●障害者自立支援法案が廃案

  支援費の財源不足再燃

  厚労省 再提出意向も衆院選しだい

 郵政民営化法案の否決に伴い衆議院が八日に解散したため、障害者自立支援法案は審議未了で廃案となった。「一割負担」に障害者から異論は強いものの、支援費制度の財源不足問題を繰り返さないための財政措置が法案に盛り込んであっただけに、今後の予算編成が改めて課題となる。厚生労働省は次期国会に向けて同様の法案を出し直す姿勢だが、衆院選の結果しだいでは大幅修正もありえ、どのような法案となるかはまだ不透明だ。

 廃案となった直接の原因は、郵政法案の否決を受けて衆議院が即日解散するという国会波乱のあおりを受けたこと。国会が会期中にもかかわらず事実上の閉幕となったため、次期国会で審議を継続する手続きが整っていない審議未了の法案は全て廃案となった。

 自立支援法案は七月十五日に衆議院を通過し、七月二十八日には参議院厚労委員会で約六時間審議されるなど成立まで秒読み段階に入っていた。「成立目前」の法案が会期中に廃案になるのは異例の事態だ。

 法案が作られた背景には、支援費制度の財源不足の問題が大きかった。サービス利用が増える中、あらかじめ決めた国家予算の枠を超えたものには補助金が支出されず市町村が負う。それを、利用者に原則一割の負担を求めるかわりに国家予算の支出を義務的経費化にすることが今回の法案の目玉の一つだった。

 身体・知的障害者の福祉サービスと比べてはるかに基盤が弱い精神障害者の施策を充実させることにも期待が寄せられていた。

 しかし、定率一割の利用者負担に関しては低所得者が大半を占める障害者からの異論が強く、障害者団体からは「そもそも当事者の声を十分に聞かずに出された法案だ」という手続きへの批判も根強かった。

 また、各団体が解決を要望している問題は、応益負担導入への反対と所得保障だけでなく、「あらゆる障害をサービスの対象にしてほしい」「審査会メンバーに障害者を入れてほしい」「地域活動支援センターを義務的経費にしてほしい」など多岐にわたっている。

 こうした運動は全国的に広がり、一万一千人もの集会が都内で開かれるほどに大きくなった。その影響もあって、本来は会期延長前に成立する予定だった法案の審議は会期延長後も続き、廃案につながった。

 廃案になったことで新たな対応策が必要となるが、現段階では、厚労省は同様の法案を昭の臨時国会に再提出し、引き続き改革に臨む方針という。

 ただ、衆院選の結果しだいでは法案に反対の立場をとっていた民主党が政権を担う可能性もあり、その場合は法案の大幅修正を余儀なくされることが考えられる。さらには、法案が成立することを前提に今年度の支援費予算は十カ月分しか組まれておらず、厚労省は残りの不足分をどう補うか緊急対応を迫られている状況だ。

JDフォーラム「これからが大事」

 十日には日本障害者協議会(JD)が「『障害者自立支援法案』改善運動の中間まとめと新たな展開をめざす緊急フォーラム」を都内で開き、八百五十人が集まった。廃案に至った経緯や問題点を確認し、障害者政策の近未来をどう展望するか語り合うものだ。

 藤井克徳常務理事は廃案を「これで良いとは思わない。むしろこれからが大事」と語る。「障害者の置かれている実態を正確に把握し、国際比較もし、基礎データを蓄えること。また、社会保障審議会障害者部会の在り方を当面のテーマに、当事者の声が政策に反映される仕組みを作ることも必要だ」などと指摘し、廃案を良い方向へつなげる契機にしたいとした。

福祉新聞 2005.8.15(月)