1判断は妥当性がない。営利に至らない範囲はタクシー運賃の50~70%が着地点かと思うが、国土交通省の方針が出ていない今、考えても仕方ない」(秋山哲男首都大学東京大学院教授)、「(実車キロ換算による比較まで踏み込むことに)そこまでやる必要があるのか」(金澤会長)などの意見があったが、今後、10月以降の新制度を踏まえながら継続審議する。
有償運送の必要性について同区は「移動困難者2万8000人、高齢化率3.4%に対し、リフトタクシー登録者818人、福祉タクシー券交付7413人、有償運送団体の会員1100人と、ニーズに十分対応できていない」と報告した。

東京交通新聞-2006.08.28

改正運法10月1日施行確定

市町村やNPO(民間非営利団体)などの自家用車有償運送を「登録制」により法制化し、コミュニティバス・乗合タクシーの運賃設定を一部届け出制に緩和する改正道路運送法(有償運送・コミュバス関係改正部分)の政令が15日閣議決定、18日公布され、法の施行日が10月1日に確定した。「運輸安全マネジメント」を規定した道運法改正部分の10月1日スタートが先行して決まっており、「事業者に混乱を招かないよう両法一体の施行が望ましい」(自動車交通局)とされた。
今回の政令制定では、バス事業の一部許可権限が国土交通大臣から地方運輸局長に委譲された。具体的に地方路線と「不定路線」(デマンド型など定期定路線以外の乗合運送)の事業許可や上限運賃設定・変更のほか、一般乗合バスでは自治体や住民、事業者などで組織する「地域公共交通会議」で合意した運賃の届け出受理などが運輸局に委任される。

東京交通新聞-2006.08.28

有償運送に処分・監査
告示・通達概要案を公表

10月1日施行の一部改正道路運送法のうち、自家用車有償運送とコミュニティバス関係部分の国土交通大臣告示・通達の概要案が18日公表、有償運送に行政処分・監査制度を創設する規定が盛り込まれた。処分の種類を「業務停止」「登録取り消し」「警告」とするなど事業用自動車の仕組みを準用した。重大事故を起こした運転者には運輸規則に定める適正診断の受診を義務付ける。概要案には来月7日までパブリックコメント(一般意見)が募集され、同月中に道運法80条通達など現行ガイドラインを廃止、新たに設定される。
監査では、悪質違反に対する「特別監査」と事故・苦情・違反が多い場合に実施する「呼び出し監査」を設ける。特監は無通告が基本。運転者への原則対面点呼の実施も規定の予定。運送の対価の基準を「実費の範囲内でタクシー上限運賃などを勘案した目安を定める」、旅客の範囲を「知的障害者など他人の介助なしにタクシーの利用が困難なもの」などと明確にする。
福祉有償運送に使用する車種は①寝台(ストレッチャー)②車椅子③兼用車(寝台・車椅子)④回転シート型⑤一般セダン型──とし、セダン特区を全国化。市町村運営や過疎地にはマイクロバスも容認する。大臣認定運転者講習の内容として、障害の知識や接遇・介護、福祉車の取り扱いなどに関し一定時間の講義・演習を求める。
国交省では新通達を補完する「Q&A」(問答集)を今回作成せず、改正法成立時の国会付帯決議にうたわれた「謝礼」の明確化は別途規定する方針だ。

東京交通新聞-2006.08.28

高齢者・障害者の移動を支援
国交省審議会  自動車サービス見直し

国土交通省の交通政策審議会で、タクシーなど自動車による公共交通サービスの在り方について見直しが進められており、高齢者や障害者など"移動制約者の足"として、サービスを充実するよう求める報告書が相次いで取りまとめられた。

