●腎臓病連絡協議会
  すずらんの会事務局長 伊藤絵利子氏

  社会貢献の芽摘まぬよう

  タクシーとは「協力関係」

 ――練馬区の運営協に参加した感想は。
「私を含め交通問題には素人の方が多く参加しており、タクシー業界の方たちに相手にされないか心配したが、意見交換会などを重ねるうちに理解が深まったと思う」

 ――運営協の議論をどう受け止めていますか。
「そもそも運営協が単なる80条許可取得の機関なのか、広く地域交通を考える機関なのか、目標がはっきりしていない。公費を使って議論する以上、地域に即したルールをきちんと作っていくべきだ。当初、走りながら考える印象だったが、だんだん整理されてきた。タクシー業界の委員さんとも分かり合える感じもあり、良い方向へ向かっている」

 ――国交省は運営協に幅広い議論を期待しています。
「今活動するNPOは来年3月までに許可を取得しないと活動できなくなるから、審議を急ぐ気持ちは分かるが、各層から集まったせっかくの運営協だから、地域交通を考えるきっかけにしたい。今後設置される運営協は、2分の1ルールにしても一時的移動困難者の定義にしても、練馬の議論を参考にするだろうから、それだけ影響が大きいということを自覚すべきだ」

 ――2分の1判断基準をどう捉えていますか。
「非営利か営利かを判断する基準はあっていい。利用者の不利益になっていないかを見る指標になる。運営協の場で表を使ってこの団体のここは外れているとか揚げ足取りの表にはしてほしくない。別に収支報告書を提出しており、赤字ではないが細々とやっていることはそれで分かるから、2分の1だけに目くじらを立てることもない」

 ――タクシーとNPOの役割分担をどう考えますか。
「『すみ分け』より『協力関係』の考え方が合う。NPOには社会貢献をしたい人がもちろんいるが、利用者のためにどうしたいと考えている。私は腎臓病の患者会の人間だが、利用者の患者さんの利益を考えてタクシーを使った方が良いと考えた場合はタクシーを薦める。NPOは移動困難者がいるから乗せるだけ。公共交通機関のタクシーが使いにくいから、結局利用者がNPOを選んでいる」

 ――セダン特区全国化問題を契機に国交省が福祉輸送の新たな仕組み作りに着手しました。
「社会貢献をしたい人の芽を摘まないようにして欲しい。すずらんの会では出庫から帰庫の1時間に運行する善意の“チョイボラ”さんが多いが、2種免許を義務化したら、やり手はいなくなる。そうした排除の条件整備はやめてほしい。国交省のホームページにタクシーと並んで福祉有償運送のアイコンがあるが、同様に独自のナンバーを作ってもらえるのが理想だ」

 ――地域交通に対する青写真はありますか。
「移動困難者の配車といったコーディネート役は、タクシー会社ができないとは言わないが、会員登録などで利用者に深くかかわっているNPOのほうが得意分野ではないか。タクシー乗務員は腰痛持ちの人が多いと聞くが、お客さんを階段からおぶって乗せたよと聞くたびに、階段昇降機のあるNPOもあるのに、そこに配車すれば腰痛にならなくても済むのにとも思う。お互いに排除せず、タクシーとNPOは得意分野を生かし合うべきだ」

 ――運営協に望むことは
「練馬区にはガイドラインの対象外で許可が取得できない任意団体が5つある。NPO組織とまでいかないが、利用者がついており、継続して活動できるよう特別なルールを考えていただきたい」

東京交通新聞 2005.9.12(月)