●福祉有償−年内目途に新制度設計

  セダン特区全国化聴取

  自交局長が表明

 国土交通省はNPO等による福祉有償運送事業の仕組みの見直し案を年内目途に策定する方針を固めた。同省の宿利正史自動車交通局長が9日、政府の構造改革特区推進本部・評価委員会(委員長=八代尚宏国際基督教大学客員教授)が行ったセダン特区全国化に関するヒアリングで表明した。当初の方針を半年間前倒ししたもので、12月までに青写真を事前提示することを条件に、評価委はこれを了承した。セダン全国化の検討を機に、新法制定も視野に入れた有償運送事業の新たな制度設計が急ピッチで進められることになった。同省はタクシー、NPO、自治体など関係方面の調査に直ちに着手する。新制度では自治体主宰の運営協議会の役割重視をうたった現行の移送ガイドラインを基本とする構えだ。

 セダン特区全国化に関する特区評価委の国交省ヒアリングは9日で3回目。新任の宿利自交局長による“局長折衝”で決着した形。前回同省次長ヒアリングで来年6月に有償運送事業の見直し案を策定するとしていたが、半年前倒しし今年12月の策定を表明。同月まで評価委に同案を提示することも約束し、同委と国交省は了解点に達した。同省の方針が容れられたことで制度設計後にセダン全国化を判断することになった。

 ヒアリングで宿利局長は「NPO等によるボランティア有償運送を利用者にとって安全・安心・安定的なサービスとして全国に普及させたい」としながらも、セダンの全国化では@福祉有償運送か一般のタクシー営業か見分けにくく、タクシー類以行為につながるおそれが高いA福祉車両に比べ台数や利用者数などマーケットの規模が著しく大きいため、タクシー事業との制度的な整合性を確保せず全国展開すると、サービス全体の健全な発達を阻害し利用者の混乱と不便を招くB道路運送法80条の例外許可での対応の是非を再検討、立法化措置も考える必要がある――点を訴えた。

 その上で同局長は「実態調査や関係者からのヒアリングを行い、有償運送事業全体の仕組みを見直した上で(セダン全国化の)答えを出したい。このため半年だけ結論を出す時間をずらしてもらいたい。年末に向け、交通バリアフリー法の抜本見直しも行われるので年内に有償運送全体の見直し案を策定、年明けに(評価委に)説明したい」と提起した。

 これに対し、評価委から「タクシーとセダン有償運送車両は見分けにくい。不適切な運行情報は誤解に基づいていないか」(樫谷隆夫・日本公認会計士協会理事)との指摘があり、宿利局長は「識別では表示を指導しているが、今後の対応の基本はタクシーが貢献できる領域とNPOが新しいサービスとして提供できる領域とをはっきり決め、双方のサービスの質と量が最大になるよう制度設計したい」とこたえた。

 さらに評価委から「12月に案を策定する前に提示できないか。委員会としてもNPOなどから調査したいし、最終案を提示されて全国化ができないと言われても困る」(市川眞一・クレディスイスファーストボストン証券会社東京支店証券本部ディレクター)と注文があり、宿利局長は「(見直し案は)12月に決まる予定が絡む。その段階では中身があいまいにしか説明できない可能性があるが説明したい」と了承した。

 宿利局長はまた「セダン車両は福祉車両以上に関係者間の合意形成がより困難。福祉車両以上に自治体の主導的な取り組みが不可欠で現在、特区制度の活用で可能となっている」と、新制度によるタクシーとNPOの合意形成に全力を注ぐ意向を示した。八代委員長は「地方と都市部で対応するなどどう合意形成するか、方向を詰めてほしい」と提起した。

東京交通新聞 2005.8.22(月)