●最終回焦点−グランドデザイン
厚生労働省障害保健福祉部
企画課課長補佐 土肥 克己
障害者自立支援法案は七月十五日に衆議院を通過しました。今後は参議院で審議されます。衆議院では三十六時間を超える審議が行われましたが、参議院でもほぼ同様の審議がされると思います。衆議院では、自立支援医療の施行期日が二〇〇六年一月になるなどの法案修正がされました。
法案が成立する前に今後の課題を書くのはまだ早いような気がしますが、衆議院の法案の修正で、今後の検討に関する規定が二つ追加されましたので、その内容に触れたいと思います。
一つは、障害者の範囲です。障害者自立支援法案では、従来の三障害の枠組み自体はそのままとなっています。三障害共通のサービスの枠組みを作ることにより、これまで福祉サービスの面で遅れていた精神障害者へのサービスが進み、サービスの必要な方に必要なサービスを提供する普遍的な仕組みへの第一歩になるものと考えていますが、いわゆる谷間と呼ばれる発達障害や難病などの方々の対応を今後考えていかなければなりません。
二つ目は、障害者の所得保障をどう考えていくかという課題です。今回、新しい利用者負担の仕組みが導入されますが、それに関連して所得保障の問題もかなり提起されています。年金や手当を増額することは、現在の国の財政事情を考えるとなかなか難しいことですが、就労による賃金も含めて、今後その在り方を検討する必要があります。
障害者自立支援法案は、私は今後の障害保健福祉をより良いものとするためには必要なものと考えていますが、それ自体で全てを解決する方策ではありません。今後も必要な見直しを不断の努力で行っていかなければなりません。当面は、政省令などの制度の細部を検討し、意見も伺いながら決定し、実施していくことになりますが、その後はきちんと必要なサービスが提供されているかといった観点からも見直しが必要ですし(法案にも三年後に検討しなければならないという規定があります)、右に挙げた課題についても検討を行っていかなければなりません。
法案審議中であり、また、詳細が決まっていないことも多いため、この連載が踏み込んだ内容となっていないことはお詫びしなければならないと思っていますが、この連載がグランドデザインや法案を理解する一助になれば幸いです。長期間の連載にお付き合い頂きましてありがとうございました。(終わり)
福祉新聞 2005.8.1(月)
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