●いち早く有償運送始動

 ケアびーくる 20台確保、1日2件利用

大和市

 神奈川県大和市では、セダンによる有償運送が15日からスタートする。関東管内での実施は初めてだ。

 すでに道運法80条許可を受けているNPO法人ワーカーズコレクティブ・ケアびーくる(河崎民子代表、福祉車輌4台)がセダン20台で需要に対応したいと先月30日、神運支局に使用車両の変更を届け出た。

 大和市は過去1年間、「福祉移送特区」で有償運送を推進。ケアびーくる、大和市腎友会のNPO法人2団体が許可事業者となり、福祉車両で輸送を行ってきた。

「セダン特区」に4月から移行した同市は6月28日に運営協議会を開催。NPO法人アシストやまとの法80条許可申請(セダン9台使用予定)は9月以降になりそうだ。

 市やケアびーくるは、「セダン20台がフル稼動すると誤解しないでほしい」と強調している。

 先の運営協議会でも市側が過去1年間の利用データから「1日平均5件利用見込みで内訳は福祉車両3件、セダン2件」と需要について補足説明した。

 ボランティアである運転会員が自家用車持ち込みで対応できる日時はさまざま。1日2件の需要に対応するためにもキープしておかなければならない事情がある。

商工会主体で運行

県内初、今秋にも開始

茨城県・里美村

 茨城県里美村はNPO法人が自家用車による有償運送を行うため、今月にも「運営協議会」を立ち上げる方針だ。実施は秋からをめざしており、実施されると県内で初めとなる。

 同村は、昨年6月に構造改革特区第三次提案で、従来NPO実施主体に商工会が含まれていなかったため、実施できるように提案した。

 3月に商工会も運営主体に含まれることになり、同村はマイカーによる有償運送を提案、協議会を立ち上げて、具体的運送方法を検討する。

 商工会がNPOの主体となったのは、以前から地元商店会が会員制で商品の配達を行っており、その際、会員から「買い物、通院などの足のサービスも実施してほしい」と依頼されたことによる。

 福島県に隣接する県北地区に位置する同村は、人口4400人のうち高齢者が3割を占める。

 鉄道はなく、地元にタクシー会社もない。福祉バスが2台2路線運行するだけの典型的過疎地。県北地区には県が乗合タク導入へ助成金制度を新設したが、自治体は導入する方針はない。

 運営主体となる「里美村商工会」(白石栄良会長、会員210者)は個人商店のほか建設会社、旅館など多様な業種を含んでいる。

市町村合併からむ展開

 同村は、12月に周辺の常陸太田市、金砂郷町、水府村との1市1町2村による合併が決定している。その際、常陸太田市に編入され、人口は6万1869人に急増、エリアも一挙に4倍になる。

 そのため運送エリアが課題となるが、許可されれば、合併後も旧里美村のエリアを対象に実施することになる。同一市内にサービスの格差が生じるが、エリア拡大については「運営協議会」で検討していくことになる。

 茨城運輸支局は「許可後の運営は県と地元で協議すること。高齢者の足確保として県内の先進的事例となれば」ととらえている。

 有償運送実施にともなって福島県との堺に近い県北部の矢祭−里美村・黒川入口間の路線バス(茨交バス運行、11キロ)が廃止になる。

 里美村の輸送方式は過疎地の「足の確保」という難題に大きな一石を投じることになりそうだ。

東京交通新聞 2004.8.9(月)