移動支援・STS情報(2006年9月~10月)

福祉有償運送  登録制  〝発車〟不調
タクシー業者消極的道内運協まだ6割

高齢者や障害者の足を確保するため、NPOの法人などが行う移送サービス「福祉有償運送」。道路運送法の改正で十月から事業者は国への登録が義務づけられたが、その審査を行う運営協議会を設置している道内市町村は約六割にとどまっていることが分かった。登録なしのサービス提供は違反行為で摘発対象となる。全国的にも協議会設置が進んでいない背景には、競合する運送業者との調整が難しいこともあり、利用者からは今後の取り組みに不安の声も上がっている。
留萌管内苫前町未設置自治体の一つ。これまでは町社会福祉協議会が移送サービスを実施していた。町は改正法の施行に備え、今年初めから運営協議会の設置を模索してきたが、タクシー業者らが参加を承諾せず、設置に至っていない。
町内のサービス利用者は約五十人。町は暫定措置として、九月半ば、運営協議会の審査が不要な町自身が事業者となり、サービスを継続することを決めた。
胆振管内豊浦町でも協議会は設置されていない。同町のNPO法人「友づれワーク」(大野啓道代表)は今年三月、職員が二種免許を取得し、「福祉タクシー業者」として移送サービスを続けている。
改正道路運送法では、NPO法人などが移送サービス事業を行う場合、各自治体の運営協議会でサービスの必要性や対価について審議し、合意を得た上で国土交通省へ申請することを義務付けた。
だが、北海道運輸局によると、道内百八十市町村のうち、九月末時点で協議会を設置したのは百十一カ所にとどまった。
従来、移送サービスはNPO法人などが福祉車両や自家用車を使って障害者や高齢者を実費程度で運送してきた。利用料金は通常、タクシーの半額程度。有償の旅客輸送は原則として国交相の許可事業者しか認められていないが、高齢化に伴って福祉移送サービスの需要が急増したため、国は許可なしのサービスも事実黙認してきた。
タクシー業界は「白タク行為」と強く批判してきた経緯があり、登録制への移行を「運営協議会の場で利用料について業界の意見を反映させることができる」として、歓迎する意見もある。
北海道ハイヤー協会(札幌)は改正法施行前、道内の会員に対して、協議会への参加を呼びかけた。担当者は「タクシー業界のすき間を、NPOに埋めてもらうのは喜ぶべきこと」と話す。
一方で、石狩管内のあるタクシー業界は「タクシー業界も福祉車両を導入するなど対応を進めているのに、低価格のNPOがサービスを始めると顧客を奪われてしまう」と運営議会設置に消極的。別の業者も「運送業者の反対が続けば行政も調整は難しいだろう」と話す。
こうした中、国交省は10月以降も運営協議会が設置されていない自治体には一年間の猶予を設け、無登録業者への厳正な処罰はしないとの通達を出した。
だが、札幌市内で移送サービスを行うNPO法人「ホップ障害者地域生活支援センター」の武田保代表理事は「協議会がなければ、利用者のために『もぐり』のサービスをせざるを得ない団体も出てくる。そうなれば法改正前と状況が変わらない」と危惧を表明した。

北海道新聞-2006.10.18

自家用車有償旅客運送運営協議会の設置・運営ガイドライン
(国土交通省制定=要旨)

1.目的
過疎地・福祉有償運送の必要性、対価その他事項を協議するために設置する。地域住民の生活に必要な輸送を確保し、地域福祉の向上に寄与するよう運送者に指導・助言を行うよう努める。

2.配置、運営

(1)原則、一つの市町村(特別区含む)単位に設置。複数の市町村、都道府県単位を妨げない。都道府県の場合、ブロックに分割し分科会形式などの開催が望ましい。

(2)地方公共団体の長が主宰。複数市町村合同主宰、都道府県主宰の場合それぞれ担当窓口を定める。

(3)運営協の会長は地方公共団体職員のみでなく、構成員の中から選任できる。副会長・役員を置くこと、委員任期を定めることができる。

(4)地方公共団体は設置した旨を公表。

(5)原則公開。議事概要の公開をもって代えることができる。

(6)運営協の下に幹事会を置くことができる。申請の事前審査、運営協の運営方法(関係者合意に関する部分除く)を審査する。

3.協議の具体的指針

(1)NPO等有償運送の必要性
タクシー等の公共交通機関のみによって身体障害者や要介護者等の移動制約者、交通空白地の住民に対する十分な輸送サービスの確保が困難な場合、補完する手段として必要性が認められるもの。運営協議会で地域福祉の向上に資する責任ある議論が求められる。

