●介護保険
障害福祉と結ばれるには
介護保険と障害福祉の「結婚話」をどうすべきなのか。厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、結論が出なかった。
介護保険と障害福祉。それぞれ財政的に難しい事情を抱えている。
介護の社会化をめざして始まった介護保険は、この4年間で利用者が倍に増えた。年金と並んで老後の支えとして頼りにされるようになったといえる。
その反面、当初3・6兆円だった費用は今年度6・1兆円にふくらんだ。高齢者の保険料も高くなり、限界とされる月5千円を超える市町村も出てきた。
一方、障害者福祉は昨年度、お仕着せの措置制度から支援費制度に切り替わった。障害者が自分でサービス事業者を選び、それを税で賄うようになった。
だが、新制度は初年度から128億円不足した。今年度も大幅な不足が見込まれている。身体障害者や知的障害者が新制度を機に、それまで我慢していたサービスを求め始めたからだ。
双方の結婚話はこんな中で持ち上がった。介護を高齢者だけに限らず、障害者も利用できるようにする。支え手も、高齢者や40歳以上だけでなく、若い世代にも広げる。
確かに、欧州の介護制度は年齢で利用者を区切っていない。日本でも、高齢の障害者はまず介護保険を利用し、足りない部分を障害者福祉で補っている。
だが、高齢者も障害者も一つの保険で見ようという考え方は、まだ大方の納得が得られているとはいえない。
まず保険料を払う側の意見が割れている。労働界は「みんなが公平に介護サービスを利用できるようにすべきだ」と前向きだが、経済界は新たな負担が増えることに反発している。
介護保険を運営する市町村も、高齢者と障害者ではサービスの内容が違うという理由で、反対論の方が多い。
障害者も賛否が入り交じる。支援費の対象になっていない精神障害者のほか、もっと幅広いサービスを求める知的障害者の団体は統合に積極的だ。だが、身体障害者のうち、自ら手厚いサービスを勝ち取ってきた団体は反対している。
この結婚話のかぎを握るのはやはり40歳未満の若い世代だろう。今後障害を負う可能性はある。将来は介護されることになるかもしれない。そういうことは頭で理解しても、新たに保険料を払うことを納得できるかどうか。
ここは身体的なデータを出して議論を深めるべきだ。若い世代に負担してもらうとしても、40歳以上と同じでなくてもいい。若い世代の保険料で同世代の障害者の介護を賄うことも考えられる。そうした知恵を絞る必要もあるだろう。
厚労省は今回の報告書を受け、9月には統合に向けて、たたき台を出す。
結婚は時に思い切りも必要だが、むりに進めれば破局は目に見えている。合意を得る努力が求められている。
朝日新聞 2004.8.12(木)
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