タクシーを「総合生活産業」に

同審議会の陸上交通分科会自動車交通部会に設置された「タクシーサービスの将来ビジョン小委員会」(委員長=山内弘隆・一橋大商学部長)がこのほどまとめた報告書では、今後のタクシー事業の在り方として、高齢者や障害者の移動手段としてのサービスを充実するなど、公共性の高い「総合生活移動産業」への転換を提案した。
報告書では、ドア・ツー・ドアの個別輸送が提供できるタクシーの特長を生かし、障害者などを輸送する福祉タクシーや、ホームヘルパー資格をもつ乗務員が高齢者などの外出を支援する介護タクシーなど多様なサービスが展開されるようになってきたことを評価。「7割以上の人が老人用・介護用タクシーの導入を求めている」などとするアンケート結果を紹介し、鉄道やバスとともに総合的な公共交通機関として、その役割・機能をさらに高める必要があるとした。
タクシーサービスの将来像としては、公共性の高い「総合生活移動産業」へ転換するよう提案。①少人数の利用者に対して快適な時間と空間を提供する専属コンシェルジェ(案内人)的役割を果たす②高齢者・障害者など移動制約者の足としての役割を果たす③福祉タクシーや育児支援輸送、便利屋サービスなど地域密着型生活支援サービスを展開する④「子ども110番」や深夜のエスコートサービスなど地域社会の安全・安心に貢献する⑤地域観光の担い手となる――ことを求めた。
また、こうしたサービスを展開するため、国・産業界・事業者に対し、輸送の安全性の向上や運転手の質の確保・向上、問題のある事業者が市場に温存されない仕組みや利用者が事業者・運転者を選択できる仕組みの構築、顧客ニーズ順応型サービスの展開、渋滞、環境問題への対応などが必要とした。
報告書を受け国交省は、タクシーサービスを総合生活移動産業へ転換させるために必要な制度見直しなどを進める。

福祉新聞-2006.08.21

市川で共同配車検討
福祉運営協  のべ7団体100台を了承

市川市は22日、福祉有償運送運営協議会を開き、社会福祉法人生活クラブと同市川市社会福祉協議会の道運法80条許可申請の内容を了承した。これにより予定の計7団体約100台の申請案件の審議がすべて終了した。タクシーとNPOの共同配車について、長期的に検討することにした。利用会員名簿の取り扱いも議論された。
申請案件の審議後、共同配車の検討に議論が集中。タクシー側委員から「移動困難者に利便性の高い共同配車センターを作ってほしい」と提案があり、「利用者の立場からは、電話一本で相談・配車できる"ワンストップサービス"が期待されている」「NPOは会員制という側面もあるが、利用者本位で考えると共同配車は有効な制度」といった意見が出された。配車の順番や包括支援センターの相談窓口の活用などの方法も議論された。
利用者名簿の取り扱いでは、NPOの委員から「利用者からフルネームや細かな住所まで行政に提出する必要があるのかという意見が出ている」と報告。事務局は「情報は絞る方向で検討したい」との考えを示した。タク側委員は「確認作業のための情報開示はなされるのか」と発言。事務局は「生のデータの開示は難しい」とし、ケースバイケースで対応する方向となった。

東京交通新聞-2006.08.14

福祉タクに駐禁除外標章を交付
山口県警「公共性高いと判断」

6月からの新駐車対策で福祉・介護タクシーのサービスに困難が生じている問題で、山口県警察本部では福祉タクシーに駐車禁止除外標章を交付、6月から現在までに16件の交付実績があることが分かった。福祉タクシー業界では全国的に標章交付の要望が強く、今後の実現への励みになりそうだ。
同県警では福祉タクシーに対する除外標章を1991年から交付している。交通規制課によると、福祉タクシー事業者からの相談がきっかけで「不特定多数の顧客を輸送し、体が不自由な人の移動にも寄与し、公共性があると判断し運用に踏み切った」と説明する。
申請があれば交付する仕組みで、車いす用リフトやストレッチャーなどの積載装置を装備し、運輸支局が福祉車両として取り扱っている車両が対象。標章有効期限は1年。新制度後、制度に対応し申請が相次いだ。NPOボランティアの有償運送も相談があれば検討するとしている。

道交法改正に伴う駐車違反の取り締まり強化について、医療アクセス権プロジェクト(逢澤評子代表)は警察庁交通局交通企画課と同交通規制課に対し、通院介護サービス中の駐車違反取り締まりを軽減させる旨の要望書をこのほど提出した。柱は①「駐車禁止除外車標章」を、現行の「車両」対象ではなく「利用者本人(障害者)」対象に交付してほしい②通院介護サービス中はその旨を掲示する指導を徹底、通院介護サービス中は20分以内の停車時間を認めてほしい──。
逢澤代表は「警察庁にはこれからも現場で上がってきた情報を提供していきたい」としている。

