●障害者自立支援法案

  利用者負担と低所得者への配慮措置

 厚生労働省は九日、障害保健福祉関係主管課長会議を開き、障害者自立支援法案が施行された場合の利用者負担の見直しについて詳細を説明した。新たな提案ではないが、低所得者への配慮措置など改めて仕組みを周知。法案審議中のため不確定な部分があり、厚労省は「さらなる軽減措置を検討中」ともしているが、現時点の案として次の通り示した。

自立支援医療 所得税非課税は上限5千円

 新制度の利用者負担の仕組みは、今年十月に施行される「自立支援医療」にかかるものと、来年一月に施行される「障害福祉サービス」(介護給付、訓練等給付)にかかるものとがある。それぞれに利用者負担の上限額や低所得者への配慮措置が用意されている。

 自立支援医療は、一律5%負担の精神通院医療と、所得に応じた負担の厚生医療・育成医療を再編して、医療費と所得に応じた負担に統一される。

 対象となる医療の範囲は、現行の公費負担制度と同じ。このうち「重度かつ継続」に当たるのは統合失調症、躁うつ病(狭義)、難治性てんかん、腎機能・免疫機能・小腸機能障害、このほか医療保険の多数該当の人だが、範囲については三年後の見直しを待たず順次疾病を追加するなど検討する。

 自己負担は原則一割。低所得世帯については「重度かつ継続」に該当するかしないかに関係なく、所得に応じて月額負担上限を二千五百円か五千円に設定する。生活保護世帯は負担ゼロ。また、一定の負担能力があっても、「重度かつ継続」に該当する場合は医療費がかさむので月額負担上限を五千円か一万円に設定する。

 ただし、医療保険が三割負担なのに対して自立支援医療は一割負担に抑えた制度なので、所得税額が三十万円を超える人は対象としない。経過措置として「重度かつ継続」に該当する場合に限り自立支援医療の対象にし、月額負担上限を二万円に設定する。

 なお、自立支援医療の支給認定の有効期限は一年となる見込み。再認定の方法については検討中だ。

障害福祉サービス

入所・GH利用に「個別減免」

 介護給付と訓練等給付については、現行の応能負担を、サービス量と所得に応じた負担の仕組みに変更する。利用量に応じた一割の「定率負担」に、世帯の所得に応じた月額負担上限を設ける。また、施設利用の場合は別途、食費、光熱水費、医療費、日用品費が「実費負担」となる。
 ただし、サービスによって、低所得者への配慮措置がある。

 定率負担については同一生計者を含めた所得によって、月額負担上限を設定するが、入所施設(二十歳以上)とグループホーム利用の場合は入所者単独の世帯ととらえ、障害者本人の収入に応じた「個別減免」がある。

 この個別減免を受けるには、まず本人の預貯金が一定額未満であることが条件となる。いくらに設定するかは低所得世帯の平均的な預貯金額などを参考にする方向で未定だが、生活保護制度のような厳しい資産調査ではなく、申請の際にコピーを添付してもらうなどの方法を想定している。

 さらに、収入が年金2級に相当する六万六千円を超えるかどうかと、その収入の種類によって負担額が変わる。

 例えばグループホームから授産施設に通うなど年金のほかに収入がある人の場合は、賃金・工賃に三千円の基礎控除を設ける。収入が六万六千円以下の人は定率負担ゼロになる。

 実費負担部分にも軽減措置があり、入所の場合は一定の生活費が残るよう食費と光熱水費に補足給付(法案では特定障害者特別給付)がある。

 通所の食費は、激変緩和措置として当面人件費分が支給され、これを引いた材料費(1日あたり約二百三十円)のみの実費負担とする。

 また、雇用関係のある就労継続支援にも利用者負担が生じることになっているが、事業者が負担するなら減免できるよう、事業主の判断にゆだねる仕組みを検討している。

 なお、国会審議でも焦点となっている負担者の範囲については、厚労省は「例えば医療保険や税制上の被扶養者になっていない場合は、同じ家に住んでいても別の世帯と見なすことが考えられないか、特例を検討中」としている。

「障害施策の原則放棄」 精従墾、自立支援法案に見解

 精神保健・医療・福祉に従事する専門職団体で構成する「精神保健従事者団体懇談会」(精従墾、二十団体加入)は十六日、障害者自立支援法案に対する見解をまとめ、衆議院厚生労働委員会の各委員に提出した。

 見解では「国が障害者の社会的自立に向けた施策を講じる責任を負い、地方公共団体がサービスを提供する義務を持つとする障害者施策の原則が放棄されている」「障害基礎年金から利用料を徴収することには疑義がある。仮に徴収するにしても障害者本人の所得を基礎にすべき」「発達障害者が対象から外されていることも問題」などと法案の内容を厳しく評価。「法案の主旨・重要性からしても全国民的な議論がまだまだ必要。今会期内の成立のみを求めるのでなく、十分審議を尽くしてほしい」などと要望している。

福祉新聞 2005.6.27(月)