●障害者のIT支援

  専門的な人材育成を

  現行のVr中心では限界

 総務省の「障害者のIT(情報通信技術)利活用支援のあり方に関する研究会」(座長=高橋紘氏・立教大教授)はこのほど、ボランティアを中心に行われている現在のITの利活用支援を改め、専門的技術を要する「支援企画責任者」「支援統括者「支援者」を育成するよう求める報告書をまとめた。

総務省研究会が報告書

 研究会はITを利活用する障害者が、身近な地域で十分な支援を得られる方策を研究するために二〇〇四年五月に設置。神奈川県での県域レベル、東京都練馬区での市区町村レベルでの実証実験を行いながら、検討してきた。

 報告書では、制度的裏付けがなくボランティア中心で行われている現在の支援活動では、@適切な機器の選択や調整ができないAサポートの範囲と責任が不明確B給付・助成制度に対する助言・支援が困難C障害と機器の双方の特徴を理解した上での購入相談が困難−などの問題があると指摘。専門的知識・技術を要する人材を育成することで、障害者のIT利活用を支援するよう提案した。

 育成する人材としては、IT利活用を実際に支援する「支援者」、各支援者を取りまとめつつ最適なIT支援を責任もって実践する「支援統括者」、支援計画書を作成し最適なIT環境づくりのために社会・人的資源を調整する「支援企画責任者」の三類型に分けた。

「支援者」に必要な知識・技術では@ITの基礎A障害の理解Bコミュニケーション技術C生活支援の方法と道具DIT機器処方に関する知識EIT支援の心構え・ノウハウ−を挙げ、既存の研修制度を活用して育成するとした。

 「支援統括者」には、「支援者」の知識・技術に加え、@IT支援の実践スキルA介護・コミュニケーション実践スキル−の必要性を挙げ、「IT支援・実践スキル習得コース」を新たに設けるよう提案した。

 「支援企画責任者」には、さらに@IT支援のマネジメントスキルA地域資源の理解と調整スキルB新しい取り組みへの提案スキル−が必要とし、「IT支援マネジメントコース」を設けるよう求めた。

また、実際の育成・支援では、全国レベルで「支援企画責任者」の育成とIT支援基盤整備を進めること、都道府県レベルで「支援統括者」の育成と市区町村で対応が困難な事例のフォローを行うこと、市区町村レベルで「支援者」の育成・支援、窓口機能を果たすことなど役割分担・連携が必要とした。

なお、報告書ではこのほかに、福祉・教育・リハビリテーション・雇用などの分野ごとでIT利活用の支援が的確に行われることの必要性を強調した。

特に福祉分野では、福祉サービスの相談窓口でIT支援のニーズを的確に把握すること、介護現場などで把握されたニーズが的確にIT支援機関に届き、実践される環境整備を行うよう求めた。

報告書を受け総務省は、障害者のIT利活用の支援促進に向けた検討をさらに進める。

福祉新聞 2005.10.24(月)