①福祉有償運送
タクシー事業者等福祉輸送サービスが実施されていない、または直ちに提供される可能性が低い、タクシー等は存在するものの移動制約者の需要量に供給量が不足している場合がありうるが、具体的には地域の実情に応じ運営協で判断が必要。次の資料を用いた協議が望ましい。
(イ)要介護者、身体障害者その他移動制約者の状況
(ロ)タクシーの台数、福祉タクシーの台数、福祉タクシーを含む公共交通機関の移動制約者輸送状況(実施予定含む)
(ハ)福祉タクシー券の利用状況
(ニ)NPO等移動制約者輸送サービスの活動状況
(ホ)その他

②過疎地有償運送
バス、タクシー等輸送サービスの供給量が地域住民の需要に十分に提供されていない、営業所が遠隔地にあるなど実質的にタクシー等によっては旅客輸送の確保が困難となっている場合、またはそのような実態の招来が明らかな場合などが想定されるが、運営協で判断が必要。次の資料を用いた協議が望ましい。
(イ)輸送対象となる住民の数
(ロ)バス・タクシー輸送状況
(ハ)NPO等輸送サービスの提供状況
(ニ)その他

(2)運送区域
市町村単位とし、旅客の発地、着地いずれかが運送区域。運営協が複数市町村合同主宰、都道府県主宰の場合の運送区域は、運営協全域でなく運送を必要とするもの居住地、目的地等に照らし、かつ当該団体の運行管理が確実に実施される範囲の市町村を定める。過疎地の場合、市町村の一部地域に限定できる。

(3)対価
施行規則、関係通達(対価の取扱い)に基づき、適切な実費に基づく営利に至らない範囲で定められているもの。申請者に対価の額等について資料提出を求め、必要に応じ説明等を聴取。

(4)旅客の範囲

①福祉有償運送
(イ)旅客(付添人除く)が他人の介助によらず移動が困難、単独で公共交通機関利用が困難な身障者、要介護者、要支援者その他肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害その他で、申請者団体で会員登録を受けた者または受ける予定者。運営協の下に判定委員会を設置、適否の審査など考えられる
(ロ)透析患者の輸送等は運営協で必要性が認められた場合、1回の運行で複数会員の運送(複数乗車)を行うことができる。対価が基準を満たしていることを協議。添乗者の同乗、それぞれ旅客に対応した車いす固定装置の装備など申請者に輸送の安全、旅客利便措置を講ずることを求めることができる。

②過疎地有償運送
地域の住民、親族、官公庁、病院その他日常生活に必要な用務を反復継続して行う必要がある者。

(5)その他措置
運営協は必要に応じ以下事項について確認を行う。
①有償運送自動車の種類ごとの数
②運転者要件
③損害賠償措置
④運行管理体制
⑤整備管理体制
⑥事故時の連絡体制
⑦苦情処理体制
⑧その他

4.構成員

(1)施行規則に掲げる者。地域実情により、以外の者を加えることができる。

(2)選任、変更には公正・中立な運営を行いえるよう構成員のバランスに留意、特定者に偏らないよう配慮。

(3)申請者に対しては、地方公共団体が事前に意見聴取を行うか、運営協(幹事会含む)に参加させ活動内容、申請に関する意見を述べさせる。申請者が運営協に参加する場合、自ら行う有償運送の可否の議決には加わることはできない。

5.合意

(1)合意方法
協議が調った場合、合意とみなす。関係者間のコンセサス形成をめざし十分に議論を尽くす。議決方法はあらかじめ要綱に定める。

(2)協議が調った場合の措置  略

(3)合意必要事項

①NPO等有償運送が必要であること
②有効期間の更新の登録を行う場合、引き続きNPO等有償運送が必要であること
③変更登録の場合、必要性があること
④旅客から収受する対価