東京交通新聞-2006.08.14

福祉タクも容赦なく新駐車取り締まり制度2カ月
駐車除外指定要望へ

6月1日から民間駐車監視員制度などの新駐車取り締まり制度がスタートしてはや2カ月。警視庁の調べによると繁華街の放置車両は減少し、交通渋滞は解消、タクシー営業にもプラス効果が表れている。その一方で、福祉タクシーや介護タクシーの現場では「車両離れは、介護の業態上、絶対に不可欠だ。今のままではサービスが十分できない」との悲痛な実態が明らかになり、福祉タクシー業界やNPOボランティア団体は駐車禁止除外指定の要請に動き出した。一般タクシーでもトイレや食事中に摘発を受ける車が出ており、各自で自衛策を取るのが精一杯だ。新制度の問題点を探った。

全乗連と全福協は今月、福祉・介護タクシーのケア輸送サービスが新しい駐車取り締まり制度で受ける影響について全国の福祉・介護事業者に調査した。数多くの意見の中からは実態と課題が浮き彫りになった。
問題点は大きく分けると4つに絞られる。

①利用者が一人で利用する場合、ほとんどの人はひとりで歩けず、運転者の介助が必要だ。「ベッドツーベッド」の介助には事実上数分から30分の駐車が必要になる。その間は「法上の放置駐車になってしまう」。

②利用者の特徴から、離れた駐車場を利用するのは困難。たとえ駐車禁止場所でも自宅や病院前の駐車が避けられない。

③駐車禁止除外規定や駐車許可証の交付は警察サイドの対応が地域によってまちまちで混乱。訪問介護事業者に除外規定がある場合、除外されない福祉タクシーとの不公平感がある。

④たとえ福祉タクシーが除外でも、回転シート使用のセダン型タクシーは対象にならない。結果、「冷や冷やしながら介助」「満足な介助ができない」「駐車場がないから利用を断ることも」といった利用者サービスの質低下が心配される。

こうした実態から、介護・福祉事業者の要望は「介護福祉タクシーに駐車除外指定標章を交付する」ことに集中した。一般タクシー、セダン型福祉タクシーの例も踏まえ、「介助中は規制対象外」という考え方も出ている。

付き添い説明プレート

新駐車対策に驚かされる福祉タクシー。「せめて自衛策として」と都内の宮園自動車・福祉練馬営業所が6月1日から始めたのがこのプレート=写真。民間救急車用とリフト付タクシー用があり、車を離れて利用者の自宅まで付き添っていることが営業所の電話番号とともに記してある。さらにリフトを出したままにし、介助中をアピール、常務員、利用者の不安や負担を少しでも減らしたいと考えた。
プレートにはもう1つの意味がある。「警察官や監視員、地元の人たちに、介助を伴う輸送サービスを必要とする人が身近に大勢いる事実を理解していただけたら。今の制度は"人"が置き去り。交通弱者が追い詰められる交通対策はどこかおかしい」と現場を担当する鈴木邦友さん。
「違反標章を張られるから」と、車いすの利用者を一人で帰したり、受け付けの電話で不都合を伝えるのが、現場の常務員や担当者にとって一番辛いという。

一般タク貸切バス「親切な応対」あだに

「うちの乗務員が豊島区の要町でお年寄りを乗せて池袋駅西口まで送ったところ、キップの買い方が分からないと言われ改札口まで付き添ってキップを買ってあげて戻ってきたら、確認標章を張られていた」――。東京ラッキー自動車(板橋区)の川添雅司会長は「利用者に親切な対応をした結果のやむを得ない事情。それでも放置駐車違反とするというのか」と画一的な対応に疑問を投げる。同社はこの件について所轄の池袋署に問い合わせ中だ。
都内でハイ・タクや貸切バス事業を営む大同交通(大田区)。同社の貸切バスが外国人旅行者を成田空港まで送迎、「荷物が多いのでカートが欲しいと言われ、空港内の施設に取りに行っている間に確認標章を張られた。その間、ほんの数分だった」(小林康夫社長)。
放置駐車の民間監視員による確認事務委託制度がスタートして2ヵ月。ハイ・タク業界では福祉・介護タクシーの乗降介助中の取り扱いをめぐって適用除外を求める声が強まっているが、実際には一般タクシーでも接客上で車両を離れ、放置駐車違反に問われるケースが発生している。

