●川添九乗協会長インタビュー

  「地方主導で再規制を」

  NPOに対抗値下げも

 再規制への取り組みは、事態の深刻な地方業界がリードする形でタクシー規制緩和4年目。半額タクシー申請や第一交通産業グループの全乗連会費凍結問題など、話題の多い九州タク業界だが、本紙は地元でかじ取り役を務める川添一巳・九州乗用自動車協会会長に今後の対応方針を直撃インタビューした。同会長は、全国化の方向の「セダン特区」を踏まえたNPO対抗手段として、タクシー運賃弾力化の検討に入ったことを明らかにしたほか、「違法客待ちも、最賃割れも、台数規制すれば解決する。簡単な話だ」と地方主導の再規制を訴えた。(聞き手=古川渉記者)

業界の喫緊の課題は何か。
 「現在、『セダン特区』の全国化が論議されている。長崎県(市)協会としては、通院する高齢者をタクシーに呼び込む効果的な運賃の弾力化を研究中だ。運賃の値下げは一貫して反対だが、NPOにタクシー需要を奪われるのを黙って見過ごすわけにはいかない。NPOへの対抗手段としての値下げは、やむを得ないと考えている」

直ぐに改善したい行政への要望項目は。
 「緊急調整地域の指定基準を見直す必要がある。実車率、日車営収について『前5年間の全国平均比20%』の規定を『10%』に緩和すべきだ。非流し地域は指定要件として『実車率』は不適切で、除外してほしい。また、長崎では個人タクシーが急増し、全体の輸送実績の低下を招いているが、個人タクシー資格は、真に優良なドライバーにのみ与えるべきで、行政には厳格な審査を求めたい」

福岡の半額タクシー申請をどう受け止めているか。
 「乗務員の生活を今以上に窮地に追い込むだけだ。タクシーに乗務した経験がない木原氏(遠賀タクシー社長)には、乗務員の心情が分からないのだろう。タクシーが半額になれば、市場が広がるなど、むちゃくちゃな論理。そんな安易な発想でタクシー事業が活性化するなら、これまで私たちがやってきた運賃改定は何だったのかということになる。私は自分の乗務経験に照らし、半額タクシーは営業的に成り立たないと断言していい。最近の運賃多様化は、既存事業者自ら下限運賃10%の枠を崩しており、情けない」

黒土氏の行動に全乗連は理解を

第一交通産業グループの全乗連会費凍結の動きについて。
 「ハイタク政策懇の創設など、黒土氏(第一交通産業会長)が業界を救済するため尽力していることは周知の事実。『半額タクシー』を申請中の木原氏を呼び、申請を取り下げるよう説得するなど、頭が下がる思いだ。そうした黒土氏の行動に、全乗連はもう少し理解があってもいいのではないか」

全乗連運営の問題には、東京と地方の温度差が背景にあると指摘される。
 「東京と地方では市場規模に大きな差があり、営業形態も全く違う。それだけに地方の危機感が東京に伝わりにくい。しかし、東京には地方の実情を理解してもらわないと困るし、東京は何と言っても、政府のおひざ元だ。東京を抜きにした業界活動は考えられない。私としては地方が東京を動かし、再規制に向けた取り組みを強化するやり方がベストだと思う。地方業界を代表する一人として、私も尽力したい」

地元業界での具体的な取り組みは。
 「長崎市タクシー協会は1977年以降、毎年4000万円余の予算を組み、違法な客待ち排除のため、ガードマンを市街に配置している。しかし最近はタクシー乗り場の利用料が減少し、経費の工面に苦慮している。大分市タクシー協会は、駐停車違反したタクシーに罰金を科すそうだが、厳しい経営環境にあっても、事業者は目に見えない努力を続けている。規制改革会議や国土交通省には、ぜひこのことを理解してほしい」

東京交通新聞 2005.8.8(月)