●障害者自立支援法案 

  低所得者対策

 障害者自立支援法案が国会に再提出され、審議が始まりました。法案を巡っては「大半の障害者が負担に耐えられる所得状況にない」という当事者からの声が大きく、先の国会でも配慮の必要性が指摘されていました。そこで、前国会での法案修正や厚生労働大臣の答弁を踏まえたうえで、法案が成立した場合に、福祉サービス、自立支援医療の利用者負担がどうなるのか、また、どんな低所得者対策が用意されるのか、厚労省の説明を詳しく紹介します。

所得により上限額を設定

・定率負担
 定率負担あるいは応益負担と呼ばれる「一割負担」の費用は、基本的には利用したサービス量に比例して増えるが、一定のところで頭打ちになるよう、所得によって月当たりの上限額が設定されている。利用量に応じて際限なく負担が増えないようにする仕組みだ。

 いくらで負担が頭打ちになるかは、所得によって異なる。低所得の人ほど上限は低く、生活保護世帯の人であればゼロ円。市町村民税非課税世帯で本人の収入が障害基礎年金二級(六万六千円)程度しかない人は一万五千円。また市町村民税非課税で障害基礎年金一級を含めた世帯の年収が三百万円以下程度の人は二万四千六百円、課税世帯(一般)の人は四万二百円が上限額となる。

 なお、上限額を設定する上でどの所得階層に該当するかを判断する際は、住民票上の「世帯」が原則となる。ただし、住民税でも医療保険でも世帯主の「被扶養者」でない障害者については、本人とその配偶者のみの所得で判断することもできる。

 また、同じ世帯にほかにも障害福祉サービスや介護保険のサービスを受けている人がいる場合は、その合算が「上限額」を超えないように軽減される。

・個別減免・社福法人減免
 上限額を設定してもなお負担は厳しいとの考えから盛り込まれたのが、資産の少ない人のために設けられた「個別減免」または「社会福祉法人減免」の制度。上限額をさらに下げる仕組みだ。資産については三百五十万円以下という要件が示されている。

 個別減免の対象者は、施設入所(二十歳以上)とグループホーム入居の人。

 収入が月六万六千円(年金二級相当)までの人なら一割負担はゼロ円になる。収入が六万六千円を超えても、超えた部分の半分が上限額となる。例えば年金二級のほかに仕送りが二万円ある人の場合は、一万円が上限となる。

 ただし、グループホーム入居者で六万六千円を超える部分が年金や賃金・工賃による収入の人の場合は、三千円を控除した上で、超えた収入の15%を上限とする。例えば、年金一級八万三千円を受給している人の場合、六万六千円を差し引き三千円を控除したら一万四千円。これの15%にあたる二千百円が定率負担額となる。

 一方、自宅から通所施設に通う人やホームヘルプを使う人、二十歳未満で施設に入所している人には「社会福祉法人減免」がある。

 社会福祉法人でサービスを利用する場合に、一つの事業者について一割負担の上限を半額にする仕組みで、「低所得1」の人は七千五百円、「低所得2」の人は一万二千三百円が上限となる。ただし「低所得2」でも通所サービス利用に限っては七千五百円を上限とする。

 なお、これらの減免を行っても負担すれば、生活保護世帯に該当してしまうという場合は、生活保護に該当しなくなるところまで月額負担の上限額の区分を引き下げる。

・食費・光熱水費の軽減措置
一割負担の費用だけでなく、原則自己負担となる食費・光熱水費についても減免措置がある。これも利用するサービスによって配慮の仕方が異なる。

 通所サービス、ショートステイを利用する人の場合、食費を全額払わなくてもいいよう、食費の三分の二を免除する。グループホームから通所施設に通う場合も同様。一食六百五十円・月二十二日利用で計算すると一万四千三百円のところ、実費食材料費のみの負担とし、五千百円程度の負担に抑える。

 また、施設入所の場合は補足給付があり、二十歳以上の入所では、減免後の定率負担額と食費等の実費を引いても手元に少なくとも二万五千円(年金一級の人、六十歳以上の人は二万八千円)が残るように食費等実費負担額を算出する。

福祉新聞 2005.10.10(月)