各団体の要望内容

【全常連・全福協】
近く警視庁に要望。福祉・介護タクシーへの「駐車禁止除外標章」の交付を都道府県警が行うよう通達等による指示を求める。地域ごとに対応に違いがある現状に対し全国一律の交付を求める。

【東旅協など】
警視庁などに福祉タクシーの駐車禁止除外標章交付、公衆トイレ前のタクシー短時間駐車、「送迎」表示による取り締まり緩和などを求める。東京タクシーセンターに専用食堂の増設、緊急トイレ(避難)場所の確保、トイレ・駐車場付食堂のマップ化を求める。

【千葉県市川市運営協】
千葉県市川市は市と福祉タクシー事業者、NPOボランティア団体が合同で適用除外を求め要望活動をしている珍しいケース。市川市福祉有償運送運営協議会が千葉県警と地元市川・行徳警察に同会長と市町連盟で要望書を提出、タクシーとNPOの利用者を対象に署名活動を展開中だ。タク会社の武藤自動車とヒノデが参加している。同市は「介護・福祉タクシーや有償運送の表示があれば、ハザードランプの点滅での駐車を認める」というシンプルな対応を求めている。除外標章の交付ではなく、監視員が福祉輸送を識別するシステムは煩雑さがなく輸送業態を踏まえた利用者本位の方法だ。県警サイドからの前向きな回答はまだない。「福祉輸送に関する認知の薄さを感じる。そこを理解してもらうことから始めている」と同市地域福祉支援課。

【サポートキャブ】
救急車の代わりをタクシーや民間患者輸送車が務める東京救急協会の「サポートキャブシステム」。同協会にも登録会社から心配の声が寄せられており、「問題があれば東京消防庁とともに警視庁に相談に行く準備がある」。

【東京交通労協】
東京都に対する政策・制度要求の中で、①お年寄りや身障者などの乗降介助のため、やむを得ず車を離れる場合は取り締まりから除外②トイレ・食事・休憩などの駐車スペースを確保、公園周辺、東京都の遊休地、都営駐車場などの短時間利用の給与――の2点を要望する。

【東京ハイタク労働6団体】
関東運輸局交渉で、トイレ休憩の3分間で標章を張られたケースなど、トイレ、弁当買いに「トイレ前に休憩スペースを置く等の措置がほしい」と申し入れた。

【自交総連東京】
東京タクセンターにタク専用駐車スペースの確保と公衆トイレ前の専用駐車スペースの設置、休憩所増設を求める請願書を現在、約2000人分提出している。

東京交通新聞-2006.07.31

福祉共同配車C設立補助金
国交省  公募受け付け再延長へ 世田谷、京都市など検討

タクシーとNPO(民間非営利団体)移送ボランティアの"協働"モデルとして注目されている「福祉輸送共同配車センター」に対する国土交通省の設立補助金公募受け付けが今月末に追っているが、先週末までに申請は出ていない。東京都世田谷区や岐阜県多治見市、京都市、兵庫県伊丹市などが検討中だが、自治体との協調補助の仕組みが関係し、現場ではスムーズにまとまらない実情が表れている。このため同省は、受付を5月末から7月末に先延ばししたのに続き再延長する方向で、自治体が補正予算を組む秋ごろまで公募を継続する考えも出ている。
福祉共同配車センターを立ち上げ、リフト・スロープ付き車両を導入するタクシー事業者やNPOなどに助成する国庫補助制度は今年度始めて予算化された。当初、5月末が申請の締め切りだったが、ゼロだったため、今月31日まで延長している。
申請がままならない背景として、モデル事業として実施される制度のため、手続きに主体となる市区町村の「福祉輸送普及促進モデル協議会」の発足を要することや、自治体側の予算編成のタイミングとずれが生じた状況がある。公募延長の判断をめぐっては、7月末で締め切りつつ、名乗りを上げた自治体の手続きが整うまで受付を猶予する措置も念頭に検討されている。
補助制度の予算総枠は1億2400万円、補助率はセンター設立に国・自治体3分の1ずつ。タクシー同士による配車システムや機器の代替も対象。タクシー業界内の連携にも率先した取り組みが期待され、国交省は来年予算要求で継続したい考えだ。ただ、申請実積がない見込みの中で財務当局と折衝と格好となるため、前向きな制度利用を呼びかけている。 伊丹市には地元のタクシー会社、フクユ(松下仁伺社長=全国福祉輸送サービス協会近畿支局兵庫支部長)が働きかけている。市では「どれだけ負担がかかり、市民サービスに貢献できるかこれから検討する。 メリットは大きいと思う。少ない費用で済むならいまの予算を流用できるが、補正予算を組むか来年度とするかは未定。新規事業なので議会へ説明が必要だ」(障害福祉課)としている。
地元にはフクユのぼか、鉄道系大手の阪急タクシーの営業所、ボランティア運送許可団体が4団体ある。
国交省の共同配車センター補助を京都市に働きかける兼元秀和・全福協副会長(キャビック社長=京都)は「福祉輸送は経費負担がかかるので、財源調達の一環としても国の補助制度を活用できないか検討、京都市と調整している」と前向きな姿勢をみせている。

