●福祉移送に7類型を例示

 移送サービス調査報告書 既存形態とらわれず

 厚生労働省の新たな移送サービスシステム調査研究委員会(委員長=布施泰男・一橋大大学院経済学研究科講師)は6日、高齢社会を踏まえた福祉移送サービスシステムを構築するための報告書を取りまとめた。移動性役者は全人口の3%程度あり、通院や福祉施設等への移動(MUST需要)だけでなく、買い物・余暇活動等日常生活での移動(WANT需要)への対応が求められ、現在のサービスは大きく不足している。

 介護保険での外出支援を論議するには移送サービスの社会システムがどうあるべきかが先決との厚労省の問題意識から、シルバーサービス振興会に委員会を設置、検討してきた。

 報告書では高齢社会の移送サービスの需要動向と需要の増大・変化に対応しきれていない。地域交通サービスの実態を明らかにした上で、具体的なシステム事例を紹介し、システム普及のための課題を提起している。

 具体的事例は@事業性を考慮 A既存のバス・タクシーの事業形態にとらわれない B利便性の向上を重視 C利用効率を重視 Dきめ細かいニーズ対応を重視 Eまちづくりの一環 F地域ニーズを重視−に7分類した。

 既存のバス・タクシーにとらわれない事例では、「バスの大量・定路線・コスト安」と「タクシーの個別・自由・コスト高」の二元論を超えた柔軟なサービスが求められているとし、具体的には東京都千代田区の地域福祉乗合タクシー「風くるま」、NPO法人ふれあい大津の患者送迎循環バスをあげている。利用効率を重視した事例では、車輌や運転者の空き時間を別機関が借用できるとし、千葉県酒々井町の巡回デマンド複合型システム(車両1台を朝夕はスクールバス、午後は予約制乗合タクシーに活用)などを紹介している。

 同報告書では介護保険に該当しない目的地を限定しない移送サービスの提供が必要と指摘。委員の宮園自動車からは、「無線のデジタル化で都心でも、より効率的な移動制約者向けの配車が可能になろう」との見解が示された。また、「移送サービスは十分認知されていなかったため、サービス提供が進む中で認知が広がり、潜在的な需要が広がる」としている。

 システム普及の課題としては、バス・タクシー事業者による新たな取り組みを支援するための相談窓口を設置、路線バス、コミュニティバス、施設送迎バス、病院送迎バス、タクシー、STS(スペシャル・トランスポート・サービス)等のうち、どの交通システムがどの組み合わせで必要か求められる−としている。

 車両については「保安基準を満たさないケースが多く、福祉タクシーに利用できる車両が限定されてしまう問題点も指摘される」年、「福祉タクシーの普及という観点から現在の保安基準を見直し、福祉タクシー事業に幅広い車種の利用を認め、タクシー事業者がより福祉タクシー事業に取り組みやすい環境を作ることが求められる」としている。

移動制約者の交通手段(新たな移送サービス調査委員会調べ)

福祉タク 民間患者搬送 ユニタク 介護タク NPO等移送 社協移送
事業者数 1594 232 44 595 1440 1034
台数 3276 432 154 2554 2500 1522
事業許可 4条限定 4条限定 4条 4条 80条 80条

東京交通新聞2004.7.12