●「全民救」創設へ20社結集
全国ネットワークを構築
全国的な救急搬送のネットワークを構築するため、全国の民間救急事業者20社は、任意団体「全国民間救急サービス事業者連合会」(全民救=会長・野口良一関東福祉車輌社長)を4月1日に発足させる。福岡県の板倉タクシー(福岡市、加地利幸社長)、山口県の広吉自動車(下松市、広城茂社長)などが参加、副会長に加地利幸・板倉タクシー社長が就任する。本部及び西日本事務局を板倉タクシー民間救急事業部に、東日本事務局を関東福祉車輌同事務局に置く。将来的には社団法人化し、47都道府県に支局を開設。全国を9ブロックに分け、各ブロックに基幹支局を設置する。
全民救が開設したホームページで、利用者が搬送中に必要事項を入力・送信すると、コールセンターが都道府県の支局にニーズに適した事業者の検索を依頼する。当該事業者から後日、利用者へ電話連絡が入る仕組み。会員間の連携や、消防・医療機関、船舶・航空事業者などの協力で広範囲な移送にも対応する。
救急搬送のスペシャリストを育成するため、会員の救急乗務員に対し主催するMAST講習会(MAST=メディカル・アンバランス・サービス・テクニシャンの略)の受講を義務づける。看護士や救急救命士など乗務員が持つ資格に応じ、それぞれカリキュラムを構成。受講した看護士には「看護士MAST」、救急救命士には「救急救命士MAST」、介護員には「介護員MAST」など認定、一定水準の知識と技術を担保する。
救急車両は搭載する資器材により、@メディカル(医師や看護士が同乗し、搬送中に医療処置を行える車両)Aナーシング(看護士が同乗し、搬送中に点滴や酸素の管理など看護処置を行える車両)Bケア(搬送中に介護を行える車両)−の3タイプに分類。利用者が選択しやすいようホームページで解説。
当面、入会金と年会費のみで運営し、会員から仲介料などは取らない。
西日本事務局では全民急の発足に先立ち、「MAST講習会」を福岡市で開催するが、昨年9月には西日本地区で先行説明会を実施。九州ブロックから三ヶ森タクシー、板倉タクシー、大分タクシー、大分自動車の4社、中国ブロックから、やぐちタクシー、広吉自動車の2社が出席した。
全民救の本部事務局が置かれる板倉タクシーは「不急の搬送に消防署の救急車を呼ぶ人が増え、全国各地で緊急時に救急車が不足する事態がみられる。公費の無駄使いを防ぐ観点からも民間救急車が果たす役割は小さくない」と話す。
福岡市では昨年、救急車の出勤回数が46年振りに減少。前年比22件減の5万4536件。このうち転院のための病院間輸送は4881件で、前年比635件減。3年前から市民や医療機関などに消防署の救急車の適正利用を呼びかけている福岡市消防局は「病院間輸送がどれだけ民間事業者に流れたか分からないが、全体の出勤回数が減ったのは病院間輸送の減少が大きい。緊急性のない時は、民間の救急車を利用するよう広報している」としている。
全民救発足に絡んでは、全国福祉移送サービス協会(川村巌会長)の患者輸送部会(野口良一部会長)で昨年来論議。今回、同部会のメンバーを中心に全福協とは別組織で活動する形となった。
東京交通新聞 2005.3.14(月)
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