全国の福祉有償運送運営協議会の設置状況(全国移動ネット調べ、5月現在)

【ほぼ全域で設置済み=12都府県、117協議会、了承団体871】
青森、栃木、群馬、埼玉、東京、神奈川、三重、大阪、兵庫、岡山、宮崎、鹿児島

【80乗許可希望希望のNPOがいる地域は設置済み=14道府県、251協議会、了承団体422】
北海道、秋田、宮城、茨城、山梨、長野、岐阜、福井、京都、奈良、広島、鳥取、島根、熊本

【約半数程度で設置=4県、95協議会、了承団体238】
岩手、千葉、静岡、愛知

【設置はあまり進んでいない=14県45協議会、了承団体112】
山形、福島、新潟、富山、石川、滋賀、和歌山、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、大分、沖縄

【未設置=3県】
山口、香川、徳島

★全国計=44都道府県、508協議会、了承団体1643

東京交通新聞-2006.07.24

福祉有償  全国で508運営協設置
移送団体の撤退に懸念

全国の福祉有償運送運営協議会の設置数44都道府県に508協議会設置されたが、四国など未設置の地域のあることが全国移動ネット(杉本依子理事長)の調査で分かった=表参照。NPOボランティアの道路運送法80条許可取得の猶予期限が9月末に追り、国土交通省は自治体に運営協設置と移送団体に許可取得の促進を呼びかけているが、自治体の運営協設置の働きが鈍いため、許可が取得できず撤退する団体が出始めている。
各地の移動サービス団体を通じた都道府県別の調査によると、北海道は180市町村のうち150市町村で設置。岩手では65%が設置済み。千葉は56市町村中30市町村、静岡は42市町村中20市町、愛知は64市町村中41市町村で設置済み。
山形は庄内、山形、北村山、置賜の各地球が設置済み。新潟は新潟、上越、魚沼、南魚沼、五泉の各市で設置、柏崎、長岡、糸魚川の各市で準備会が立ち上がっている。富山は設置済みは2市。高知は35市町村中高知、室戸の両市のみ設置済み。安芸市は自治体が直営し運営協の設置と審議を必要としない"金沢方式"。福岡は約40%で設置。長崎は五島市で設置後、長崎、佐世保、諫早の各市が準備中。大分は日田市と大野郡で設置。沖縄は、ぎのわん市で設置。山口、香川、徳島の3県は県下に1カ所も運営協が設置されていない。
全国移動ネットの杉本理事長は18日に開催された地域生活交通セミナーの講演で調査結果を明らかにし、「運営協の設置数は1年前の倍にはなったが、2000以上の自治体のまだわずかな設置数。中には相談に行ったところ、4条許可取得の指導をした自治体もあり、移動サービスをやめてしまう団体が出始めている」と懸念を示した。

