●カギ握る運営協設置

輸送制度改正テーマにセミナー

 福祉交通の新システム〜その開発と運営をテーマに先月末、地域科学研究会(東京都千代田区、緑川富美雄社長)による福祉輸送セミナーが本紙の後援、福祉交通支援センターと移動サービス市民活動全国ネットワークの協力で開催された。福祉輸送サービスと自治体との連携や4月に制度化された運営協議会の設置についてパネル討論が行われ、出席した国土交通省の関口幸一・自動車交通局旅客課長(1日付で総合政策局政策課参事官)は、「今後の地域の輸送判断は市町村中心の自治体にやってもらう方向が大きな流れだ」とのべ注目された。パネラーからは「運営協議会を地域の足の確保を議論する場にすべき」との意見が相次いだ。

地域の行政が主導権
タク業界は前向きの提言を

関口幸一国交省旅客課長

 今回の福祉輸送の制度改正では運営協議会の設置が大きなポイント。厚労省とともに都道府県あてに相談窓口の開設を文書で呼びかけたが、まだ半数しか返事がない。設置には自治体の理解と協力が必要だ。国交省はタクシー・バス行政など国一元化でやってきたため、自治体との関係が薄いのが弱点。現在、地域の実情に応じた施策が重要と考えており、自治体を通じたきめ細かい交通行政が求められている。

 今回の運営協の設置はそうした行政を行う大きなきっかけとなる。当面、道路運送法の運用でスタートしたが、近い将来は法的位置づけも検討する必要が出よう。制度の浸透は一朝一夕にはいかないが、ある程度認識ができてくれば運営協の設置は急速に進もう。自治体がどの部署で担当するかは特定しているわけではなく、特区の経験から福祉部局が担当になる場合が多いようだ。

 地方分権の流れから内閣府に地域再生本部ができ、「地域交通会議」の設置を閣議決定した。タクシーやバスの地域協議会があるが、今回の運営協は地域交通会議の1つとも考えられる。地方の路線維持が難しい鉄道やバス事業者が一斉に撤退し始めている気配があり、地域の住民の要望は従来のように交通事業者にではなく地域の行政に発せられている。バスより乗合いタクシーがいいのか、NPOボランティアがいいのかといった地域のミクロの判断は運輸局や運輸支局では限界があり、地域の実情をよく知っている自治体の判断が一番だと考えている。

 タク事業者が行う福祉輸送はタクシーの現行規制に縛られている面があり、相当な福祉輸送需要があるのに全くこたえていないというのがわれわれの基本認識。自家用ヘルパーをタク会社が導入できるようにしたのも、量的対応を考えた結果だ。本来、福祉輸送を担うべきタク事業者がやりやすくするのが本筋で、タクシー業界には前向きの意見を提示するように言っている。

東京交通新聞 2004.7.12