●本人望まぬ施設入所 不動産の賃貸を拒否

  障害者差別条例で排除へ

 障害者差別排除条例を制定する方針を宮域県が決めた。差別の具体的な内容を列記し、差別された側の申立窓口として「差別救済委員会」の設置も盛り込む。来年の2月県議会に提案し、同10月の施行をめざす。こうした条例を都道府県が制定するのは全国で初めて。

宮域県 救済機関も設置

 条例素案によると、地域生活、医療、不動産の取得・利用、労働、教育の5分野で、障害者であることを理由に「不利な扱いをしないよう努める」事項を規定する。差別の具体例としては、本人の意思に反した施設生活を強いる▽様々なサービスの利用を制限・拒否する▽交通機関の利用を制度・拒否する▽不動産の賃貸を拒否する▽採用条件を満たしているのに採用を拒否する▽不当に教育の機会を妨げる―――などを挙げている。

 差別救済委員会は知事が任命する有職者5人以上内で構成。申し立てに助言やあっせんをするほか、差別が認められた場合には是正勧告する。知事は委員会の報告に基づき、重大な差別と判断したら公表する。

 県障害福祉課の担当者は「障害者が感じている差別について、県民が考えるきっかけにしたい」と話している。違反者への罰則は設けず、努力規定にとどめる方針だ。

 宮域県では浅野史郎知事が今年2月、知的障害者入所施設の「解体」を宣言。施設を出た障害者が安心暮らしていけるための環境づくりを検討してきた。

 障害者差別を禁止する法律は40カ国以上で整備され、日本政府は01年8月、法律を制定するよう国連から勧告を受けた。今年6月施行の改正障害者基本法には、基本理念として差別禁止を盛り込んだが、何が差別にあたるか定めておらず、実効性が乏しいとの批判が出ている。

 千葉県も7月策定した県障害者計画に、障害者差別を禁止するための条例を盛り込んでいるが、制定時期は未定という。

 日本弁護士連合会で差別禁止法の試案づくりを進めている野村茂樹弁護士(東京弁護士会)は「何が差別にあたるかを定義したり、裁判以外の救済機関を設置したりすることは、歓迎すべき方向。法律制定にもプラスになる」と話している。

朝日新聞 2004.12.5(日)