●タク救急搬送を拡大へ
消防庁が検討会発足
総務省消防庁は、都市部を中心に急増する救急車の出勤回数を抑えるため、タクシー救急搬送事業など民間委託の拡大に乗り出した。3日、同庁の「救急搬送業務の民間活用に関する検討会」の初会合が開かれ、テーマとして@赤信号を通過できる「緊急通行権」の付与A救急搬送タクシーを一元配車する「コールセンター」の設立B「認定基準」の見直し−などが示された。これらの基本方針は政府の規制改革・民間開放促進3カ年計画(2004〜06年度)や同庁の「消防力の整備指針」にも盛られている。進展する少子高齢化社会にタクシーの“領域”拡大が期待される。
民間の患者等搬送「認定事業者」は全国で273社494台(昨年10月現在、消防庁調べ)。タクシー許可事業者が、救急活動に必要な資機材装備や従事者の救急研修修了(3日間)など「認定基準」をクリアし、消防署から認定を受ける。「適任証」保有者は1649人。いずれも増加傾向。
認定基準の見直しでは、現在、寝台車に限定している車種について、リフト付きや回転シート型など福祉・介護仕様車輌への拡充を視野。患者の障害レベルに応じた認定ランクを創設し、ハードルが厳しい高ランク事業者に赤色灯やサイレン、緊急通行権を認めようという考えが出ている。救急車自体には有料化を模索する。
民間救急コールセンターの制度化も課題。命にかかわる真に緊急性の高い人を救えなくなる危機感から、認定事業者を登録した共同受注・配車センターを作ることで「119番」と振り分ける構想。救急車の出動増加が社会問題化する都内ではすでに、東京消防庁が宮園自動車や日立自動車交通などとタイアップし立ち上げている。
この日の検討会では、こうした救急需要対策の全体像や搬送事業者の現状などについて報告。冒頭、座長に大森彌・東京大学名誉教授を選任。今後5回程度開催し、年内をメドに報告書をとりまとめ、年度内に方針決定する予定。
あいさつした消防庁の東尾正次長は「救急車の出動は年間500万件。救急率に影響が出るおそれがある。救急員は過酷なため疲労している。軽傷者や病院間の搬送に民間事業者を使ってもらう民間活用策について課題を洗い出し、結論を導きたい」と述べた。意見交換では「どの範囲まで民間に任せられるかをまず整理すべき」との認識が多くを占めた。来月予定の次回以降、搬送事業者をヒアリングすることにした。
検討会の設置は、規制改革推進計画を受けた形。同計画では、ニューサービスに特化したタクシー規制の弾力化方針を提示、救急救命搬送分野の参入緩和を想定。さらに“官業”の民間開放の一策としてもうたい、救急通行権の付与など環境整備を図るよう提起している。
座長以外の検討会メンバーは次の通り。
朝田信夫・救急振興財団副理事長、石井隆之・警察庁交通局交通企画課長、島崎修次・杏林大学医学部救急医学教授、鈴木正弘・東京消防庁救急部長、谷口隆・厚生労働省医政局指導課長、田端渚・国土交通省自動車交通局旅客課長、松井英樹・札幌市消防局警防部長、南砂・読売新聞東京本社編集局解説部次長、雪下國雄・日本医師会常任理事
東京交通新聞 2005.6.6(月)
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