●急激な負担増に耐えられない

  重症児守る会 施設で3倍増と試算

  支援法、厚労相に要望書

 障害者自立支援法案に盛り込まれた利用者負担の見直し、福祉サービスと医療どちらも利用する立場から全国重症心身障害児(者)を守る会が「急激で高額な負担増は関係者の納得が得られない」訴えている。

 重症心身障害者は、重度の肢体不自由と知的障害を重複しており、自力で移動や食事をすることは難しく、体調を崩しやすいため医療も欠かせない。

 同会の検証によれば、新しい負担方法が導入された場合、重症児施設入所では現行の三倍もの負担増が想定されるという。一般世帯の平均負担月額を試算すると、施設利用料が一割負担で二万三千円、食費が実費で二万三千四百円、自立支援医療が一割負担で五万円、おむつや下着などの日用品費が一万八千円で、合計十一万四千四百円に膨らむ。

 本人が八万三千円の障害基礎年金を受給していたとしても、それで賄えない三万円会が家族の負担となってしまう。

 さらには、施設内で対応できない手術や歯科治療など外部の医療機関で受けた場合、そこで三割負担が発生する。

 負担額には所得に応じた上限が設けられることになっているものの、厚生労働省は同一生計者の収入によって判断することを提案しており、同会は「成人した本人が年金の中から払いきれなくなるから『自立支援』とは言えない」と指摘する。

 また「負担増に耐えられず施設を利用できなくなる人も出てきかねない。これでは家庭内介護の大変さを改善してきた歴史を後戻りする」と危機感を募らせ、このほど尾辻秀久・厚生労働大臣に要望書を提出した。

 主な要望事項は、低所得世帯への軽減措置と一般世帯も含めた配慮だ。負担の上限額は、受給している障害者基礎年金額から日常生活の諸費用を引いた額の範囲内で収まるよう求めた。また二十歳未満の施設入所でも特別児童扶養手当を打ち切らないよう求めている。

 北浦雅子会長は「命を守るには施設の利用が欠かせず、弱者を切り捨てることは絶対に許されない。払うべきものは払いたいが、所得保障をしっかりしてほしい」と語っている。

福祉新聞 2005.6.6(月)