東京交通新聞-2006.07.24

福祉タク  駐禁除外特区を提案
青年会議所移動困難者負担減らす

全国の若手経営者で組織する日本青年会議所(JC)は、乗降介助を伴う福祉・介護タクシー車両を駐停車禁止から除外する構造改革特区構想を考案、内閣官房にこのほど提出した。警察が一定時間の規制除外許可書を出し、視覚で分かるよう車体マークの作成を求めている。6月1日スタートした民間駐車監視員制度に対し、各地で福祉車を外すべきとの声が強まる中、特区制度の活用が飛び出した格好。採否は9月ごろ決まる見込みだ。
「福祉・介護タクシー駐停車禁止除外特区」の申請主体はJC関東地区東京ブロック協議会(望月武治会長)。移動困難者(障害者・高齢者・要介護者)の乗降・院内・自宅内介助のため、車両を駐禁場所に一定時間停車できるようにする。提案理由として▽駅前や住宅地など立地条件によっては駐車スペースが確保されていない▽離れた駐車場から病院まで、荒れた路面を車いす・ストレッチャーで長時間移動するのは利用者に身体的負担がかかる──などを挙げた。同特区の審査では内閣官房が今後、所管する警察庁との折衛に入る。
今回の構想はJC会員の信山重広つくば観光交通取締役が働きかけた。同氏は「ハードルは高いが、移動困難者の負担を減らしたい」と実現に期待している。JC東京では「連携支援委員会」で特区申請の案件を練った。公職選挙期間中の公開討論会開催特区なども同時に提案。「認定は難関だが、内閣官房と連携し省庁折衛に臨む」と意気込む。

東京交通新聞-2006.07.17

謝礼有償運送を再申請
特区提案受け付け  過疎地タク台数緩和も

内閣官房は、自治体や民間企業などから6月中に受け付けた構造改革特区制度への提案をこのほどまとめた。タクシー関係では、福祉タクシー駐停車禁止除外特区(別掲)のほか、群馬県内の移送団体が共同で無償輸送の"範囲"の拡大(「謝礼」有償運送の明確化)を、経済産業省所管の日本ニュービジネス協議会連合会などが過疎地のタクシー最低車両数緩和をそれぞれ再申請した。
無償輸送の範囲拡大は、有償の線引きとしてガソリン代など実費を含む1時間当たり利用者負担額が最低貸金以下の謝礼(スタイペンド)にとどまる場合、道路運送法許可(改正法では登録)を除外できる考え方。同提案はこれまで採用不可とされてきたが、先の改正道運法国会付帯決議で謝礼運送の明確化が盛り込まれ、国土交通省は現在、省令・通達策定に当たり取り扱いを検討している。
過疎地タクシー車両数の緩和では営業所の設置要件を「1台以上」とする。現行は原則5台以上(離島1台、内陸過疎地2台)。長野県の会員が要望している。
特区提案募集は9回目。地域再生計画を含め364件あり、民間からの件数が自治体分を初めて上回った。採否の決定は9月ごろの見通し。

東京交通新聞-2006.07.17

福祉有償見直し  意見提出を確認

全国乗用自動車連合会(新倉尚文会長)は12日の正副会長会議で、先月30日に国土交通省が公表した福祉有償運送制度見直しに関する改正道運法施行規則と、運行記録計義務付け地域の拡大を図る運輸規則改正案について、意見を交わすとともに、パブリックコメント手続きに基づき意見を提出する方針を確認した。
正副会長会議では、福祉有償運送の施行規則改正に対し、「運営協議会での『合意』の定義と、旅客から収受する『運送の対価』の基準に関しては、明確にさせておく必要がある」などの意見が出された。
福祉有償運送の省令改正に対しては、全国福祉輸送サービス協会(関淳一会長)も意見を提出する方針。

東京交通新聞-2006.07.17

自治体に「運営協」義務化
NPO2団体  国交省に要望

10月からの福祉有償運送制度の細目を規定する政省令・通達の策定に対し、移動サービス市民活動全国ネットワーク(全国移動ネット、杉本依子理事長)と市民福祉団体全国協議会(市民協、米山孝平代表理事)は国土交通省にこのほど、16項目の要望書を提出した。①移動制約者の移動の自由を保障する法改正とする②身体的、精神的、心理的、経済的、社会的な様々な理由で生じる移動制約者すべてを対象とする③運営協議会設置を自治体で義務化する④運行団体の基準は非営利で行う意義に配慮したものとする⑤制度に柔軟性を持たせ移動の権利が保障されるよう配慮する──が柱。
具体的には、財源確保や基礎データ収集の仕組み作りを国や自治体に求めているほか、利用対象者に児童送迎や経済的理由の有償運送も認めるよう要望。自治体の責任で開催する運営協を政省令・通達で位置付けるべきとし、運営協の決定に異議を唱えることができる不服審査機関の設置を提案している。
運行団体の基準では、介護福祉士、ヘルパー2級、ケア輸送士の資格義務化などは過大な基準強化として反対を表明。運送の対価は料金体系が多様な実態を踏まえ、全国一律の基準を設けるべきではないとしている。

