●なぜ統合浮上

 迫る超高齢社会 需要増は不可避

 00年に始まった介護保険は5年をめどに見直すことが法律で決められている。最初の見直しでなぜ、抜本的な見直しが検討されているのか。最大の理由が財政問題だ。

 65歳以上が人口に占める高齢化率は00年が17%。団塊の世代がすべて65歳になる15年には4人に1人がお年寄りという超高齢社会に入る。

 介護保険はこの4年で利用者数が倍増、サービスの給付費も00年度の3.2兆円から04年度予算で5.5兆円に増えた。25年度には19兆円に達する見通しだ。

 厚生労働省は介護予防策を講じて給付費の伸びの抑制に力を入れるが、急速に進む高齢化と需要の拡大を抑え込むのは容易ではない。増え続ける給付費をどう賄うか。その答えとして、同省が検討しているのが、保険料を払う人を増やす被保険者範囲の拡大だ。

 一方、障害者支援費制度は、障害者の希望を尊重し、利用者がサービス事業者を選べる制度として、身体と知的障害者を対象に03年度に始まった。しかし、需要の急激な伸びに予算の手当が追いつかず、ホームヘルパーなどの在宅サービスに対する国の補助金は初年度で128億円も不足。04年度で145億円足りなくなる見通しで、財政面では早くも破綻状態にある。

 このため、介護保険料の徴収年齢を40歳以上から引き下げて統合すれば、安定した財源が確保でき、精神障害者や難病患者などの介護も充実させることができる−。これが厚労省の狙いだ。

 同省は9月にも介護保険制度見直しの試案を示す。12月には政府が改革大綱をまとめ、05年の通常国会に介護保険法改正案などを出す方針だ。

 しかし、統合案に対する関係団体の反応は様々だ。八つの障害者団体は「統合は必然」「いまは判断できない」「税で見るべきで反対」と意見が分かれ、全国市長会と全国市町村会は「見直しにあたっては市町村長の意見を十分尊重するよう」厚労省に申し入れるなど慎重な姿勢だ。

 連合は基本的に賛成だが、日本経団連は介護保険料の半分を支払っている企業の負担増につながることから、「ここの制度改革のたびに企業の負担が求められるのは納得できない」と反対している。

介護保険と障害者支援費制度の比較

介護保険 障害者支援費
サービス対象 原則65歳以上。40〜64歳は若年性の痴呆(ちほう)症など老化に伴う15の特定疾病によって介護が必要になった場合のみ 市町村が支給決定した身体障害者、知的障害者、障害児
サービス量 要支援・要介護度に応じて支給限度額が決められ範囲内で利用者が選択。超過分は全額自己負担 市町村が利用者の希望を聞きながら必要なサービスの種類・量を決め、障害者が事業者を選ぶ
財源負担 居宅・施設サービスとも、保険料2分の1、国4分の1、都道府県8分の1、市町村8分の1 居宅サービスは原則、国2分の1、都道府県、市町村は4分の1。施設サービスは、国2分の1、都道府県、市町村は4分の1
利用者負担 利用したサービス量の1割を負担。限度額あり。 負担をできる能力に応じて徴収


国の構想は

年齢や原因を問わぬ制度に

 総合すれば、介護保険は様変わりする。介護保険は現在、40〜64歳については老化に伴う疾病で介護が必要な場合だけ利用できる。

 65歳以上では、精神障害者を含む障害者もまず介護費保険の給付を受け、不足分を支援費などで補う仕組みだ。

 統合案は、被保険者の年齢引き下げに伴って、若い障害者難病や終末期のガン患者なども介護サービスを利用者できるようにするようにするというもの。高齢者中心の介護保険は、年齢や原因に関係なく介護が受けられる制度に変わることになる。

 介護保険の眠度額越える長時間介護や障害者の就職支援などについては、医療保険や税金などで賄生事にすると見られるが、具体的な内容は厚労者の試案が示されないとはっきりしない。

朝日新聞 2004.7.26(月)