Welcome to Adobe GoLive 6@「まめや」で接客を担当する30代の女性は約10年間精神科に入院。退院後、桑友の援護寮に入り桑友のパンの店に通った。生活リズムを整え、長時間働く訓練を重ねた。「病気を分かってくれ、気持ち的に楽に仕事に向かえる」
高3の春、交通事故で脳挫傷を負った同町の佐藤雄一さん(23)。歩けるようになったが、新しい記憶や感情のコントロールが難しい高次脳機能障害が残った。
「ちゃんとした収入を得る」を目標に、桑友でパン作りや温泉施設の清掃を経験するうち、前より感情を抑えられるようになった。工賃も月3・5万円から4万円に増えた。
だが、「これまで工夫してきたけれど、もう限界」と武田さん。通所・在宅サービスの担い手をNPO法人などに広げるとともに、空き店舗や空き家も施設として使えるなど規制緩和もされるはずだった。
尾辻厚労相は10日、「法案の早期成立をめざしたい」とした。「1割負担は厳しいが、低所得者対策もある。地方の街中でもサービス提供の選択肢が増え、1人でも多くが夢に挑戦できるメリットは大きい」。武田さんは望みをつなぐ。
慎重派
当事者の声聞き根本から議論を
日本障害者協議会(約70団体加盟)が10日に開いた緊急集会には、「私たちぬきに私たちのことを決めないで」と慎重審議を訴えてきた850人が集まった。藤井克徳常務理事は「廃案を本格的な議論の出発点にしよう」と述べた。
当事者らの不安が集中したのは、原則1割の「応益(定率)負担」の導入。現在は所得に応じた「応能負担」で、ホームヘルプの場合、利用料を払っている人は約5%。それだけ所得が少ないためだ。「法案では低所得者対策はあるものの、サービスを多く利用する人ほど、多くの利用料を求められる」と藤井さん。
東京では7月、過去最大規模の1万人以上の集会・デモが行われた。座り込みをした人からは「トイレ介助など最低限必要な支援もお金払わなくてはならないのか」などの声が出た。
審議では、所得保障を優先すべきだとの意見や、障害者の定義や数などの基礎データが不十分だとの指摘も出た。藤井さんらは「財政難だから障害者も負担をというが、障害分野への政府支出は先進国中で極端に、少ない。国が何に優先的に予算を使うか、根本から議論してほしい」という。
DPI(障害者インターナショナル)日本会議の尾上浩二事務局長も「法案を作るところから当事者の意見を聞いて、やり直すべきだ」と主張。まず地域生活基盤の整備などサービスの充実を急ぐよう提案する。
自治体補助金減に頭悩ます
身体・知的障害者対象の在宅支援費の国の今年度予算は930億円。だが、06年1月に支援法が施行されるとして組まれていた来年1、2月の2カ月分は廃案で使えなくなった。このままでは約170億円の予算不足が見込まれる。
支援費は国が2分の1、残りを都道府県と市町村で負担することになっているが、東京都の市区町村は04年度、計12億円の不足だった。不足額が1億円超の自治体は03年度の3市区から04年度は6市区に増えた。
03年度、練馬区は1・7億円の不足。04年度も2億円超は確実で、2カ月分の補助金が出なければ、05年度はさらに深刻だ。「本人や家族の状況が変わらない限り、必要なサービスは削れない。区で補充するしかないが、いつまで続けられるか」(同区担当者)
ある市は「国に補整予算などを求める一方、障害者団体と何らかの工夫を話し合うことも必要かもしれない」としている。
3障害者支援の一元化目指す
03年度から「障害者がサービスを選ぶ」を掲げ、障害者費制度が始まったが、利用は身体・知的障害者に限られ、精神障害者は対象外。また、利用の急増で国の補助金予算は03年度128億円、04年度は275億円不足し、財政的に制度破綻した。
これに代わるものとして、国は、身体・知的・精神の3障害のサービスの一元化→市町村に障害者のニーズに応じたサービス整備計画の義務づけ→施設の食費や原則1割の利用者負担の導入(ただし所得に応じて月額4万200円、2万4600円、1万5千円、無料の4段階の負担限度額を設定)→国や都道府県の在宅サービスの財政負担の義務的経費化、などを盛り込んだ障害者自立支援法案を先の通常国会に提出した。
与党は所得保障の検討規定などの修正を実施。採決で野党は反対したが、衆院を通過、参院で審議が続いていた。
朝日新聞 2005.8.17(月)