●世田谷区福祉運営協が再始動

 2NPOの80条申請承認

 東京都内で唯一の世田谷区福祉有償運送運営協議会(課長=本多俊一・世田谷区保健福祉部保健福祉活動推進課長)が、20日、同区会議室で開催された。自家用セダン車両の導入を承認できるセダン特区の機能を有す恒久的な福祉運営協議会として再スタートしたもので、同日、特定非営利活動法人・世田谷ミニキャブ区民の会(藤田真一理事長)の特殊車6台と同たつなみ(相羽美子代表理事)の同4台を道路運送法80条許可の申請手続きに入ることを承認した。許可されると同区の80条許可のNPOは3団体となる。都内の福祉運営協議会は練馬区、板橋区、西東京市などが秋にも設置を検討しており、タクシー業界とNPOボランティアとの協議会が全都的に活動化する方向だ。

運営協 全都的に設置の機運

 80条許可申請承認された世田谷区ミニキャブ区民の会は81年設立。運転登録会員30人、利用者280人を抱える。利用料料金は1キロ60円(普通車)、30分以内250円に事務手数料を加えた額。たつなみ会は84年設立。13人の運転登録会員が65人の利用者を移送する。利用者は1キロ40円、1時間以内800円・30分ごと400円に運転協力車庫通費を合わせた額。

 これに先立ち昨年、同区特区で80条許可取得したNPOサポート出会いの高橋練造氏が特区後の運送実績(今年1〜6月)ついて▽月利用人員90〜128人▽協力運転者7人▽登録利用者47人▽苦情・事故ゼロ−と報告した。

 新規2NPOの許可申請めぐっては、タクシー業界労使とNPOとが2種免許の有無、運賃2分の1以内の料金体系、福祉タクシー劵の取り扱い−などで激論となったが、タク業界から「輸送の安全が担保される限り、NPOと手を組むことにやぶさかではない。共存共栄は図りたい」(氷室新一郎・全福協東京支部監事)、NPO側から「今後、いろんな問題を一緒に協議していきたい」(鬼塚正徳・全国移動ネット事務局長)―などエール交換する場面もあった。

 副議長に選択された秋山哲男都立大学教授は、「NPOの事業内容を対外的に分かりやすくため、事故統計や簡単な原価計算などをつくってみてはどうか」と提起、本多議長は区の取り組みとして「2005年度を初年度とする移動困難者に対応するトータルな実施計画を今年に入り事務レベルで検討中だ」と明かした。同区は身体障害者手帳と愛の手帳所持者約2万人、要介護認定者約2万人に対し、リフト付きタクシー登録者約1400人、福祉タクシー券交付数約9400人、移送サービス利用登録数約1400人「移動困難者のニーズに十分対応できていない」としている。

 福祉タクシー券を同区はタクシーとNPO双方で使えるようにしたが、秋山教授は「利用者の使えるサービスの幅を広げる意味で今後の福祉タクシー券は全国的にタクシーとNPOで共通使用できるのが流れ」と指摘した。

東京交通新聞 2004.7.26(月)