●経営指針の確立を働きかけ

  全国身体障害者施設協議会

  会長 伊藤 勇一

 一九六二年から五年間にわたって重症心身障害児(者)を持つ家庭の実態を読売新聞が調査した。その報告によると、五年間に障害者殺害三十六件(未遂一件を含む)、親子無理心中十六件、合計五十二件にも達している。同報告は「家庭の中に重症心身障害児(者)のいる家庭は、常に心中を胸に描いているといっても、言い過ぎではなかろう。死こそ唯一の解決策」という言葉で結んでいる。

 このことがきっかけとなり、日本の戦後の福祉施策から取り残されていた最重度障害児(者)は、多くの厳しい社会問題を提起することとなった。

 七十二年七月一日に身体障害者福祉法の一部改正が行われ、同法第三十条の四をもって、身体障害者療護施設が創設された。そして、同年七月二十二日に厚生省(当時)は「療護施設設置運営要綱」を示し、身体障害者更生援護施設の種類に身体障害者療護施設を加えた。また、八十六年六月に全国社会福祉協議会は、種別協議会として「全国身体障害者施設協議会」を設置し現在に至っている。

 ここで全国身体障害者施設協議会が現在取り組んでいるものの中から、一つ紹介させて頂くと、まず支援費基準の見直しと障害者自立支援法施行へ向けた経営指針の確立である。

 経営指針とは、経営理念と経営方針、そして経営計画を合わせて確立されるものである。

 経営理念とは、全国身体障害者施設協議会倫理綱領にある、「最も援助を必要とする最後の一人の尊重」「可能性の限りない追求」「共に生きる社会作り」という基本理念を踏まえて考案される施設経営の実践的な考え方である。

 経営計画とは、経営方針を達成するための手段・方法・手続きなどを明らかにし、施設を取り巻く環境の分析などの手法を考案することである。

 これらの理念を踏まえ、会員施設が支援費基準の見直しと障害者自立支援法施行へ向けた経営指針の確立・改良・成文化を行うことができるようにするための考え方を整理し、モデルを提示していきたい。

「死こそ唯一の解決策」とまで言わしめた障害者施策も豊かさを求めるに至った。これまで築き上げてきたものをゆるぎないものとするためにも、施設経営を盤石にしていかなくてはならない。会員施設は財務内容について、全社協が示した経営指標をもとに再検討し、現行のサービス水準を低下させることなく、むしろ向上させるために一層の業務の省力化・適正化を目指し、経営管理をしていくことが必要である。全国身体障害者施設協議会は、この経営指標を周知徹底していく働きかけをしていきたい。

福祉新聞 2005.7.4(月)