●投票まであと2日
障害者負担増の不安
スーパーのチラシで特売品を探せない。賞味期限が近づいて少し安くなった食品を選ぶこともできない。
東京都北区の主婦阿部広子さん(42)は、10歳の時に病気で失明した。1級の身体障害者手帳を持つ。
弱視の夫と2Kの都営住宅に2人暮らし。月約8万3千円の障害基礎年金と、夫のアルバイト代などを合わせても、収入は1年で350万円に満たない。
ちょっとした親切にもお札を包む。道が不案内なら、タクシーを頼むしかない。
「収入が少ないのに出費がかさむ。障害者の現実です」
8月8日。少しほっとした。衆院解散で障害者自立支援法案が廃案になった。
法案は就労支援の強化などを盛り込んだ反面、ホームヘルプなどに原則1割の利用者負担を導入する内容。重度の障害者にとっては負担が重い。
「ヘルパー代は自己負担が伴うだけで、暮らしは破壊されてしまう」
選挙区には車イスの候補者もいる。でも、障害者を取り巻く問題は、郵政民営化法案への賛否をめぐる騒ぎにかき消されがちだ。
国会ではたくさんの法律がつくられる。一つひとつはあまり目立たないけれど、いろんな人の暮らしを大きく左右する。
1票を投じる前に、そんなことを考える。(白銀泰)
朝日新聞 2005.9.9(金)
|