(4)合意の解除
事実、理由を示して協議。有償運送者に業務改善、弁明の機会付与など手続き上の透明性に配慮。

6.登録実施後の主宰者の役割
有償運送の相談、違反時、事故時、苦情等に対応するため連絡窓口を整備する。苦情その他連絡を受けた場合、運営協議会の構成員に事実を通知、運営協で対応を協議し指導を行うことができる。有償運送者が指導に従わない場合、協議が調った事項に相違していると通報があった場合、重大事故発生等の連絡を受けた場合など主宰者は運輸支局に連絡、対応を協議。運送者の義務停止、登録の取消など行政処分通知を受理した場合、運営協構成員に周知、必要に応じ開催し対応を協議。

東京交通新聞-2006.09.25

福祉車両  無料で貸し出し
トヨタ、地域社会活動に

トヨタレンタリース東京は9月1日から6カ月間、身体障害者・高齢者(65歳以上)を対象とした地域社会貢献活動に対し、ウェルキャブ(福祉車両)の無料貸し出しを始めた。
対象は自治体・市民団体・社会福祉団体などが主催するイベントや、福祉・文化・教育活動、地域のお祭りなど。同社の全85店舗で車いす仕様のウェルキャブ20台を無料で貸し出す。
希望者は利用の10日前までに、各店舗に来店するか、同社のホームページ(http://www.toyota-ri-tyo.co.jp)から申し込む。

福祉新聞-2006.09.11

横浜市が福祉運営協

横浜市福祉有償移動サービス運営協議会の本年度第2回会合が先月28日、同市役所会議室で開かれた。
新たに許可申請を予定しているNPO法人6団体についての協議を行い、申請予定内容を了承した。既存1団体の運賃変更(待機料の新設)についても申請することを了承した。
協議では、運賃以外の介助料金の額のばらつきなどについて疑問をなげかける意見が多かった。

東京交通新聞-2006.09.04

「お出かけ相談室」開設へ  NPO横浜移動  サービス協議会
市と協働でモデル事業

横浜市とNPO法人横浜移動サービス協議会(岡村道夫理事長)は本年度、協働で「よこはまお出かけサポート事業」に取り組んでいるが、来月1日から「お出かけ相談室」を同協議会内に開設する。
移動制約者の外出に関する「相談窓口」の役割を担い、福祉移動サービスを実施している有償運送許可団体や限定タクシーなどの紹介も行う。
並行して、市内のサービス実施主体の輪送内容や運賃・料金などの情報をNPO団体、タクシー事業者(一般、限定)を問わず網羅して掲載する冊子を11月をめどに作成する。
移動制約者や関係者に情報を発信し、サービスを選択、利用しやすくする狙いで頒布も予定している。
横浜市は昨年度から協働事業提案制度を始めたが、横浜移動サービス協議会がモデル事業を提案し、本年度実施分で採用された。
同協議会は2000年から活動。相談業務や情報交換、スキルアップのための講習会などを手がけ、04年NPO法人化、05年には「福祉移動サービス研修会」が市の有償運送運営協議会から認証された。有償運送法も3月許可を受け、実施している。「相談室」運営はコーディネーターを常置させ、受け付け時間は平日午前10時から午後5時だが、電話・ファクスでは土、日曜日・祝日も対応。「当事者に必要な情報を伝えられる窓口にしたい。サービス依頼があった場合は、ニーズにあった団体をデータベースで探し、あらかじめ対応できるかこちらで詰めた上で紹介し、スムーズに利用できるようにしたい」(山野上啓子事務局担当理事)としている。有償運送許可団体のほか、福祉限定タク事業者、福祉輸送を行う一般タク事業者もケースに応じて紹介する。
サービス実施主体の「情報紹介冊子」について横浜市の健康福祉局高齢健康福祉部では、「利用者にサービスに内容が分かり、選ぶための情報を掲載したい。車両の種類や台数、運賃だけでなく介助料なども含め、きめ細かい内容を考えている」(高橋啓恒例在宅支援課担当係長)。一般タクシーで福祉輸送を行う事業者の掲載希望については神夕協横浜支部を通じて現在照会している。

東京交通新聞-2006.09.04