●障害者 自立支援医療

  負担軽減対象の範囲検討「重度かつ継続」焦点

  厚労省、臨床実態に基づき議論

 障害者に対する医療公費負担制度の見直しを盛り込んだ障害者自立支援法案に関連し、厚生労働省は六月二十二日、新しい医療公費負担制度における負担軽減対象者の範囲などを検討する自立支援医療制度運営調査検討会を立ち上げた。年齢や障害種別により異なる医療公費負担の仕組みを一元化し、利用者に原則一割の負担を求める「自立支援医療制度」(今年十月一日施行予定)の基準を専門医らが臨床実態に基づいて議論する。

 具体的には@制度対象者のうち所得税非課税以上の人の負担軽減を図る「重度かつ継続」の範囲A自立支援医療の再認定をする際の要件B自立支援医療の提供方針――が検討課題となる。

 このうち特に大きな課題とされているのは精神障害者の「重度かつ継続」の範囲だ。厚労省が「継続的に高額の医療負担が発生する」と判断した統合失調症、躁うつ病(狭義)、難治性てんかんの人の自己負担上限(月額)を所得に応じて五千円、一万円、二万円と比較的低くする措置で、その対象疾病は二年以内に、所得税額三十万円以上の人への適用(経過措置)は三年後に見直すことになっている。

 二十二日の検討会で厚労省はその対象疾病を検討するため、疾病別の医療費を比べる資料としてレセプト(診療報酬明細)の集計を用意したが、委員からは「額だけを比べれば、統合失調症以外はあまり差がない」「疾病で区分けする議論はいかがなものか」「生活のしづらさを考慮すべきだ」といった指摘が続出した。

 座長に就任した佐藤徳太郎・国立身体障害者リハビリテーションセンター総長は「とても今日結論を出せる状況ではない。次回はより詳細なデータを用意して分折したい」とまとめるのが精いっぱいで、今後の議論も難航が予想される。

 なお、「重度かつ継続」から外れ、低所得にも該当しない人の自己負担の上限は、原則として医療保険と同じ月額七万円超。精神障害者が通院して医療を受ける場合、現在は自己負担が5%(一人当たり平均月額千六百円)だが、制度改正後はこの限度額内での一割負担となる。

 また、所得税額三十万円以上で「重度かつ継続」に該当しない人は自立支援医療の対象外で三割負担となることから、大幅な負担増を懸念する当事者団体らは三月十一日までに二十一万人の署名を集め、厚労省に現行度存続を求めた。

 国会審議でも「疾病で線引きする議論は不毛に終わる」といった指摘があったが、政府側は「専門家に集まって頂き実証データも集めてよく検討したい」(塩田幸雄・厚労省障害保健福祉部長)と答弁し、この検討会を立ち上げた。

 座長以外の委員は次の通り。

上小鶴正弘・埼玉県総合リハビリーションセンター総長▽桑原寛・神奈川県精神保健福祉センター長▽竹島正・国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部長▽中澤誠・日本小児科学会理事▽花井忠雄・日本精神科病院協会常務理事▽樋口輝彦・国立精神・神経センター武蔵病院長▽三上裕司・日本医師会常任理事▽三野進・日本精神神経科診療所協会長

福祉新聞 2005.7.4(月)