●“セダン特区全国化”先送りか

  「事故」「白タク」争点に

 福祉有償運送セダン型車特区の全国展開に向け、政府の特区評価委員会が7日実施した国土交通省ヒアリングは、全国乗用自動車連合会やNPO(民間非常利団体)ボランティアなど多くの関係者が見守る中、活発な議論が交わされた。争点は事故発生と白タク行為の可能性。今回の事前調査ではこれらの危険性が浮かび上がらなかったが、国交省は「時間をかけ検討したい」とかわし、全国化の時期や方針そのものについても合意に至らなかった。

 主なやり次の通り。田端浩・国交省自動車交通局旅客課長、懸念を予防するのが行政の使命、全国化の判断には実績が足りない。福祉輸送全体の評判を下げないようにしたい。檜木俊秀・内閣官房参事官、懸念の割にはきちんと調査せず証拠不十分。セダンの要望は強いので反対の論拠が弱いと反発が多く出てくる。白タク対策には「運営協議会」などの要件を設けた経緯があるはずだ。

 樫谷隆夫地域・産業・環境部会長、調査では具体的にどんな事故があったのか。白タク防止のため、だれを運んでいるかをチェックする方法は実際上難しい。

 八代尚宏評価委員長、福祉車よりセダンの方が運転しやすく、車両構造上の安全性は変わらないのでは。田端氏 指をドアに挟んだとか、接触したという事例があった。乗降時のトラブルが考えられる。

 山田孝夫・前北海道東川町長 使う側は要介護の程度によって車輌を分けている。現場ではセダンだから乗降が危険ということにはなっていない。

 市川眞一・クレディスイスファーストボストン証券ディレクター どれだけ検証に時間が必要なのか確約できないか。全国化を前提とするのか。

 田端氏 すぐに判断できない。客観データをとるには最低1年はかかり、関係者と議論する必要もある。有償運送制度は通達上の特例許可の形となっているので、きちんと整理したほうがサービスの担い手や自治体が安心し、産業が発展すると考えている。

東京交通新聞 2005.7.11(月)