●介護保険と障害者福祉 統合問題難航も

 自治体 具体像見えず不安

《解説》「重度の障害者を支えられるのか」保険料滞納が増える。「早く具体案を示して」

 朝日新聞社の全国アンケート首長の半数近くが介護保険の被保険者を拡大し、障害者福祉と統合する反対の意思を示したことは、統合への道筋の険しさを浮き彫りにした。回答からは統合案の具体像が見えないことへの不安や戸惑いが読みとれる。

 厚労省は1月に改革本部を立ち上げて以降、統合案を軸に検討しているが、正式に方針を示してはいない。若い世代や障害者にどの程度の負担を求めるのか、障害者サービスをどこまで介護保険で見るかなど、自治体の感心が高いチーマについても輪郭さえ見えない。

 厚労省は、関係団体の理解を求めていくとしているが、9月の試案から12月に政府が改革大綱をまとめるまで3ヵ月しかない。老健局長が言う「国民的な議論を尽くす」時間は十分といえない。

 介護保険と障害者福祉を担い、利用者の実情や制度の問題点を肌で感じているのは市区町村だ。だが、これまで自治体の意見を聞こうとする姿勢は十分とはいえない。

 年齢や原因に関係なく介護サービスを提供するという理念は理解できる。しかし、期限を区切ったなかで議論を進めれば、結局国の方針を押しつけることけならないだろうか。統合すれば、国民の多くが被保険者となり、制度の性格は大きく変わる。今の必要なのは、結論を急がず、制度の将来について幅広く話し合う姿勢だ。

朝日新聞 2004.7.26(月)