●名古屋で福祉運営協

  NPO団体7団体が名乗り

 名古屋市は14日、北区の総合社会福祉会館で第1回福祉有償運送運営協議会を開催した。福祉有償運送の必要性を中心に協議、市側は@利用対象者数は約16万人で、将来増が見込まれ、タクシー輸送などによっては必ずしも十分な供給体制とはいえないA個々の障害に着目した一人ひとりのニーズに対応するには福祉有償運送は公的にも活動を認めるべきと提案。これに対して、タクシー事業者委員は「福祉輸送実績予測数値に比べ法人タクシー事業者の提供する福祉輸送が、極端に不足する状況とは予測しがたい。ただ、@自己負担能力が不足する場合A専門知識を持つガイドヘルパーが対応するべき場合、福祉有償輸送は必要」と限定的に必要性を認める点を強調した。次回の29日には14日現在出ている7件の申請に対する審査を行う予定。

 冒頭、松永恒裕市健康福祉局長があいさつ、「移動制約者が既存のタクシーとともにNPO法人などの移送サービスを利用することにより安心して移動することができるような仕組みを作りたい」と述べた。

 会長に黒田文雄愛知県社会福祉協議会副会長を選任。委員にタクシー界から石川優名古屋タクシー協会福祉関連委員長(中川タクシー社長)、介護保険付タクシー事業を実施する天野清美同協会理事(つばめ自動車社長)、池田勝裕全自交愛知地連委員長を選任。学識経験者から加藤博和名大大学院環境学研究科助教授ら、行政から山田愛知運輸支局輸送課長、長谷川弘之同障害福祉部長ら、利用者団体から山田昭義愛知県重度障害者の生活をよくする会会長ら、ボランティア団体から大西光夫特定非営利活動法人ボランタリティーネイバーズ理事長の16人を選任。

 必要性協議の中で、市側は@今年4月1日現在、名古屋市の移動制約者は要支援、要介護者約6万人、身体障害者約7万人、知的障害者約1万人、精神障害者約0.7万人、難病患者(特定疾患医療給付事業受給者)約0.9万人。合計約16万人A8月末現在、ボランティア輸送の現状は7NPO団体が有償ボランティア輸送を実施、所有福祉車台数は18台、セダン型は15台、ボランティア持ち込み車は30台、運転者数は63人、延べ利用者数は858人などと説明。

 利用者団体代表の山田委員は「制度はここまで成熟してきたが、かつては車いすだとタクシーはとまってくれなかった」と批判、「年金が月額2万、3万円しかない人が何十万人といる。ボランティア輸送に頼るしかない」と必要性を述べた。

 石川委員は@1975年から一部タクシー法人が任意で車いす利用障害者利便向上の取り組みとして自主的な助成制度を開始A78年に名古屋市の基本料金助成制度実施を機に名タ協として福祉輸送を開始B2004年度の法人タクシーによる福祉輸送回数は約103万5000回の実績をあることを報告、「極端に不足している状況とは予測しがたい」と述べた。

 また、福祉限定タクシー事業者はほとんどが零細でボランティア活動から始め「白タク行為」との批判を受け行政の指導にも基づき事業免許を取得した者も多い。このように緑ナンバーで道路運送法に最も準拠している者を落胆させることはできない。これら限定事業者の気持をお汲み取りいただき、本来のボランティア活動で輸送を行っていたNPO法人に対してのみ今回の80条輸送が考えられるのが本来で、自己負担能力の不足と専門知識の必要な輸送対象者に限定されるべきだ」と強調。「双方が利用者利便を高め、発展するよう運営されるべきで、真に福祉輸送が市民に十分に行き渡るような施策を臨むものであり、決して民業の圧迫施策とならないよう願う」と述べた。
 協議会は年2回開催、必要に応じて臨時開催する。

 また、山田委員が「万一、損害保険の期限切れ以後、事故を起こした場合、協議会が責任を負うのか、市か許可を出す運輸支局か」と質問、市側は「一義的には運行するNPOが負うが、それ以上のことは今後の検討課題」と述べるにとどまった。

 愛知県内では福祉有償運送運営協議会はこれまで岡崎市と半田市・阿久比、武豊1市2町合同の知多中部地区の2件が開催されており今回で3件目。

東京交通新聞 2005.9.19(月)