東京交通新聞-2006.07.10

「福祉車は適用除外に」
民間委託駐車取り締まり  各地で要望強まる

1日から全国で一斉スタートした違法駐車取り締まり民間委託制度で、乗降介助を伴う福祉・介護タクシーを除外してほしいとの要望が各地で強まっている。東京や大阪では福祉車両が放置駐車違反とされたケースも出たようだ。警察庁の井澤和生・交通局交通企画課長補佐は6日の交通政策審議会タクシー将来ビジョン小委員会で「介護タクシーだけの問題でなく、駐車需要がどれだけあるか、住民の希望はどうかなど全体をみて検討していきたい」と述べ、新たな適用除外車両を探る意向を示唆した。
同小委で関淳一・全国福祉輸送サービス協会会長は、地元大阪で障害者の移送の最中に数件、民間監視員による取り締まりにあった状況を説明、「府警は現場で調整するとしているが、実際の現場では車両を一緒に取り扱っている。全国的にトラブルが起きているのではないか。受付からベッドまでの付き添いには30分はかかる。福祉車は駐車場に止められない場合もあり、きちんと対応してほしい」と訴えた。
警察庁から出向している松尾庄一・国土交通省自動車交通局次長は「福祉タクシーや物流輸送に支障があれば、国交省や運輸局レベルで警察当局と協議し、改善していく形で進めていきたい」との姿勢を示した。

福祉新聞-2006.07.03

新駐車規制  福祉タク除外の声高まる
訪問介護の駐車許可2.6倍

放置駐車取り締まりの民間委託など新しい駐車対策が実施されて1ヵ月、福祉タクシーなど福祉目的の輸送に対する規制の適用除外を求める声が高まっている。全乗連と全福協は警察庁に実態説明するとともに、制度後の取り締まり実態調査に乗り出す。一部自治体で訪問介護事業者の車両を駐車許可対象としたところもある。警察庁は先月28日、駐禁規制からの除外対象車両の取り扱いについて「業務実態や地方の実情が様々なので、関係業界団体等から要望があれば、必要性などを事情聴取した上で判断する」との見解を明らかにしている。
警察庁のまとめでは、先月1日から15日間の全国の放置車両確認標章取付件数は8万681件で、このうち駐車監視員によるものは27.8%の2万2405件だった。一方、業務内容や社会生活上やむを得ず禁止場所に駐車する場合に警察署に駐車許可を受けられる許可件数は2万9753件と、昨年1年間の許可件数の約3倍に達した。このうち介護タクシーなど訪問介護事業者等の許可件数が2万0803件を占め、1日当たり約1387件、昨年の2.6倍となった。
警察庁が明らかにしたところによると、公安委員会が標章を交付する駐車禁止規制除外対象は①身障者等の歩行困難者が使用②ライフラインの緊急修復工事③消防・救急車④災害救助用車両──など。警察署長が許可する駐車対象は①介護保険法に基づく訪問介護事業のため使用②健康保険法に基づく訪問看護事業のため使用③5分以内に貨物の積卸しができない引っ越しなど④冠婚葬祭や応急修理──などとし、基本的には現行で対応できるとの見方だ。
だが、福祉(介護)タクシー、デイサービスの送迎車両、緊急の検体検査の使用車両等について除外対象の問い合わせがあったとし、必要性についての事情を聴取した上で判断するとしている。
福祉タクシーについて警察庁は制度導入前、「一部公安委員会で除外指定対象とする例もあり、対応はこれまで通り」としていた。これに対し、全乗連と全福協は先月20日、宮園自動車など福祉タク事業者と警察庁交通局交通規制課を訪れ、実態を説明。「公共輸送機関であり、障害者や要介護者を安全に輸送する使命がある」と訴え、統一的に除外対象とするよう求めた。
訪問介護事業者等については、厚生労働省労健局振興課が各都道府県に重大な支障やトラブルについて先月末までに報告を求めているが、「現在、報告をはない」(同課)という。
物流関係車両では、警察庁は取り締まりガイドラインに関係事業者からの要望を反映、取り締まりの重点時間帯を設定したり、標章取り付け作業中に運転者が現れた場合は警告にとどめるなど運用している。

東京交通新聞-2006.07.03