●介護予防に移送不可欠  技術のレベルアップ図る

  黒田司郎・全国介護移送協会長に開く

まずNPO法人格取得の意議は。
 「やはり対行政折衝の面が大きい。移送に関する行政施策に対する提言等を行う場合、法人格があるのとないのでは全く違ってくる。厚生労働省が推進する介護予防施策に移送の問題をうまく結びつけていきたいと思っている。現代社会では衣・食・住に“移動”が加わることで基本的な生活条件が整う。加齢や障害などで移動が困難になった方々への介護移送サービスを従実させることが介護予防にもつながっていく」

具体的な政策提言は。
 「介護保険制度や支援費制度を見直す中で移送の問題をどう位置付けるかは厚労省の考えることだが、一つ言えることは外出することによって社会参加し、さまざま接触をすることは、要介護状態になっていくことへの予防につながると思う。その意味では介護予防施策の中で移送は不可欠だ。特に気になっている点は、予防給付の中に移送が入らなかった場合、今、リハビリに通っている人たちが通えなくなってしまう。リハビリは予防に直接つながっている。通えなければ要介護状態のレベルが悪化する事態になりかねない。それと夜間の緊急介護が検討されているが、この部門はタクシー会社がインフラ面で向いていると思う。もともと24時間営業でヘルパーをそろえていれば夜間の随時介護に関しては十分対応できる。そういう提案をしていきたい」

昨秋発刊した「介護移送マニュアル」の中身は、
 「本来、ホームヘルパーの研修カリキュラムに入っていない車の乗り降りや車いす使用者の上下の移動方法などを網羅しており、従来のマニュアルにはなかった内容を盛り込んだ。移動介護(ムーブヘルプ)に従事するための基本的な心構えと技術を体系化している」

マニュアルに基づく研修制度はいつごろから開始するか。
 「手始めに役員事業者を対象にリーダー研修を実施する。日程調整はこれからだが、5月に3日間程度のカリキュラムで行うことになると思う。その後は各リーダーが講師となり研修要請に対応していく形になる。マニュアルを読んだ方から問い合わせも来ているので、講師の派遣等、具体的に検討していきたい。介護移送が普及していくのに従って質、レベルが問われていく時代になる。その質を少しでも上げることに役立っていきたいと思っている」

東京交通新聞 2005.4.11(月)